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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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深空断層・最奥:世界の溺死点

深空断層の最奥に近づくほど、

空間は「音」でも「景色」でもなく――


“情報のあわ”が浮かぶ海 へと姿を変えた。


泡は光り、

ときに文字のようなものを形づくり、

そして消えていく。


ソーマはその泡のひとつが弾けた瞬間、

胸の奥に鋭い痛みを感じた。


(うっ……!

 今の……“予報の断片”か……?)


ノアが肩で息をしながら言った。


「ここ……

 僕の世界が崩れ落ちた瞬間と、

 本当に同じ空気だ……

 胸が苦しい……」


リュミは震える指で空気をなぞる。


「……泡に触れると……

 誰かの“願い”が流れ込んできます……

 でも、重い……

 苦しそうで……」


セシリアも泡の光を観測しようとするが、

魔導計が悲鳴のように鳴り続けていた。


「数値が……意味をなしていない……!

 存在量がマイナスになったり、

 突然∞(無限)になったり……!」


ガルムは眉をひそめる。


「なんか、ここだけ空気が違うな……

 “生き物が死ぬ寸前みてぇな空気”だ……」


イサナは静かに言う。


「……ここが“溺死点ぼっしてん

 世界が限界まで沈んでいく場所。

 揺れが重なりすぎて、

 “生も死も決まらない”場所」


ソーマは前を見据えた。


(この奥に……何があるんだ……?

 俺の予報を乱した“手”……

 あれは何を伝えたかったんだ?)


◆中心部――揺れの交差点


光の泡が途切れ、

ぽっかりと穴のような空間が現れた。


そこには――


何もない“はず”なのに、

無数の声が渦を巻いていた。


――(……たすけ……)

――(……きこえ……)

――(……わたしを……)

――(……しずめないで……)

――(……どこ……へ……)


崩れた世界、沈んだ未来、

消えた時間……

そんな断片が、声として漂っている。


ノアが頭を押さえ、倒れ込む。


「ぐっ……!!

 声が……多すぎる……!!

 僕の世界の声じゃない……

 もっと……もっと遠い……!」


ソーマはすぐに駆け寄る。


「ノア!!

 しっかりしろ!!」


リュミは両手を胸に当て、

必死に揺れを整えようとする。


「みんな……落ち着いて……!

 揺れが……呼吸みたいに乱れています……!

 誰の声か……わからない……!」


セシリア:


「これ……世界の“残骸”の叫び……!?

 こんな密度、記録にないわ……!」


イサナはその声を静かに聞き取り、

低く言う。


「全部……“選ばれなかった未来”の声だよ」


ソーマ:


「選ばれ……なかった……?」


イサナ:


「世界が崩れるとき、

 “救われなかった誰かの願い”だけが残る。

 断層は、そういう声を溜め込む袋みたいな場所」


ガルムは苦しげに歯を食いしばる。


「なんだよそれ……!

 そんなの……全部助けられねぇのかよ……!」


ソーマは拳を握った。


(そんなの……

 俺だって助けたいに決まってる……!)


その時。


――(……ソーマ……)


再び、あの声が落ちてきた。


ノアが青ざめる。


「その声……第三の揺れだ……!

 ソーマを“観測”してる……!」


ソーマ:


「観測……?」


ノア:


「ソーマがどんな未来を望んでるか……

 どちらの世界を……

 “生かしたいと思ってるか”……」


リュミが顔を上げ、強い声で言った。


「そんなの……まだ決められません!!

 どちらも、救わなきゃいけない世界です!!」


イサナも続ける。


「断層の“第三の揺れ”は、

 世界を天秤にかけようとしてる。

 でも……それは間違ってる」


セシリア:


「選ばなくていい!

 両方救うために来たのよ!!」


ガルム:


「そうだ!!選べなんてふざけんな!!

 全部ぶっ飛ばして救うぞ!!」


影の声が揺れた。


――(……ぜんぶ……

    すくう……?

     そんな未来……あるの……?)


ソーマは一歩前へ出る。


「ある。

 俺たちが作る。

 “世界の終わりの予報”を、

 俺が塗り替える!!」


揺れが強く脈打つ。


――(……なら……

    みせて……

      おまえの……“未来”……)


ソーマの耳奥で、

爆音のような残響が鳴った。


――ザアアアアアアアアアッ!!!


視界が真白に染まり、

世界が裏返る。


◆ソーマの予報が“干渉”の段階へ


膝が崩れ、

ソーマは地面に手をついた。


(な……んだ……これ……

 ただ見えてるだけじゃない……

 俺の予報が……“世界に触ってる”……!?)


ノアが叫ぶ。


「ソーマ!!離れて!!

 それは“観測”じゃない!!

 世界の揺れが……

 ソーマの中に入り込もうとしてる!!」


リュミも必死に同調を広げる。


「ソーマさん!!

 戻ってきてください!!

 あなたの意志が……揺れに飲み込まれかけています!!」


しかし、

ソーマにはもう“別の景色”が見えていた。


――青の揺れ(アステリア)

――赤の揺れ(ノアの世界)

――黒の揺れ(第三の世界)


三つが――

ひとつに重なろうとしている。


(これは……

 世界の……未来の……

 選択肢……?)


黒い揺れだけが、

ソーマへ問いかける。


――(……どの“未来”を……

    みたい……?)


その瞬間。


断層の中心に、

巨大な“ひび割れ”が走った。


イサナが叫ぶ。


「ダメ!!

 このままだと断層が“外側”に溢れる!!

 世界が飲まれる!!」


セシリアも絶叫する。


「ソーマ!!戻れ!!

 あなたが引き金になってる!!

 観測が干渉に変わってるのよ!!」


ガルム:


「ソーマァァァァ!!戻ってこい!!」


リュミは涙を浮かべ叫ぶ。


「ソーマさん!!

 あなたは……この世界の“希望”なんです!!

 だから……戻ってきて……!!」


ソーマの視界に、

三つの揺れが重なり――


世界が、

静かにこちらを見ていた。

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