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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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王城の地下、揺れの心臓へ

王都・レウェン王城。


普段は荘厳で人々の憧れの象徴である城も、

この夜ばかりは違って見えた。


魔導灯の明かりは弱く、

空気は重く、

王城の周囲には人の気配すらない。


「ほんと……来ちゃった……」

 ソーマが震える声でつぶやく。


「来たんじゃねえ、連れて来られたんだ」

 ガルムが重い扉を押し開けながら言う。


「どっちでも嫌だよ!!」

 ソーマのツッコミはキレがある。


城門は閉じられていたが、

天象庁の立場があるセシリアが兵に通告すると、

兵たちは深刻そうな表情で道を開いた。


「……“王城地下へ揺れが集まっている”という報告は、

 すでに王家にも届いています」

 兵士が声を低くする。


「王家は……

 “原因が天象庁側にあるのでは”と……」

 遠慮がちな視線がセシリアに向いた。


「してねぇわよそんなこと!!」

 セシリアが怒鳴る。


ソーマがすかさず耳打ちする。


「いやセシリアさん、

 少しは落ち着いて……?

 怒り方が完全に犯人ムーブ……!」


「あなたのせいよ!!

 全部あなたのせいよ!!」

 セシリアが真顔で言う。


「俺なの!?!?

 いまの流れ俺なの!??」

 ソーマが両手を上げて悲鳴をあげた。


城内は、想像以上に静かだった。


リュミが空気を味わうように目を閉じる。


「……揺れが、

 この建物そのものに“染み込んで”います……」


「染み込む!?

 建物がスポンジみたいに言うのやめて!!」

 ソーマが怯える。


「比喩です!!」


イサナは周囲を見回しながら、

小さく呟いた。


「……あの青年、

 かなり深くまで“根”を張ってる」


「根って何の話!?」

 ソーマは聞くのが怖い。


「揺れの“根”よ。

 世界と世界をつなぐための、

 “糸”みたいなもの」


「糸や根、それぞれ怖い!!

 もっと可愛い例えして!!」


「無理」

 イサナは即答だった。


王城の内部を進むと、

重い石造りの階段が姿を現した。


セシリアが足を止める。


「ここよ。

 “王城地下区画”。

 普段は王家の霊廟と記録庫があるだけだけど……」


魔導測定器が、

低く震える音を出す。


「……間違いないわ。

 揺れの中心は、この下」


「王城の地下って言えば……

 相当古い場所だよな?」

 ガルムが斧を担ぎ直す。


「ええ。

 王都が出来る前からある“地下基盤”。

 アステリアの深層に近い場所よ」

 セシリアが言う。


ソーマは背筋が冷えた。


(深層に近い……?

 そこに俺を呼ぶ通路が……?)


階段を下りると、

空気が変わった。


温度が下がるのではなく、

“厚み”が増す感覚。


リュミは思わず胸を押さえた。


「……苦しい……」


「リュミ!」

 ソーマが支える。


「大丈夫です……

 ただ……

 ここ、揺れが密すぎて……

 私の体が押されてる感じが……」


イサナがそっと肩に手を置く。


「無理するな。

 揺れは私が読むから」


「イサナさん……ありがとう……」


やがて、

地下広間にたどり着いた。


そこは王城の古い記録庫――

だが、いまはまるで別空間だった。


床に、

薄い金色の模様が広がっている。


壁には、

黒い霧の筋が走っている。


そして天井は、

微かに揺れ、

“白い裂け目”が浮かんでいた。


「……なにこれ……」

 ソーマが息を飲む。


セシリアは震える声で呟いた。


「揺れを……“魔法陣”にしてるのよ……

 この規模……ありえない……

 人間じゃ絶対できない……」


「人間じゃないからできてるんだな」

 ガルムが斧を握りしめる。


イサナは目を細めた。


「呼び出し陣……じゃない。

 これは……“選別陣せんべつじん”」


「選別!?

 何を選ぶんだよ!!」

 ソーマが叫ぶ。


イサナはゆっくりソーマを見た。


「――あなたの“揺れ”。

 どちらの世界へ属するか」


ソーマの肺が止まったように感じた。


(どちらの世界……?

 そんな……選択……)


その時――


――コツン。


軽い足音が、

広間の奥から響いた。


ソーマの心臓が跳ねる。


(……来た……)


薄暗い奥から、

青年が姿を現した。


今日は微笑んでいなかった。


だが怒ってもいない。


ただ静かで、

まるで祈りの場に立つ聖職者のような表情。


「ようこそ、ソーマくん」


ソーマは一歩下がる。


リュミ、イサナ、ガルム、セシリアが前に出る。


青年は、

ひどく自然な声で続けた。


「君を迎えるための準備は、

 もうすぐ整うよ」


ソーマは必死に声を振り絞った。


「……帰らないって言っただろ……」


「うん。

 聞いたよ」

 青年は頷く。


「でも、

 “気持ち”と“揺れの属する場所”は別だから」


その言葉に、

イサナが杖を握りしめる。


「やめろ。

 ソーマを揺らすな」


「揺れているのは、

 君のほうだよ、イサナ」

 青年は優しい声で返した。


「君は……境界の子。

 どちらの世界にも属せない揺れ」


イサナの喉が詰まる。


(やめて……

 その言葉……)


ソーマはたまらず叫ぶ。


「やめろ!!!」


青年の瞳が、

ほんの少しだけ揺れた。


「ソーマくん。

 君がどちらに“属する”のか――

 僕はただ、それを確かめたいだけなんだ」


ソーマは涙が出そうになる。


「確かめなくていい!!!

 俺は“この世界”で生きたい!!

 それが答えだ!!」


青年は静かに首を振る。


「違うよ。

 “世界が選ぶ”んだ。

 人じゃない」


その瞬間。


地下広間の魔法陣が、

金と黒の光で“点灯”した。


足元が揺れる。


空気が引き裂かれる。


天井の裂け目が広がる。


リュミが叫ぶ。


「ソーマさん!!

 なんか来ます!!」


イサナが杖を構える。


「この揺れ……

 外側の心臓しんぞうが開く……!」


青年の声が、

静かに重なる。


「さあ、ソーマくん。

 世界が――君を迎える」

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