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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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影核突破、六重の揺れ陣

影の巨層が咆哮をあげた瞬間、

世界がひっくり返ったような衝撃が走る。


時間が巻き戻り、

景色が二重に揺れ、

足元の地面が“波”のようにうねった。


ソーマは叫ぶ。


「足場まで揺れてる!?

 世界、もっと落ち着いて!!」


セシリアが返す。


「それを落ち着かせるほうが難しいのよ!!

 世界のご機嫌なんてどうやって取るのよ!!」


「お菓子とかあげたら……?」


「世界に通用するわけないでしょ!!」


イサナがぽつりと言う。


「でも……世界って甘いもの好きだよ」


「えっ好きなの?」

 全員が二度見した。


イサナは平然と続ける。


雷脈らいみゃくから砂糖の結晶が落ちてくることあるし」


「世界どうなってんの!?」

 ソーマが素でツッコむ。


影の巨層が再び腕を振り上げる。

その軌道はゆっくり見えるが、

“触れた時間”を奪いながら迫るため、避け方が極端に難しい。


ソーマは集中した。


(影の腕……“次”の揺れ……どこだ……)


――ザザ……

『……右前……層歪曲……二段……』


(右前から“二段攻撃”…!?

 一回振り下ろしたあと、 時間が戻ってもう一度!)


「ガルム!!

 その腕、一回じゃ終わらない!!

 二回目の衝撃がくる!!」


「了解!!」


ガルムは斧を構え、

巨大な影の腕へ突っ込んだ。


「おらああああああ!!!」

 最初の衝撃を受け止め、

 地面を滑りながら踏ん張る。


そして――

時が“戻り”、振り下ろしが再び来る。


ガルムは斧を振り上げた。


「二回目もまとめてこいやぁぁぁ!!!」

 斧と影の腕がぶつかり、

 巨層の動きが一瞬止まった。


セシリアはその隙に術式を展開する。


「《気圧震・裂断式ストーム・カット》!!」


空間の圧力が揺らぎ、

影の腕に切れ込みが生じた。


イサナが素早く杖を突き立てる。


「《残滓縫合ざんしほうごう》」


裂けた影が固定され、動きを封じられる。


リュミは両手を胸に組み、祈るように呟いた。


「……揺れよ、澄みなさい……

 《風路清正ふうろせいしょう》」


風の流れが整えられ、

影の動きがさらに鈍った。


六人の技が重なり、

巨大な腕がわずかに後退する。


青年はその様子を見つめ、

静かに前へ歩み出た。


その身体は半透明だが、

足取りは確かだった。


「……僕の世界でも、同じだったんだ……」


ソーマが目を向ける。


「青年?」


青年は影の巨層を見上げた。


「あれは……僕がいた世界が崩れる時に生まれた“影”。

 誰も助けられなくて……

 僕は逃げて……

 世界は飲み込まれた」


ソーマは拳を握る。


「一人の責任じゃないだろ!!

 それを全部背負うな!!」


青年は小さく笑った。


「優しいね、ソーマ。

 でも……僕は終わらせなきゃいけない。

 あれは“僕の未練”の形だから」


イサナが頷く。


「なら、みんなで終わらせよう」


ガルムが斧を肩に担ぐ。


「おう。

 お前だけにカッコつけさせねぇよ」


リュミは静かに手を合わせた。


「青年さんの揺れ、

 いま……とても綺麗です」


セシリアは息を整える。


「感情が揺れを強くする……

 なら今が最大値ね」


青年は深く息を吸い――

両手を前に突き出した。


「――来い。“僕の揺れ”」


淡い青い光が青年の手に集まり、

透明な球のような揺れが形成される。


ソーマが驚く。


「それ……!」


イサナが小さく呟いた。


「揺れゆれかくだね。

 揺れの本質」


青年が影に向け、声を放つ。


「……僕の時間を返してもらう!」


青年の揺れ核が、

影の巨層の胸部へ向かって飛ぶ。


影は初めて反応し、

胸を庇うように腕を交差させた。


リュミが叫ぶ。


「急所……!

 そこが影の中心、影核です!!」


ソーマは青年に叫ぶ。


「もう一撃!!

 動きが止まってる今なら届く!!」


青年は両手を握り、

再び揺れ核を形成する――が。


「……っ……!!」


突然ひざをついた。


ソーマが駆け寄る。


「青年!!?」


青年は苦しげに笑った。


「……少し……体が……追いつかない……

 思ったより……戻れてない……」


セシリアがすぐに診る。


「揺れの密度が不安定……!

 一気に力を使うと揺れが崩れるわ!!」


イサナが続ける。


「ソーマ、青年を支えて」


「任せろ!!」


ソーマは青年の背に手を添えた。


(揺れの流れ……!

 俺も予報で聞こえる“世界の揺れ”を……!)


――ザザ……


予報が微かに反応する。


――『……共鳴……接続……補助……』


「いける……!!

 青年、俺も一緒に揺れを流す!!」


青年は驚き、そして笑った。


「……分かった。

 一緒に……行こう」


ソーマと青年の揺れが重なり――


――蒼い閃光が生まれた。


「行けええええええ!!!」

 ソーマの叫びと同時に、


揺れ核が影の胸部へ突き刺さった。


――ズガァァァァァン!!!!


影の巨層が大きくたじろぎ、

胸の奥から黒い煙が噴き出す。


セシリアが叫ぶ。


「核心部にヒビが入った!!

 あと少しよ!!」


ガルムが斧を構える。


「なら、仕上げは俺の仕事だな!!」


イサナも杖を構える。


「いくよ、みんな!」


リュミの声が響く。


「青年さん……!

 あなたの揺れ、今すごく強いです!!

 このまま押し切れます!!」


青年は頷き、立ち上がった。


影の巨層が反撃の構えを見せる。


世界が揺れる。


そして――


六人は一斉に駆けた。

影核を砕くために。

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