俺、打ち解ける。
たんぽぽの綿毛がふわりと風に乗る。
道端のピンクの花をクンクンと嗅ぐ白い子犬。
春輝は庭を散歩していた。
ちょっと前とは違い、ふわふわの尻尾はふりふりと大きく揺れていた。
陽菜のお散歩の練習のおかげで、春輝は外の匂いに慣れつつあった。
しかし、慣れないものもあった。
「あら?人間さんじゃない?」
ピンク色のTシャツを着た柴犬がハッハッと笑いかける。
ジャックラッセルテリアがギロリと睨みつけた。
『マロン……その怖い犬なんとかしてくんねえか?』
「ルウのことかしら?」
『ルウ?……やたらカッコいい名前しやがって!』
春輝はあからさまにルウを見ないように歩いた。
ルウはフンッと鼻を鳴らす。
「俺はな、挨拶もできねえガキが嫌いなんだよ!」
「まあ皆んなそうでしょうね」
『犬の挨拶なんて知らねえよ!俺人間だし』
「なんだ?こいつ」
ルウは春輝を怪訝そうに見下ろす。
春輝は目を合わせないようにしながらもルウに近づく。
そして背中を向けた。
「お前できんじゃねえか」
ルウはそう言うと春輝のお尻ををクンクンと嗅いだ。
『お、おい、なにすんだよ!この変態!』
春輝はすぐにふわふわの尻尾でお尻を隠した。
「は?これが挨拶だろうが!お前も俺の尻を嗅げ」
『……そんなこと言われたの生まれて初めてなんだけど』
「んふっ。人間さんって面白いわね」
マロンも春輝に近づき匂いを嗅いだ。
春輝は息を止めながらルウとマロンの尻に鼻を近づけるのだった。
「挨拶なしで俺に目を合わせるってことは決闘と一緒だからな」
「やるなら覚悟しろよ!」
春輝はビクッと腰が引いた。
それでも今度は漏らさなかった。
「あら、人間さん少しは成長したんじゃない?」
ハッハッとマロンの息がかかる。
『……俺は人間だからな』
春輝は少し胸を張った。
胸の毛がふんわりと風に揺れた。
「ハルちゃん、そろそろ行くよ」
陽菜がそわそわと家に帰ろうとする。
『なんだ?陽菜トイレか?』
春輝は急いで陽菜の後ろをテクテクとついて行った。
家に帰り、ママに足を拭いてもらった春輝は先にリビングに行った陽菜のもとへ向かう。
陽菜はランドセルを広げていた。
筆箱と国語の教科書を取り出していた。
『そうか、宿題か』
陽菜は春輝の横に座り、国語の教科書を開いた。
「ハルちゃん、読むから聞いててね」
『おう!』
「あめんぼ、あかいな、あいうえお」
『懐かしいな、これ』
春輝は陽菜の前でおすわりをして聞いていた。
ゆらゆらと揺れる尻尾。
懐かしさから春輝の目は細くなっていた。
ママは頬を緩ませてスマホのシャッターを押していた。
「ハルちゃんが家族になってくれてよかったわ」
優しい声で呟いた。




