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ハルちゃんは、俺。  作者: 家宝ダンゴ


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22/23

俺、悩む。

公園から家に向かう帰り道。

春輝は陽菜の後ろをトボトボとついて歩いた。


オレンジ色に染まった空は、二人の影も長く伸ばしていく。



『俺、もう人間に戻れねえ……』


春輝は項垂れて、陽菜を見上げた。


夕日に照らされた幼い横顔。

陽菜のツインテールが風になびく。


春輝の目が少しだけ見開いた。


『……今日の晩飯なにかな』


ママが待つ家までは、あと少し。

春輝は少しだけ歩く速度を上げた。



「ただいまー!」


陽菜は元気いっぱいに玄関から声を上げた。


「陽菜ちゃん、お帰りなさい」


優しいママの声。


「ママ!公園でお友達に会ったの!」


「あら。よかったわね」


「ハルちゃん可愛いって!」


陽菜は嬉しそうにママにくっついて話を続ける。


「それでね!」


「陽菜ちゃん、お外から帰ったら……」


「あっ!手を洗う!」


陽菜はパタパタと駆けていった。


「ハルちゃんもお帰りなさい」


ママは優しく言うと、ご飯の器をサークルの中に置いた。


『お!さすがママ!気が利くな』


春輝は急いでサークルの中に飛び込んでいった。


『うめえ!』


春輝は、嬉ションのことなどすっかり忘れ、食器に顔を突っ込んでいた。

ふんわりとした尻尾は大きく揺れていた。




その日の夜。

柔らかいタオルで丸まる白い毛玉。

春輝は夢の中にいた。


静かに扉を開く音。


春輝の耳がピクピクと動く。


「ハルちゃん……」


名前を呼ばれて顔を上げると、キョロキョロと見回した。


『なんだ……ママか』


『こんな時間にどうしたんだ?』


ママは何も言わずに、春輝のふわふわの体を優しく撫でた。

春輝の後ろ足がピンッと伸びる。


『ママ……腹も頼むわ!』


勢いよくひっくり返りると、ツルツルのお腹を見せた。


ママはクスッと笑うと、お腹を掻くように撫でていく。


「……ハルちゃん、ごめんね」


『なにがだ?』


春輝は不思議そうに首を傾げる。

ママはもう少しだけ春輝の体を撫でると、そっと寝室に戻っていった。


春輝は股を広げたまま、閉まる扉をそっと見つめた。


『なんだったんだ?』



空が白くなり、光が窓に差し込む。

薄暗い部屋の中で腹を出して眠っていた春輝は、何となく目が覚めた。


サークルの鍵に手を伸ばし、少しずつ上に持ち上げる。

ドンッと体当たりをすると鍵が下に落ちた。


カシャ。

小さな金属の音。


春輝はリビングをテクテク歩いていた。


テーブルの下に小さいメモ。


『……ん?なんだ?』


走り書きのようなママの文字。


フレンド動物病院

○月○日

10時〜


春輝の背筋がぞくりと冷えた。

病院。

今日の日付。


そして、昨日のママの言葉。


⦅……ハルちゃん、ごめんね⦆


頭の中でぐるぐると回り続ける。


『お、俺のタマが……やばい!』


『どうする……どうしたら……』


春輝はウロウロとリビングを歩き回り考え続けた。


無情にも時は流れ、カーテンの隙間から日の光が差し込む。

階段を降りてくる音。


『俺、どうする……!』


春輝はごくりと小さな喉を動かした。


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