影核崩壊、失われた時間の帰還
影の巨層は怒りと悲鳴のような音をあげ、
胸部――“影核”を守るように腕を交差させた。
だが、
ソーマと青年の蒼い揺れ核が突き刺さった部分には、
大きなヒビが走っている。
セシリアが全力で叫ぶ。
「ヒビが拡大してるわ!!
あと……本当にあと一押し!!」
ガルムが斧を肩に担ぎ、不敵に笑う。
「よしきた!
締めは筋肉の出番だな!!」
イサナが呆れた声を出す。
「最後の一押しが筋力って、世界のバランスどうなってるの?」
リュミは青年に駆け寄り、
揺れの安定を整える。
「青年さん……まだ動けますか?」
青年は息を吐いて頷く。
「動ける。
僕は……影と決着をつけるために戻ったんだから」
ソーマが青年の背を支える。
「一緒に終わらせよう。
これは“どちらか一つの世界の話”じゃない。
お前が生きた証でもあるんだ」
青年は静かに笑った。
「ありがとう、ソーマ」
◆
影核へ向かって、六人は一斉に動く。
●ガルム:突破の破壊力
●セシリア:層を乱して影の防御を弱体化
●イサナ:侵食する影の揺れを縫い止め
●リュミ:揺れを浄化し、核へ道を拓く
●青年:自身の揺れそのものを攻撃へ
●ソーマ:予報の先読みで全体を導く
六つの揺れが、
今この瞬間だけ重なった。
ソーマが耳を澄ませる。
(予報……何でもいい……
最後のヒントをくれ……!)
――ザザ……
『……揺れ……共鳴……
全振動……一点収束……』
(一点……!?)
ソーマは叫んだ。
「みんな!!
攻撃を“同じ一点”に集めて!!
そこを突けば、核の揺れが崩れる!!」
「了解!!」
六つの声が重なる。
◆
影の巨層が巨大な腕を振り上げた。
その動きは空間をひび割れさせ、
周囲の時間を跳ね飛ばし、
存在そのものをえぐる。
セシリアが叫ぶ。
「ソーマ!!
次の動きは読める!?
このままだと全員吹き飛ぶ!!」
ソーマは予報を必死に聴く。
――ザザ……ザザ……
『……空間反転……後方……』
「来る!!
影の腕、後ろ側へ反転攻撃!!
全員回避して前へ!!」
ガルムが叫ぶ。
「前へ!?
攻撃来てるの前だろ!?」
「大丈夫、後ろに回るから!!」
「言ってる意味わかんねぇけど信じる!!」
影の巨大な腕が、
ソーマたちの“背後”をなぎ払った。
全員が影核の真正面へ走る。
リュミが祈りを込めて声をあげる。
「みんなの揺れ……集まって……!」
イサナの術が空間を縫い、
セシリアの術式が揺れを圧縮し、
ガルムの一撃が道をこじ開ける。
青年は胸に手を添え、
揺れ核を両手へ形成した。
「……僕は……
もう逃げない……!!」
ソーマが青年の腕へ手を添える。
「行け!!
これはお前の……“過去を超える一撃”だ!!」
青年が叫んだ。
「――《揺核衝心》!!!」
蒼い光が一直線に伸び、
影核のヒビへぶつかる。
ガルムの斧がその上から叩き込み、
セシリアの術が核の結び目を切断し、
イサナが影の侵食を縫い止め、
リュミが揺れを浄化する。
そして――
ソーマの読みが、
すべてを一点へ導いた。
――――パリン。
世界が息を呑んだような静寂。
影核が、
音もなく――砕けた。
◆
次の瞬間。
影の巨層は蒜のように崩れ落ち、
黒い破片が光となって霧散していく。
崩れていく影の中で、
青年は静かに目を閉じた。
「……終わったんだね……
僕の……あの世界の残骸も」
ソーマは青年の肩を支える。
「これで……
お前の世界の“死に残った声”は救えたんだよな」
青年は目を開いて微笑んだ。
「うん。
本当に……ありがとう」
リュミが涙をぬぐいながら言う。
「青年さんの揺れ……
とても綺麗です……
もう、苦しんでいません」
セシリアも頷く。
「揺れの密度も安定してる。
あなたはもう“消える側”じゃない」
ガルムが大声で笑う。
「よかったな青年!!
お前も正式に仲間入りだ!!
いや、勝手に仲間扱いしてたけど!!」
「それは僕も気づいてたよ……」
青年が苦笑する。
イサナが静かに言う。
「……時間層が戻り始める。
そろそろ“出口”が開くよ」
◆
周囲の景色がゆっくりと白く霞み、
崩れた時間層が一つの線へ再編されていく。
ソーマは空間の“揺れ”が落ち着いていくのを感じた。
まるで世界そのものが、
少しだけ“安心”したような――そんな気配。
「……帰れるんだな」
青年は小さく頷いた。
「うん。
でも……ソーマ」
「ん?」
「これで終わりじゃない。
僕の世界の崩壊は……
たぶん“まだ続いてる”。
今日救えたのは……僕自身だけだ」
ソーマは笑った。
「知ってるよ。
だからこれからも一緒に戦うんだろ?」
青年は驚き、そして笑った。
「……本当に……ありがとう」
◆
白い光が広がり、
六人はゆっくりと元の時間へ引き戻されていく。
重なった揺れが一つずつ解けていく瞬間――
ソーマはふと、耳の奥に残った微かな“予報の余韻”を感じた。
――ザザ……
『……次……予兆……』
(……次って何だよ……
休ませてくれ……)
ソーマは空を仰いで、
静かに深く息をついた。
そして六人は――
光の向こうへ歩き出した。




