表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/207

黒い“偽リュミ”、禁書室での初戦

「離れて!! それ、“人じゃない”!!」


 イサナの叫びが

 禁書閲覧室の空気を切り裂いた。


 扉から入ってきた“リュミそっくりの影”は、

 薄い金髪を揺らしながら――

 しかし、その輪郭は黒い霧に濡れていた。


 笑っている。

 だが、その笑みは“口元だけ”で、

 目は金色の光点のまま動かない。


《……ミツケタ……ヨホウモチ……》


「こいつ……完全に俺狙いだよね!?」

 ソーマが青ざめる。


「はい!! 全力で狙われてます!!」

 本物リュミが涙目で叫んだ。


「答え合わせやめて! 認めないで!!」


影リュミはぬるりと歩み出す。


 その歩き方は、まさに

 リュミが歩くときの“模倣もほう”。


 だが――

 揺れがない。


(リュミの“感情”も“足跡”もない……

 ただの表面だけ……)


 ソーマは背筋が冷たくなるのを感じた。


(これが、

 昨日イサナが言ってた“人に近い揺れ”の正体……?)


影リュミが右手を上げた瞬間――


――ゴウッ!!


 禁書室の空気が逆流した。


「全員伏せろ!!」

 ガルムが叫ぶ。


 次の瞬間――

 影の手から、

 黒い“風刃ふうじん”のようなものが飛ぶ。


「くっ……!!」

 ソーマはとっさに床へ身を投げた。


 風刃は本棚を切り裂き、

 積まれていた古い文献が宙を舞った。


「本!! 本めっちゃ破壊したよコイツ!!」

 セシリアが本気で怒る。


「禁書室で“禁書破壊”はまずいって!!

 国に怒られる!!」


「怒られる程度で済むかしらね……」


 セシリアの目が静かに燃える。


(やばい、セシリアさんの“研究者モード”入った……!!)


「イサナ、下がれ!

 そいつリュミの形してるけど、

 動きはぜんぜん違う――!」

 ソーマが叫ぶ。


「分かってる」


 イサナは影リュミへ向かって走る。


「《残影歩法ざんえいほほう》!」


 影の“隙間”を踏むように――

 一瞬で二歩、三歩と跳ぶ。


 床の上の裂け目を踏まないよう、

 軽やかに、正確に。


“本物のリュミ”は驚きで声を上げた。


「イサナさん、速い……!!」


「今驚くのそこ!?!?」

 ソーマがツッコむが、

 イサナはすでに影リュミの懐へ滑り込んでいた。


「ッ!」


 イサナの杖の一撃が、

 影リュミの胸に叩きつけられる。


――パキィッ!


 影の体が一瞬だけ割れるように揺れた。


「効いてる!!?」

 ガルムが前のめりになる。


「違う……」

 イサナは表情を固くしたまま言う。


「“割れてない”。

 ただ形が……“揺れただけ”」


「やだよ!!

 意味わかんない世界観だよ!!」

 ソーマがうずくまる。


影リュミは、

イサナへ向けて手を伸ばした。


《……カギ……ヨホウモチ……》


「鍵じゃないって何度言わせ――」


 ソーマが反論しようとした瞬間、

 影リュミの指先が“歪む”。


 形が、まるで

 “鍵穴を探る針”のように細く伸びた。


「うわぁぁぁぁ嫌な形状に変わった!!!」

 ソーマが叫ぶ。


「ソーマ! そっち行くぞ!!」

 ガルムが駆け寄るが――


影リュミの指は、

ソーマの胸の“気圧図の痣”へ向かって伸びていた。


(そこ……!!

 絶対触れちゃだめなとこ!!!)


「――させない!」


 リュミが飛び出した。


 彼女は両手を広げ、

 光の揺れを胸から放つ。


「《風避けの結界かぜよけのけっかい》!!」


――パァッ!!


 透明な風の壁が、

 ソーマと影の間に立ちはだかった。


 影リュミの指は結界に触れると――

 “キィィィ……”と金属のような音を立て、

 霧の形に戻った。


《……キョウド……フタツ……》


「二つ……?」

 ソーマが聞き返す。


 影は、リュミとイサナを

 ゆっくりと見比べた。


《……ハンサ……ガ……ワレル……

 ミチ……ミエナイ……》


「何言ってるのか全然分かんねぇ!!!」

 ガルムが叫ぶ。


「でも……」

 セシリアが息を飲む。


「“揺れの半分が割れる”とか……

 “道が見えない”とか……

 ソーマとイサナとリュミが揃った時特有の現象よ」


「それって……どういう意味?」

 ソーマが震える。


「三人が揃うと――

 “未来が揺れすぎて読めない”って意味」


「やめろよ!!!

 それ完全にメタ発言だよ!!」


 影リュミの体がさらに“歪む”。


 まるで、

 この場にいる全員の姿を

 ひとつの影に混ぜようとしているかのよう。


「これ、まずい……!!」

 リュミが叫ぶ。


「影が形を変え始めてます!!

 このままだと――」


「完全体になる!!」

 セシリアが顔色を変えた。


「境界喰い(さかいぐい)の腕じゃなく、

 “人型の外側”になる……!!」


「外側の人型って何!!?」

 ソーマが叫ぶ。


「説明する余裕はないわ!!

 止めなきゃ全員引きずられる!!」


 影リュミの体がゆっくりと広がる。


 だが――

 イサナが前に出る。


「大丈夫」

 イサナの瞳が静かに燃える。


「“影の模倣もほう”には、

 本物の揺れは越えられない」


「イサナさん……?」

 リュミが目を見開く。


「リュミ。

 ソーマ守って」


「はい!!」


「ガルム。

 斬って」


「任せろ!!」


「セシリア。

 裂け目閉じて」


「わ、分かった……!」


「私は――」


 イサナは影リュミと“同じ姿勢”を取った。


「“影を止める揺れ”になる」


影リュミとイサナが

同じ動きで踏み込んだ瞬間――


――世界が、一瞬だけ沈黙した。


 足音も、風も、本の揺れも止まる。


《……ナゼ……マドウナイ……?》


 影が驚いたように揺れた。


「あなたは“形”だけ。

 私は“揺れ”を持ってる」


 イサナが囁く。


「その差で――負けない」


「ガルム!! 今!!」

 セシリアが叫ぶ。


「おう!!」


 ガルムの斧が、

 影の背中を正面から叩き割った。


――ドバンッ!!


 影リュミの体が黒い霧に弾け飛ぶ。


 霧は床に散り、

 裂け目に吸い込まれていく。


 空気がゆっくり落ち着き始めた。


「……終わった……のか……?」

 ソーマが壁に手をついて息を吐く。


「たぶん……

 まだ“第一波”です」

 セシリアが顔をしかめた。


「なんで第一波とかあるの……?」

 ソーマが泣きそうな顔。


「影は“本体じゃない”。

 別の場所で、“本物の揺れ”が動いてる」


リュミがソーマの手を取る。


「でも、大丈夫です。

 いまは……守れました」


「……ありがとう」

 ソーマの声はかすれていた。


イサナは、床の裂け目をじっと見ていた。


(この揺れ……

 昨日の“金髪の青年”と、同じ匂い……)


(あいつ……

 本気でソーマを“向こう側”へ連れて行く気だ……)


胸がじんと痛む。


(……絶対に、渡さない)


イサナは杖を握りしめた。


その頃、

図書院の外の屋根の上。


 金髪の青年は、

 静かに空を見上げていた。


「もう少し、だな」


 彼は笑った。


「ソーマくん。

 君の“揺れ”は、

 僕を呼んでるよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ