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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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敵か味方か、金髪の青年

 翌朝。


 王都の空は淡く晴れ、

 昨夜の疲労感が嘘のように柔らかい光が差していた。


 が――

 部屋の空気は重かった。


「……ソーマさん、寝れました?」

 リュミが心配そうに顔を覗き込む。


「多少ね……」

 ソーマは頭をかく。


「イサナが屋根で寝てる音が聞こえてきて……

 何回か窓開けて見に行った」


「何やってるんですか!」

 リュミが呆れたように笑う。


「いやだって落ちるかと思って……」


「イサナさん落ちないですよ」

「そうなんだけどさ!」

「落ちるのはソーマさんだけです」

「なんで俺だけなの!?」


 そこへ、

 ガルムが食パンをくわえながら入ってきた。


「おーい、朝飯の時間だぞ!!

 パン争奪戦開始だ!!」


「お前も落ち着いて食え!!!」

 ソーマがツッコむ。


「宿舎の朝パンは戦いだからな」

 ガルムは真面目に言う。


「なんだよその伝統……」


「まあまあ、朝ごはん行きましょう」

 リュミが笑って歩き出す。


 朝食広間はいつもよりざわついていた。


 職員たちの会話には

 昨夜の“王都揺れ”の噂が混ざっている。


「中心部で“呼び声”みたいなのがあったらしいぞ」

「境界揺れの残滓が……?」

「まさかまた異常が……」


 ソーマが肩をすくめる。


「噂のスピード、早すぎない……?」


「昨日の峠の件、もう市街に出てるからね……」

 リュミが小声で答える。


「うわー……

 有名になりたいわけじゃないのに……」


「大丈夫ですよ。

 ソーマさんは“みんなを救った人”です」

 リュミの微笑みに、ソーマは耳を赤くした。


「そういう言い方やめろ、照れる……」


「事実ですから」

 リュミはほんわか笑った。


 パンを3つ抱えて帰ってきたガルムが座る。


「よっしゃ!!

 争奪戦勝利!!」


「買えよ」

 ソーマが冷静に言った。


「この宿舎では“早い者勝ち”が文化なんだよ」

「文化を理由にするやつ強いな!?」


 そこへ、セシリアが現れた。


 寝不足の目をこすりつつ、

 手には分厚い資料。


「ソーマ、リュミ、ガルム。

 今日の予定、確認しておきましょう」


「セシリアさん……

 パンは?」

 リュミが尋ねる。


「……負けた」

「負けたんだ!?」

「競争率……高いな……」


 セシリアが資料を広げる。


「今日から“王都中心部の揺れ調査”を行うわ。

 セイルさんから正式に依頼が下りた」


「昨日イサナが言ってたやつか……」


「そう。

 問題は“揺れの持ち主が人間に近い”って点」


 ソーマの安眠が一瞬で飛ぶ。


「……え、それってつまり……

 魔物じゃなくて……?」


「可能性としては、

 “人間に混ざっている異質”よ」


「異質……」


 ソーマの喉がごくりと鳴る。


(昨日イサナが言ってた“人間に近い影の匂い”……

 あれが本当だとしたら――)


「そいつはどこへ向かったんですか?」

 ガルムが問う。


「まだ詳細は不明。

 ただ、中央通りを北方面へ歩いて行ったという目撃情報が数件」


「中央通りの北って……」

 ソーマは自然と嫌な予感がした。


「王都の……

 施設多くない?」


「そうね」

 セシリアが指を折る。


「神殿。

 王立図書院。

 王家直轄の魔導学院。

 そして……」


「王城か……」

 ソーマが息を詰める。


(やめてほしい……

 “王家絡み”とか……

 絶対ろくなことにならない……!)


「その揺れの持ち主、

 王都に潜む“境界要因”の可能性があるわ」


「境界要因……?」

 リュミが首を傾げる。


「簡単に言うと――

 “世界外の揺れを持ち込んでる存在”ってこと」


「おいおい……

 そんなやつ王都にいたらヤバいだろ……」

 ガルムが眉をしかめる。


「だから、見つけなきゃいけないのよ」


 そこへ――


コン。


 扉が静かに叩かれた。


「……イサナか?」


ソーマが開けると、

やはりイサナが立っていた。


「……おはよう」


「おはようじゃなくて!

 屋根から落ちなかった!?!?」


「落ちない」

「結論が速いんだよ!!」


イサナは部屋に入り、

静かに座る。


そして――

昨日よりも警戒心の宿る瞳でソーマを見た。


「今日の調査、

 私も行く」


「もちろんだよ」

 ソーマは頷いたが――


イサナの表情に、

いつも以上の“硬さ”がある。


(……後ろめたい何かがある顔だ……)


ソーマは気づいていた。


(何か隠してる……

 でも……今日は聞かない方がいい)


 全員が準備を整えたところで、

 セシリアが立ち上がる。


「今日の第一目的は“異常揺れの追跡”よ。

 でも、その前に――」


「前に?」

 ソーマが首をかしげる。


「あなたたち三人……

 揺れに過敏な子が一人……」


「?」

 ソーマ、ガルム、リュミは首をかしげる。


セシリアはゆっくり告げた。


「――神殿で“揺れの浄化じょうか”を受けておくべきだわ」


「じょう……か……?」

 ソーマの顔がひきつる。


「今、ソーマには“境界の揺れ”が残ってるのよ。

 そのまま調査に出ると引っ張られる危険がある」


「あっ……!!」


(昨日……意識が薄れたやつ……)


「というわけで、

 まずは大聖堂へ行くわ」


 セシリアが言った瞬間――


イサナがぴたりと動きを止める。


「……大聖堂」


 その声音には、

 普段の淡々さとは違う

 露骨な拒絶 があった。


(……イサナ?)


ソーマが不安げに見ると、

イサナは目線を逸らした。


「……行きたくない」


「イサナ?」

 リュミが心配そうに寄る。


「どうしたの?

 怖い場所があるなら――」


「怖くない」

 イサナは即答した。


けれど声には――

はっきり “痛み” が混じっていた。


「……行きたくないだけ」


セシリアが静かに眉を寄せる。


「イサナ、無理強いはしないわ。

 あなたは別行動でもいい」


イサナは少しだけ迷い……

そして短く頷いた。


「……別で、揺れを探す」


(……大聖堂……

 イサナにとって、何なんだ……?)


ソーマの胸に、

新たな疑問と不安が湧いた。


こうして――


ソーマ・リュミ・ガルム・セシリア → 大聖堂(浄化)へ

イサナ → 単独で王都の揺れ追跡


という二手に分かれて、

王都調査が始まる。


そしてその裏で――

昨日の金髪の青年は、

王都のどこかで静かに呟いていた。


「さあ、ソーマくん。

 次は“君の番”だよ」

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