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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第二章

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王都帰還と天象庁の騒動

 王都レウェンの東門が見えてきた頃。

 ソーマたちはすでに、

 峠での疲労と眠気で足取りがぐねぐねしていた。


「ようやく帰ってきたぜ……!!

 文明の匂いだ……!!」

 ガルムが両腕を広げる。


「その言い方だと、今まで未開の地みたいだよ」

 ソーマがぼそっと言う。


「未開だろ!?

 空落ちるわ影出るわ、文明じゃねぇよ!!」

「……たしかに今日は未開だったわ」

 セシリアが珍しく同意してため息をついた。


「ごめん、イサナ。

 こういう会話、慣れてる?」

 ソーマが気を遣って尋ねる。


「慣れてない」

 イサナが短く言った。


「慣れてないんだ!?

 じゃあ今どういう気持ち!?!」


「うるさい」


「そこだけ安定して言うのやめて!?」


 王都の衛兵がソーマたちの姿を認めると、

 目を丸くした。


「お、お前たち……!

 天象庁てんしょうちょうから捜索隊が出ていたぞ!!

 戻ってきたのか!!」


「え、捜索隊?」

 ソーマが固まる。


「おう。

 “空の底が沈んだ”とかいう報告が入ったからな。

 てっきり全滅したと思って――」


「ちょっと待て!?

 そんな最悪の前提で動いてたの!?」


「峠で空が裂けてたって噂もあってな……」


「いや裂けてたけど!!

 今さら否定できないけど!!」


 衛兵たちが口々に「生きてたか!」「すげぇな……」とざわつく。


「……ソーマさん、

 わたしたち、思ったより大事件だったみたいです……」

 リュミは半泣き。


「俺も怖いよ……

 今から“大人たちへの説明”が……」

 ソーマが胃を押さえる。


 天象庁へ向かう途中、

 王都の街並みはいつものようににぎわっていた。


 市場の呼び声。

 露店の香ばしい匂い。

 空を飛ぶ雲船くもぶねの影。


「うおおお……!!

 俺、文明の力に涙出てきた……!!」

 ガルムが感動する。


「ガルムさん……

 あなた文明への感動多くないですか?」

 リュミが笑う。


「当たり前だ!!

 文明は最高だ!!

 俺はもう二度と空が沈む場所に行きたくねぇ!!」


「じゃあ仕事辞める?」

 セシリアが真顔で言った。


「辞めねぇよ!!

 飯が食えなくなる!!」


「現金な……」

 ソーマが呟く。


 天象庁の玄関へ着くと――

 すでに中は騒然としていた。


「戻ったぞー!!」

 ガルムが元気よく扉を押し開ける。


その瞬間、

中にいた職員たちの視線が一斉にソーマへ集中した。


――ざわっ……


「あれがソーマか……」

「峠の件を押し返したって噂の……」

「予報持ち……本物……?」

「生きて帰ってきてる……すご……」


「え!?

 なに!?

 みんなの視線怖い!!!」

 ソーマが後ずさる。


「ソーマ。

 人気出てる」

 イサナが無感情に言った。


「無感情で言わないで!?

 プレッシャー倍になるから!!」


「おかえりなさい。

 本当に……無事でよかった……」


 通路の奥から歩いてきたのは――

 天象庁の名物局長、セイルだった。


 白髪を後ろに流し、

 眼鏡の奥の眼差しは冷静だが、

 どこか安堵も感じられる。


「セイルさん……!」


「今回の件、

 王城からも緊急照会が来ている。

 あなたたちから詳細を聞かねばならないが……」


 セイルはソーマをじっと見つめた。


「その前に――

 本当に、よくやってくれた」


「うっ……」

 ソーマの目が潤む。


「認められた……!!

 なんか……褒められた……!!」


「ソーマさん!!

 よかったです!!」

 リュミも涙目。


「泣くな。

 オッサンの前で泣くな」

 ガルムが肩を叩く。


「やかましい!!

 俺だって頑張ったんだよ!!」


 セイルはふと横の少女に目を向ける。


「……そちらは?」


「イサナ・ヴェルミリオ」

 イサナは短く名乗る。


「今回の“境界揺れ”に強く反応していた子で……

 一緒に戦ってくれました」

 ソーマが説明する。


「今後も、しばらくは共に行動するつもり」


「ほう……《残影歩法ざんえいほほう》の使い手、か」

 セイルの眉がわずかに上がる。


「この天象庁としても、ぜひ力を借りたい。

 ソーマたちの行動班に加わってもらえないだろうか?」


「行動班……!?」

 ソーマが叫ぶ。


「また班が拡張するの!?

 俺、そんな大所帯のリーダーじゃないよ!?」


「リーダーとは言ってない」

 セシリアが淡々と刺す。


「聞こえてた!?」


 セイルはイサナを見つめたまま言った。


「どうだね、イサナくん。

 天象庁に籍を置く気は?」


 イサナはほんの少しだけ考えて――


「嫌」


「秒で拒否!?」

 ソーマが叫ぶ。


「単独行動がいい」

 イサナははっきり言った。


「でも、ソーマの近くにはいる」


「結局いるの!?

 どういう距離感!?!?」


「監視」

「いや監視て言うなってば!!!」


 そのやりとりを見て、

 セイルは小さく笑った。


「……まあ、

 形にこだわる必要はないだろう。

 必要な時、必要な場所で協力してくれればいい」


「うん」

 イサナが頷く。


「ただし」

 セイルは真顔に戻った。


「ひとつだけ注意しておきたい。

 今回の“境界揺れ”……

 王都中心部にも同質の反応が一瞬出た」


「やっぱり……!」

 ソーマの顔が強張る。


「王都のどこに?」

 セシリアが問い詰める。


「まだ特定できていない。

 ただ――

 揺れの発生源は“人”の気配に近かった」


「“人”……?」

 リュミが息をのむ。


「つまり、

 “王都の誰か”が境界を揺らしている可能性がある」


 天象庁の空気が一瞬で張り詰める。


「次の任務は――

 “王都内部の揺れの探索”だ」


 セイルの眼差しが鋭く光った。


「ソーマ。

 君の予報が、また必要になる」

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