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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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揺れの迷層、三日間の探索

――世界が、千切れた。


ソーマたちが飛び込んだ先は、

王都でも地下でもない。

“どこでもない場所”だった。


地面は時折透け、

建物は空中で回転し、

遠くには見覚えのある教会や市場が、

上下逆さで揺れている。


リュミが息をのむ。


「ここ……

 王都が……

 “層ごと浮かんでる”……」


セシリアが魔導測定器を確認しながら呟いた。


「層の破片フェーズフラグメントが混ざりあってる……

 世界の“階層そのもの”が崩壊して再構築されてる状態よ……

 つまり――」


「世界がパズルになってるってことか?」

 ガルムがまとめる。


「ざっくり言うとそう」

 セシリアが即答。


「ざっくりすぎるだろ!!」

 ソーマが慌てた。


イサナが杖をつきながら辺りを見渡す。


「……まずい。

 この層、不安定すぎる。

 長くいると“飲まれる”」


「飲まれるってなに!?」

 ソーマが泣きそうな声。


「普通に消える」

 イサナは静かに言った。


「やめてそういう具体的ホラー!!」


三日間――

世界は昼夜を忘れ、

混ざった層をただ回転し続けた。


そして、

ソーマのパーティーは生き残るための探索を続けていた。


――――一日目。


地面は常に揺れ、

踏みしめた瞬間に“別の場面”へ切り替わる。


ガルムが足を踏み抜いた瞬間――


「うおっ!!?

 地面が抜け――」


次の瞬間、

ガルムは市場の屋根の上に立っていた。


「……戻った。

 っていうか動いた?」


「ガルムさん!!

 そこ足場弱いですよ!!」

 リュミが叫ぶ。


ソーマは即答。


「ガルム、動かないで!!

 いや動いて!!

 いや動くな!!

 どっちーー!!?」


「指示が逆!!!」

 ガルムがツッコむが屋根が抜けた。


落ちた。

と思ったら次の瞬間、

ガルムはソーマの真横に立っていた。


「戻ったな!」


「便利なのか危険なのか分かんねぇ!!!」

 ソーマが叫ぶ。


――二日目。


層の隙間からは“別の場所の空気”が流れ込む。


砂漠のような乾燥した風が吹いたかと思えば、

次の瞬間、

雪混じりの風が頬を打つ。


セシリアは測定器を叩きながら青ざめた。


「……これ……

 アステリア中の気象が混ざってる……

 魔力の層も、霊脈の層も……

 完全にちぎれてるわ……」


ソーマはつぶやく。


「これ……台風の進路予想よりムリゲーじゃ……」


「あなたの前世の悩みは今は置いときなさい!!!」

 セシリアが全力ツッコミ。


リュミは空を見ていた。


「……空の“気配”が複数あります……

 層が重なって、

 ひとつじゃなくなってる……」


ソーマは不穏な予感を覚えた。


(世界が……

 バラバラになってるんじゃなくて……

 混ざりかけてる……?)


――三日目。


層の揺れがさらに悪化し、

歩くだけで世界が歪む。


その中、

イサナが突然足を止めた。


「……いた」


ソーマが振り返る。


「えっ!?

 誰が!?」


イサナは前方を指差す。


世界の裂け目の向こう側に、

白く淡い揺れが“座っていた”。


青年だった。


半透明で、

地面に落ちる影はない。


リュミが息をのむ。


「……あの姿……

 もう……人の形を保ててない……」


セシリアが震える。


「揺れそのものに……なってる……

 人間の情報が崩れかけてる……」


ガルムが腕を組む。


「じゃあ……倒せばいいのか?」


「倒すな!!!!」

 ソーマが全力で止めた。


「どこの誰より優しくて必死な“世界の残りかす”なんだよアイツ!!!

 倒すとかじゃねぇ!!」


ガルムは目をこする。


「……そういや、お前ずっと言ってたな。

 “助ける方法ある”って」


ソーマは深く頷いた。


「ある。

 ……はず」


セシリアがツッコミを入れる。


「不安定!!」


リュミは静かに微笑む。


「きっと……道はあります」


イサナも頷いた。


「揺れの正体が分かれば……

 青年も、世界も……救えるかもしれない」


ソーマは青年のもとへ歩み寄る。


「青年……!」


青年はゆっくり顔を上げた。


その瞳は、

もう人のものではない。


けれど、

“感情”はまだ残っていた。


「……ソーマ……

 君は……まだ……

 僕を……探して……」


「探したよ。

 お前を助けにここまで来た」


青年は揺れる声を出す。


「僕は……

 世界を……壊した……

 間違った……

 僕のせいで……

 アステリアが……」


「違う!!」


ソーマの声が響く。


「お前は間違えたけど……

 世界を救いたかっただけだろ……!?」


青年は驚いた顔をする。


ソーマは続けた。


「まだ遅くない。

 まだ救える。

 青年の世界も……

 アステリアも……

 どっちも残す方法を探すって言った!!

 だから……消えるな……!!」


青年は、

涙とも光ともつかない揺れを落とした。


「……ソーマ……

 君は……本当に…………」


その瞬間。


揺れの空気が変わった。


セシリアが叫ぶ。


「来る!!

 層が“崩落”する!!

 この世界、落ちるわ!!」


大地がまた裏返り始める。


リュミが手を伸ばす。


「ソーマさん!!

 青年も一緒に!!

 早く!!」


ソーマは青年の腕をつかもうとする。


だが青年の腕は、

指の間から抜けてしまう。


霧のように。


「待って……!!

 青年!!

 消えるな!!」


青年は消えゆく身体で、

最後の言葉を絞り出した。


「ソーマ……

 君の“揺れ”を追う……

 だから……また……」


世界が割れた。


ソーマの視界が白に染まる。


そして――


次の層へ、

ソーマたちは落ちていく。

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