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ハルちゃんは、俺。  作者: 家宝ダンゴ


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2/11

俺、おしっこする。

身体に残るダンボールの匂い。

足元からは柔軟剤の香り。

柔らかいタオルが春輝(はるき)の足元に広がっていた。


春輝はタオルの匂いを嗅ぎ、安全を確かめた。

手足でタオルの硬さを確認する。


『悪くないな』


とりあえず、座ってみる。


『あ、これ結構いいかも』


手を伸ばし、お腹をタオルにつける。

ふかふかして心地いい。

そのまま後ろ足も。

ゆっくりと横になった。


うとうと。

瞼が落ちかける。


その時、


「ハルちゃんが寝てるー!」


ビクッと体が動き、目が見開く。


『……うるせえな!』


「あっ起きたぁ!」


『お前が起こしたんだ!』


春輝はフンッと鼻を鳴らすと、巨人の女の子に背を向けた。


「ママ……ハルちゃん、陽菜(ひな)のこと嫌いなのかな?」


明らかに悲しげな声が響く。


『……く、くそっ!』


春輝はくるりと向き直り、陽菜を見つめる。

陽菜は嬉しそうに頬を上げ、手を差し出した。


「ハルちゃんが来てくれたぁ」


『もう……ヤケクソだ!』


陽菜の指先をペロリと舐める。


「ママ〜!ハルちゃんが陽菜の手ペロしたよ!」


陽菜の嬉しそうな声に春輝は胸を撫で下ろした。


「陽菜ちゃん、ちゃんと手を洗うのよ!」


優しそうなママの声。

しかし、内容は春輝を軽く傷つけた。


『そうだろうけど、腹立つな!』


陽菜はそれでも春輝の背中を優しく撫でる。

そして満面の笑みで言った。


「ハルちゃん、だいすき!」


『!』


春輝は少しだけこの転生悪くないかもと思った。


そう思ったのも束の間。


春輝はモゾモゾと悶えていた。

生理現象と戦っていた。


目の前には陽菜がずっと嬉しそうに見つめていた。


『トイレ行きたいんだけど……』


キョロキョロと周りを見渡すが、当然ながら見知ったあの形のトイレがあるわけない。

あったのは青いシート。


『たぶんコレだ……でも、お、俺は人間だぞ』


ウロウロとシートの上で迷い続ける。

しかし、子犬の体は残酷だった。


『あっ』


勝手に出た。

大量に。


水の音が止まらない。

止められない。


『そ、そんな……俺、俺は……』


春輝は打ちひしがれていた。

天井を見上げ、目を細め小さく震えた。


横目にチラリと陽菜の確認する。


陽菜は目を輝かせて春輝を見下ろしていた。


「ママ〜ハルちゃんがおしっこしてるよ〜!」


『やめてくれ……』


「いっぱい出てる〜」


「陽菜ちゃん、汚いから触っちゃだめよ」


『そうだよ!……汚ねえよ俺は!』


水の音が止まると、春輝はそっと柔らかいタオルの上に座った。

シートからはホカホカと湯気が上る。

……そんな風に見えた。


「ハルちゃんのおトイレ綺麗にするからね」


ママと一緒に新しいシートに変える陽菜を見て、春輝は考えを改めた。


『……やっぱり、子犬に転生は最悪だあああ』


春輝は精一杯の力を込めて叫んだ。


「ママ!ハルちゃんがありがとうだって!」


「陽菜ちゃんのことが大好きなのね」


「えへへ」


春輝の気持ちは誰にも届かなかった。


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