俺、気付く。
柔らかいタオルの上で寝転ぶ白いポメラニアン。
春輝は、一日ぶりの柔らかいタオルを満喫していた。
『俺、人間だし。汚したくないからな』
目がゆっくりと細くなっていく。
「ただいま〜!」
春輝は、薄目を開けた。
上下が反対の世界。
『俺、また腹出して寝てたのか』
モゾモゾと体勢を変える。
「ハルちゃん、ただいま!」
陽菜がサークルの上から手を伸ばす。
春輝は体を起こすと陽菜の指をペロっと舐めた。
『んっ!なんだこの味……懐かしいような……』
『これ、チョークだろ!』
「陽菜ちゃん、手を洗うのよ」
「は〜い」
『陽菜、今日は日直だったんだな』
春輝は懐かしそうに天井を見上げた。
『陽菜も帰ってきたし、軽く散策しとくか』
サークルを出て窓を覗く。
外には誰もいない。
『……今ならマロン達はいなそうだな』
チラリと陽菜を見るとテーブルに座り、おやつを食べていた。
『陽菜、ゆっくり食えよ』
『ん?』
陽菜の足元に向かう春輝。
『何か粉ついてるぞ』
クンクンと靴下についた粉の匂いを嗅ぐ。
『……これチョークだ』
春輝は違和感を感じていた。
ハッとしてソファの上のランドセルを見る。
『同じ匂い……なんでだ?』
春輝は陽菜のそばに行き、人形を置いて見せた。
「ハルちゃん、これで遊びたいの?」
『…….いつもと変わんねえな』
首を傾げる。
『まっ、一応ママに知らせとくか』
春輝はテクテクとママの足元に行くと手でスリッパをカリカリと引っ掻いた。
「あら、ハルちゃんどうしたの?」
春輝はくるりと回るとソファのランドセルの前まで行き、可愛い声で鳴いた。
『ママ!ここからチョークの匂いがすんぞ!』
『俺、喋れねえから代わりに聞いてくれよ』
春輝はぴょんと立ち上がると、ランドセルを両手でパタパタと叩いた。
ママはクスリと笑いながらランドセルを見に行く。
『ハルちゃんどうしたの?陽菜のランドセルが気になるの?』
その声にビクッと陽菜の肩が揺れる。
手を膝の上に置き、顔を下げた。
ママはランドセルを持ち上げると、薄らと手についた粉に気付く。
自分の手を見つめて数秒黙った。
「……そっか、ちょっと汚れちゃってたから教えてくれたのね」
春輝はママの膝に手を乗せてパタパタと動かして見せる。
ママは優しく春輝の頭を撫でた。
「ハルちゃん、教えてくれてありがとうね」
『俺、鼻はいいんだ!』
ママは布巾を絞って、ランドセルを丁寧に拭いていく。
「大丈夫。すぐ綺麗になるからね」
誰に言うでもない優しいママの声が部屋に響いていた。




