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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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揺れの大崩壊、世界の三日間

――バシュゥゥゥゥン……!!!


青年の体から爆発した白い揺れが、

広間だけでなく“世界そのもの”へ走り抜けた。


空間が一瞬、無音になる。


そして次の瞬間――


――ゴォォォォォッッ!!


地下広間が“消えるように”白光に包まれた。


「ソーマさん!!!」

 リュミの叫びが、遠くで響く。


ソーマは咄嗟に仲間を引き寄せた。


その直後――


世界が裏返った。


激しい風が吹きつける。

いや、“風”ではない。


大気そのものが“揺れの方向”を見失ったような流れ方。


ソーマは視界が白く霞む中、

息をついた。


「……ここは……どこだ……!?」


背後でガルムが咳き込む。


「わかんねぇけど……生きてるな……!」


セシリアが額に手を当てて呻く。


「始まった……

 “世界規模の揺れ崩壊クエイクブレイク”よ……

 観測史上……存在しないレベルの……」


リュミは胸に手を当てながら周囲の空気を読む。


「……王城地下の空間が……

 揺れの波に飲み込まれて……

 今は“別の層”にいます……!」


ソーマが聞き返す。


「別の層!? 階層あるの!?

 世界ってメゾネット構造なの!?」


「意味は合ってないです!!」

 リュミのツッコミも弱々しい。


イサナは周囲を見回し、低く呟いた。


「……揺れの“上澄み”にいる。

 本来は触れられない領域……

 境界と現実の“隙間”。

 つまり……」


セシリアが蒼白になる。


「アステリアが……

 崩れはじめてる……!?」


視界が徐々に戻る。


そこは王城地下とは似ても似つかない場所だった。


空間が歪み、

足元が時々、透明になり、

遠くでは建物の影が上下逆に揺れている。


ソーマは呆然とする。


「これ……

 王都の……影みたいだ……」


リュミは震えた声で頷く。


「現実と残滓が混ざって……

 “層が重なっている”んです……

 こんなの、聞いたことありません……」


ガルムは拳を握りしめる。


「青年の揺れ……

 とんでもねぇことしやがった……!」


ソーマは青年の姿を探す。


「青年は!?

 どこだ!?」


しかし白い揺れの渦の中心にいたはずの青年は、

姿が消えていた。


代わりに、

ソーマの耳にノイズが微かに触れる。


――ザ……ザ……ザ……

――『……注意報……広域……魔霧……』


(前世の予報!?

 こんな状態でも聞こえるのか!?)


セシリアが顔を上げる。


「ソーマ!

 予報、来てるのね!?」


「うん……でも……

 ノイズが多い……いつも以上に……!」


リュミが手を重ねる。


「揺れが乱れすぎて……

 予報の“経路”も壊れてるんです……!」


イサナは眉をひそめた。


「それでも聞こえるのは……

 ソーマの揺れが“世界のゆらぎの中心”に来たから……」


突然、

足元がガクンと沈んだ。


「わっ!!?」


ソーマたちのいる足場が、

波のように揺れ始める。


いや――これは波ではない。


世界そのものが“うつ伏せ→仰向け”のようにゆっくり裏返ろうとしている。


「ひぃぃぃぃぃ!!!

 世界ひっくり返さないで!!!」

 ソーマが悲鳴をあげる。


ガルムが叫ぶ。


「全員、踏ん張れ!!!

 ソーマを中心に引かれるぞ!!」


ソーマは焦る。


(俺を中心!?

 中心ってなに!?

 俺は世界のコアじゃない!!!)


セシリアが説明しながら半泣き。


「世界の揺れがソーマに“向いてる”のよ!!

 中心点にされかけてるの!!」


「いやだああああ!!

 俺そんな重役やった覚えない!!!」

 ソーマが絶叫。


イサナが近づき、

ソーマの肩を掴む。


「大丈夫。

 あなたは中心じゃない。

 “結び目”よ」


「もっと嫌だ!!!」

 ソーマは泣く。


リュミが励ましながら手を握る。


「結び目は……

 世界を繋ぐ大切な場所なんです……!

 ひとりじゃ崩れません……!」


「ひとりじゃ崩れないってことは!!!

 崩れる可能性はあるの!?!?」


「あります!」

 リュミが元気に答えた。


「元気に言うところじゃない!!!」

 ソーマの魂のツッコミが響く。


その時――

天から白い光が降りてきた。


いや、“天”ではない。


層が重なった天井の一つ…

向こう側の層から光が漏れてきている。


光の渦がソーマの前で収束し、

青年の姿が再び形を取った。


青年は半透明で、

存在が揺れている。


「ソーマ……

 聞こえる……?」


ソーマは息を呑む。


「青年……!

 どうなったんだよ……!?」


青年はかすかに笑った。


「僕はもう……

 “形を保つことすら”難しい。

 世界の崩壊に巻き込まれて……

 揺れの塊になりかけてる」


ソーマは叫んだ。


「なんでそんなことしたんだよ!!!

 世界の揺れを壊すとか……!」


青年は静かに首を振る。


「壊そうとしたんじゃない。

 “均そう”としたんだ。

 区別を消せば……

 僕の世界も消えずに済むと……

 そう思った」


リュミが震える声で問う。


「本当に……それが救いだと……?」


青年は目を閉じた。


「わからない。

 でも……

 僕は死にたくなかった。

 世界が消えるのを、見たくなかった」


ソーマの胸が痛む。


(青年は……

 ただの敵じゃない。

 世界に遺された“最後の人”なんだ)


青年が顔を上げる。


「でも……ソーマ。

 君が言った“もう一つの方法”。

 まだ……聞いてないよ」


ソーマは拳を握った。


「俺はまだ何も知らない。

 何もできない。

 でも……

 世界を救う方法を探すって言ったんだ!!

 お前も……アステリアも……

 どっちも残す方法、探す!!」


青年は、

揺れが崩れそうな身体で微笑んだ。


「……本当に……

 そんな方法が……」


その瞬間――

青年の身体がバラバラに揺れた。


「青年!!」


「境界が壊れてる……!」

 イサナが叫ぶ。


青年の声が震える。


「ソーマ……

 僕……

 消える前に……

 もう一度、会いに行く……」


そして、

青年は光の粒となって散った。


世界の層が――

大きく歪む。


セシリアが叫ぶ。


「この層、崩壊する!!

 早く移動しないと落ちるわ!!」


リュミが手を伸ばす。


「ソーマさん!!

 次の層へ!!」


イサナが叫ぶ。


「走れ!!

 世界が本格的に崩れ始める前に!!」


ソーマは胸に残る痛みを抱えながら走った。


(青年……

 消える前に、会いに行く……)


その言葉が、

ソーマの決意を強くした。


(必ず……助ける方法を見つける!!

 どっちの世界も……!!)


崩れ始めた層の世界を背に、

ソーマたちは次の揺れへと飛び込んだ。

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