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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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揺れの心臓、世界の選択

――ゴウッ……!!


地下広間の空気が、

まるで巨大な心臓の鼓動のように脈動した。


金色の線が輝き、

黒い残滓が絡みつき、

足元で“二つの世界”が交差する。


「う……うあっ……!!」


ソーマの身体が勝手に引かれた。


胸の奥から、

何か透明な糸を引っ張り出されるような感覚。


青年は淡々と告げる。


「始まったね。

 “選別せんべつ”が」


「させるかよ!!!」

 ガルムが飛び出す。


だが――


ガルムの足が、

魔法陣に触れた瞬間。


――バチッ!!


「ぐっ……!!?」


彼の身体が弾き飛ばされた。


「ガルム!!」

 ソーマが叫ぶ。


「平気だ!! 折れてねぇ!!

 ……たぶん!!」

 ガルムは壁にめり込みながら叫ぶ。


「たぶんが嫌なんだよ!!」


セシリアが魔導測定器を叩きながら悲鳴を上げる。


「なにこれ……なにこれ!?

 “世界の深層波しんそうは”が干渉してる……!?

 魔法陣なんてもんじゃないわ……これ……

 物理法則がねじれてる……!!」


ソーマが震える。


(俺……

 こんなもの呼んじゃったの……?)


青年は優しく、

まるで“あやすように”言った。


「呼んだんじゃないよ。

 君がいるから、世界が“揺れた”だけだ」


「そんな勝手に揺れないでくれ!!!」

 ソーマが泣きそうになる。


イサナは青年を一直線に睨んだ。


「選別に意味なんてない。

 ソーマは――“こっちの世界の人間”だ」


青年は今度は微笑みも消して静かに返した。


「君がそう思いたいだけだよ、イサナ。

 君こそ……境界から“迷い込んだ揺れ”なのに」


イサナの瞳が揺れる。


ソーマは叫んだ。


「やめろ!! イサナを揺らすな!!」


青年は小さく首を振る。


「僕は事実を言っているだけさ」


その時、

天井の“裂け目”が一気に広がった。


――ビキ……ビキィィィ!!


白い光が落ちてくる。


いや、“落ちる”のではない。


ソーマの胸へ向かって収束していく。


「やっ……やめ……っ……!!」


身体の内側で、

何かが二つに引き裂かれる感覚。


(苦しい……!!

 揺れが……二つの方向に……)


一つは、いま立っているアステリア。


もう一つは――

前世の“消えかけた世界”。


ノイズが聞こえる。


――ザ……ザァ……

――『……前線……低気圧……接近……』


(前世の天気予報……!?

 なんでいま……!?)


その混ざり方が異様だった。


遠くの記憶が、

“呼び出されている”ように感じる。


リュミが涙目でソーマの腕をつかんだ。


「引かれないで!!

 ソーマさんは……ここにいます……!!

 ほんとうに、ここに……!!」


ソーマは必死で頷く。


「いる……!!

 俺は……ここにいる……!!」


だが身体は言うことを聞かない。


足元から浮き上がる。


世界が二つに割れ、

両側から引かれる。


セシリアが叫ぶ。


「まずい……!!

 深層波の干渉が限界を超えてる!!

 このままだとソーマの揺れが――

 “二つに裂ける”!!」


「裂ける!?」

 ソーマが叫び返す。


「嫌だよ!?!?

 縦に!? 横に!? どっち!?!?」


「そういう裂け方じゃないわ!!

 存在情報の分裂よ!!」


「もっと嫌だよ!!!」

 ソーマは半べそ。


イサナが立ち上がり、

杖を強く突き立てる。


「ソーマは裂けない!!

 私が“軸”にする!!」


杖の先から、

黒い残滓と白い風が混ざったような揺れが放たれる。


青年が初めて表情を変えた。


「……イサナ。

 その力……」


イサナは叫ぶように声を張った。


「私は境界の子でいい!!

 どの世界にも属せない揺れでいい!!

 でも――」


ソーマに手を伸ばす。


「ソーマは“選ばれた側”じゃない!!

 ――“選ぶ側”なんだよ!!」


ソーマの胸に、

イサナの揺れが流れ込む。


白い光と黒い影がぶつかり合い、

ソーマの身体を中心に渦を巻く。


青年は小さく呟いた。


「……こんな干渉、

 初めて見たよ……」


リュミも一歩踏み出す。


「なら……私も!!」


両手を広げ、

《天象同調》を限界まで解放する。


透明な風の揺れが、

ソーマの周囲を包み込む。


「ソーマさんはここです!!

 この世界の“空”が証明します!!」


ガルムも吠える。


「ソーマァァァァ!!!

 帰ってくんなぁぁ!!

 ここにいろ!!」


セシリアは必死で術式を展開する。


「3人の揺れを束ねるわよ!!

 ソーマ!!

 逃げるな!! 踏ん張れ!!」


「踏ん張ってるよおおおお!!!

 足つかないけどおおおお!!!」


ソーマは必死に世界へしがみついた。


青年はしばらくその光景を見つめていた。


その顔に、

“悲しさとも諦めともつかない感情”が浮かぶ。


「……そうか。

 それが……君たちの答えか」


その声と同時に、

天井の裂け目が震え出す。


「なら――

 一度、世界に訊いてみよう」


青年は手を掲げた。


白い光が形を成し、

人の形から“揺れそのもの”へと変わっていく。


「ソーマ・ソウマ。

 アステリアは君を拒むか。

 それとも、迎えるか」


その言葉が、

世界を震わせた。


――全ての揺れが、

ソーマに集中する。


――世界が、

ひとつの答えを示そうとする。


選ぶのは青年でも、

ソーマ自身でもない。


“世界そのもの”だ。


(来る……!!)


ソーマは目を強く閉じた。


そして――


世界が、ソーマの揺れに“答え”を返した。

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