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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第三章

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世界の動きを読む

空に浮かぶ“それ”は、

確かに――こちらを見ていた。


だが、

視線というよりは

重さの向きだった。


ソーマは、

ゆっくりと息を整える。


(予報が来ない。

 未来の声も、雑音もない)


それでも――

世界は、動いている。


(なら……

 “動いた跡”を読めばいい)


◆現場に残る「痕」


ソーマは視線を走らせた。


最初に引きちぎられた噴水広場。

次に消えた西側の石造建築。


共通点。


(……材質……違う。

 人の密度……違う。

 魔力反応……なし)


だが――

決定的な一致があった。


「……高さだ」


「え?」

 セシリアが反応する。


ソーマは指で空を示す。


「どっちも、

 地表から“同じ高さ”にあった部分だけが

 持っていかれてる」


リュミが息を呑む。


「……空の“高さ”が……

 基準になっている……?」


「たぶん……

 あれは、面をなぞってる」


ガルムが眉をひそめる。


「面?」


イサナが先に理解した。


「……世界の“表面”。

 あれは、

 地面じゃなくて……

 世界の皮膚を剥いでる」


ノアが震える声で続ける。


「……僕の世界が終わるときも……

 最初は……

 “高さ”から消えた……」


ソーマは頷いた。


(やっぱり……

 これは“落下”じゃない)


(水平移動する摂取だ)


◆即席の予測


「セイル長官!」


ソーマは即座に叫んだ。


「“それ”は、

 王都上空を

 一定の高さで横断します!」


「次はどこだ!?」


「……中央聖堂――

 鐘楼の高さです!」


一瞬、

観測室が静まり返る。


セシリアが叫ぶ。


「鐘楼には、

 まだ人が――!」


「今すぐ下ろせ!!」

 セイルが怒鳴る。


騎士団が一斉に走る。


◆動く「現象」


空の“それ”は、

音もなく――

だが、確実に動いた。


鐘楼の真上。


ソーマは、

歯を食いしばる。


(合ってる……

 でも……

 このままじゃ……

 王都をなぞり切る)


リュミが必死に言う。


「……ソーマさん……

 この揺れ……

 止める方法が……見えません……!」


ガルムが斧を握りしめる。


「くそ……

 斬れねぇ、

 殴れねぇ……

 どうしろってんだ……!」


ソーマは、

空を見上げたまま答えた。


「……進路を変える」


全員が息を呑む。


◆「予報」を作る


「自然災害ってのは、

 完全には止められない」


ソーマは、

前世で何度も言われた言葉を思い出す。


「でも――

 進路は変えられる」


「どうやって!?」

 セシリアが叫ぶ。


ソーマは、

地図を指差した。


「王都南側……

 未開発の旧採石場。

 高さが、今の摂取面と一致してる」


イサナがすぐに理解する。


「……“同じ高さの面”を、

 意図的に用意する……」


「……誘導……ですか……?」

 リュミが呟く。


「そうだ」


ソーマは、

拳を握った。


「あれは、

 重さを均す場所へ流れる」


ノアが小さく言う。


「……世界が……

 自分を保つために……

 余分を集めてる……」


「だったら――

 集めさせる場所を、

 選ばせる」


◆賭け


セイルが、

一拍置いて言った。


「……成功率は?」


ソーマは、

正直に答えた。


「分かりません」


ガルムが即答する。


「上等だ!!

 やらねぇよりマシだ!!」


リュミも頷いた。


「……私、

 同調で……

 流れを、

 少しだけ押します……」


イサナは静かに言う。


「……影で、

 “道”を作る」


セシリアは、

歯を食いしばって笑った。


「……理論は破綻してるけど……

 嫌いじゃないわ」


ソーマは、

深く息を吸う。


(これが……

 “予報なしの予報”……)


空の“それ”が、

再び動き出す。


その進路は――

ほんのわずかに、

南へ傾いた。


「……効いてる……!」

 リュミが叫ぶ。


だが――

次の瞬間。


“それ”の内部で、

何かが脈打った。


ノアが顔を上げる。


「……ソーマ……

 中で……

 “揺れ”が変わった……!」


ソーマの背筋が凍る。


(……適応……?

 まさか……

 学習してる……!?)


空に浮かぶ現象が、

“ただの現象”ではなくなりつつある。


それを悟った瞬間だった。


――空の割れ目の奥で、

別の“影”が、動いた。

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