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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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沈黙する空と最初の兆候

天象庁・中央観測塔。

アステリア最大の気象観測装置が集中する場所。


いつもの朝なら、

この塔の最上階には

水晶板の光や計測器の針の動きが

絶えず見られる。


――だが。


今日は、すべてが静止していた。


「……全部、止まってる?」

 セシリアが訝しげに眉を寄せる。


計測盤の針はゼロ位置から動かず、

魔力風速計も沈黙。

霊脈の波形を描く立体水晶すら

暗く沈んでいる。


観測官の一人が青ざめながら言う。


「これ……観測史上初です。

 “全項目ゼロ”なんて……

 通常、どこか一つは動くはずなのに」


ガルムは首をかしげる。


「ゼロってどういう意味だ?

 風がないとか、魔力がないとかか?」


セシリアが即座に否定した。


「違う。

 “観測できていない”が正しいわ。

 存在しないんじゃない、

 “観測できない状態にある”の」


ガルム:


「……余計わかんねぇ!!」


ソーマも眉をひそめた。


(観測不能……

 昨日の予兆の“沈黙”と同じだ……)


そのとき、

観測塔の中央にある巨大な魔導水晶が

“ピシ”と小さくひび割れた。


観測官たちがどよめく。


「ひ、ひび!?

 魔導水晶が……!?」


セシリアも驚愕した顔で近寄る。


「こんなの理屈に合わない……

 外部から衝撃もないのに、

 内部からひびが……?」


リュミが小さく声を漏らす。


「……揺れが……吸い取られています……

 まるで、世界の“気配”が……」


イサナも壁に触れながら瞳を細めた。


「薄い……

 この塔、

 まるで“世界から切り離された箱”みたい」


ノアは胸を押さえた。


「……また来た……

 昨日の、あの感じ……

 境界が……震えてる……!」


ソーマも耳奥に

わずかな“チリッ”という残響を感じた。


(予報じゃない……

 でも、“何かが来る”前触れだ……!)


セイル長官が急ぎ階段を上ってくる。


「状況は聞いた。

 だがこれは……予想以上だな……」


セシリアが報告する。


「全観測器がゼロ値です。

 世界の揺れ――

 正確には“揺れの情報”そのものが遮断されています」


セイルは水晶をじっと見つめ、

低く呟いた。


「……まるで、“観測させまい”としているようだ。

 世界が、何か重大な変化を隠している……

 あるいは――」


ソーマが続きを言う。


「“別の何か”が、この世界を覆ってる?」


セイルが頷く。


「可能性は高い」


そこへ、

観測塔の職員が駆け込んできた。


「長官! 緊急報告です!!

 王城から使者が……!

 “ソーマ・ソウマ殿を至急引き渡せ”と!」


ソーマ:


「……ッはぁああ!?なに言ってんの!?」


ガルムは即座に怒鳴った。


「ふざけんな!!

 ソーマは渡さねぇ!!」


セシリアも険しい顔になる。


「王家……ついに動いたわね。

 こっちの観測異常に気づいたのよ。

 ソーマを“兵器化”する気ね」


リュミが不安そうにソーマの袖を掴む。


「ソーマさん……どうしましょう……」


イサナが静かに告げる。


「神殿も呼応する。

 王家が動けば、すぐに“天啓の器”扱いされる」


ノアは迷いなくソーマの隣に立った。


「僕は……絶対にソーマを渡さないよ」


ソーマ:


「いやいやいや俺の取り合いすんなって!!

 普通こんな状況ある!?

 俺なんかただの気象オタ――」


セシリア:


「はいストップ。

 現実逃避してる暇ないわよ」


ガルム:


「逃げるか!?ぶん殴るか!?それとも屋根から脱出か!?

 どれでも得意だぞ!!」


「最後のだけ犯罪者ムーブすぎるだろ!!」


そんな漫才みたいな会話が交わされ――


その瞬間だった。


――ゴォ……ッ……。


観測塔そのものが、

低い、地鳴りのような音を発した。


リュミが震えた声で言う。


「……これ……

 “世界の揺れ”じゃありません。

 もっと……もっと深い……」


イサナが壁を押さえる。


「境界が……押されてる……

 どこかで“大きな穴”が開きかけてる」


ノアも声を上げる。


「ソーマ!

 これ、前の世界が消える直前と……

 すごく似てる……!!」


ソーマは息を呑んだ。


(まずい……!

 本当に“世界崩壊の共鳴”が始まってる……!!)


セイルが緊急判断を下す。


「全員!!

 天象庁地下の“結界室”へ移動する!

 観測塔は一時封鎖だ!!

 ソーマ君、ノア君、君たちも来なさい!」


その背後で――

観測水晶がさらに大きくひび割れ、


――ピシィィッッ!!


白い光が塔内を一瞬照らした。


ソーマは思わず叫ぶ。


「これ……本格的にヤバいぞ……!!」


観測塔の沈黙は終わり、

“異変”はついに姿を見せ始めた。

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