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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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揺れの復活、影の巨層

――世界が震えた。


青年の揺れが一度、強く脈打つ。

白かった光が、淡い青へ変わり、

その形が“人の輪郭”をはっきり帯び始める。


ソーマが息をのむ。


「……青年……!」


(……ここに、いたんだ……

 僕は……)


青年はうつむき、

両手を見つめるように揺れた。


(僕の……揺れ……

 僕が選ぶ……)


リュミがそっと祈る。


「あなたの揺れは……まだ消えていません。

 戻っていいんです……ここへ」


イサナの声が重なる。


「揺れはね……“消えたい”より“残りたい”を選んだ時に強くなる」


ガルムが笑う。


「帰ってこいよ。

 お前はまだ終わっちゃいねえ」


そして――

青年は、静かに頷いた。


(……戻る……

 僕は……ここに……在りたい……)


その瞬間、青年の揺れが

3本の補助線を一気に引き寄せ――


――光が弾けた。


だが、世界はそれを許さない。


――ゴオオォォォォ……!!


裂け目の底から、

“影の巨層きょそう”が迫り上がる。


巨大な手のようなものが、

地平線を塗りつぶすほどの暗さでせり上がる。


セシリアが絶叫する。


「来たっ……!!

 層の崩落そのものよ!!

 これ、世界が“間違えた時間”を消しに来てる!!」


ソーマが震える。


「世界ってそんな物騒なの!?

 もっとこう……優しい存在じゃないの!?!」


イサナが淡々と告げる。


「優しいわけないよ。

 “世界の維持”が最優先。

 邪魔な時間は全部切り捨てる」


「こわッッ!!」

 ソーマが全力で距離を置く。


影の巨層はゆっくりと腕を伸ばす。

だが、その動き一つ一つが“時間のずれ”を引き起こし、

周囲の地形が次々と崩れ、逆再生し、また崩れる。


ガルムが斧を構え、大声を上げる。


「オイ世界!!

 切り捨ててんじゃねぇ!!

 こっちはまだ終わらねぇんだよ!!」


セシリアが怒鳴った。


「相手は世界現象なのよ!?

 怒鳴ってどうするのよ!!」


「気持ちの問題だろ!!」


青年の復元はまだ途中。


リュミが叫ぶ。


「ソーマさん!!

 青年さんを守らなきゃ!!

 揺れが安定するまで時間が必要です!!」


ソーマは頷き、状況を解析する。


(影の動き……遅く見えるけど……

 周囲の時間を“奪って”進んでる……

 距離感がめちゃくちゃだ……)


そのとき。


耳の奥でノイズが走る。


――ザザ……

『……風速……流動……

 警戒……』


ソーマの顔が変わった。


「影の“動き方”、予報と一致してる……!!

 あれ……風じゃなくて“時間の流れ”を引き寄せてるんだ!!」


セシリアが理解する。


「つまり動かすには……

 逆に“流れを乱す”必要がある!!」


ガルムが叫ぶ。


「乱すってなんだ!?

 ぶっ叩けばいいのか!?」


「違うわよ!!!」


イサナが静かに告げた。


「違うけど、あなたがやることは合ってる」


「結局ぶっ叩くのかよ!!」


戦闘体勢に入る五人。


●ガルム:時間奪い手の進行を物理で止める

●イサナ:層の揺れの固定

●セシリア:時間乱流を発生させ進行遅延

●リュミ:青年の揺れを安定化

●ソーマ:予報から動きの“先読み”を行う


各々が、最大限の役割を担う。


ソーマが叫ぶ。


「ガルム!!

 振り下ろす腕、三秒後に“二重になる”!!

 時間がズレるから避け方注意して!!」


「二重!?

 何それ怖ッ!!」

 ガルムは斧を構え直す。


セシリアが術式を放つ。


「《乱流障壁ランナーズ・シア》!!!

 時間の流れを乱して速度を落とす!!」


イサナが追加する。


「その隙に青年の揺れを安定させるよ!」


リュミは祈りの手を青年へ添えた。


「がんばって……戻ってきて……!」


青年の揺れはさらに明度を増し、

姿が徐々に“透明な青年の像”へ変化していく。


そして――


影の巨層がついに腕を振り下ろした。


――ドォォォォン!!!


大地が裏返り、

上下が入れ替わるほどの衝撃。


ガルムは斧で受け止め、

地面を滑りながら踏ん張った。


「こ……のっ……!!

 デカさの割に重さはねぇな!!

 ただのデカい影じゃねぇか!!」


セシリアが叫ぶ。


「それ、褒めてるわけじゃないでしょ!?

 ただのデカさで十分脅威よ!!!」


イサナは揺れの固定を続けつつ呟く。


「ガルム……ああいう時だけはすごいね」


ソーマは叫ぶ。


「次!!

 影の腕、今度は“場所ごと”消すぞ!!

 ガルム、絶対そこから動け!!」


「指示が遅え!!!」

 ガルムが飛んだ瞬間、

 ガルムのいた地面が空間ごと消えた。


リュミが悲鳴を上げる。


「ガルムさん!!」


「問題ねぇ!!

 死んでねぇ!!

 むしろ元気だ!!」

 ガルムは別の層に足場を踏みしめ戻ってきた。


「なんで元気なんだ……」

 ソーマが小さく嘆く。


青年の揺れが、ついに形を為した。


透明だった身体が、淡く色を帯び、

輪郭が確かな“人”へ戻る。


青年――

その瞳が開く。


「……ソーマ……

 みんな……」


ソーマが笑う。

涙がこぼれる。


「戻ってきたな!!

 青年!!!」


青年はかすかに微笑み――

次の瞬間、表情を引き締め、影を見上げた。


「……あれが……

 崩れた層の“中心原因”……」


セシリアが叫ぶ。


「青年!

 身体はもう平気なの!?

 無理しないで!!」


青年は首を横に振る。


「平気じゃない。

 でも……分かる。

 “あれは僕の時間から落ちた残響”なんだ」


ソーマが驚く。


「どういうこと!?」


青年は影を指差した。


「……あれは、僕の世界が崩れる時に生まれた“断片”。

 僕が逃げたことで残った、最後の“影”なんだ」


イサナが目を細める。


「つまり……自分自身の影」


青年は頷いた。


「だから――

 僕が“終わらせる”。

 僕が逃げなければ、生まれなかった影だから」


ソーマは思わず青年の腕をつかんだ。


「一人でやれるわけないだろ!!!

 俺たちがついてる!!」


ガルムが斧を肩に担ぐ。


「おう。

 背中ぐらい貸すぜ?」


リュミが微笑む。


「あなたの揺れは、もう“ひとりじゃない”です」


セシリアも呟く。


「……逃げたい時は、逃げてもいいのよ。

 でも今日は、一緒に戦う日みたいね」


青年は深い息を吸い――

静かに言った。


「……ありがとう。

 それじゃあ――行こう」


影の巨層が吠える。


世界が軋む。


層が崩れ始める。


そして――


六人は影へ向かって駆け出した。

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