表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/207

嵐のまえ――新たな任務へ

 翌朝。

 ソーマは早く目を覚ました。

 まだ薄暗い部屋の窓から、王都の空が見える。


 青ではなく――

 かすかに紫がかった灰色を帯びていた。


(……変だ)


 昨日までの谷と比べると、

 明らかに“空の気配”がざわついている。


――ザ……ザザ……。


 耳奥で揺れが走る。


(予報……?)


 だが、アナウンスは流れない。


(……ノイズだけ……

 こんなの……初めてだ)


 胸騒ぎを抱えたまま、

 ソーマは制服を整え部屋を出た。


 集合室に入ると、

 ガルムが大きな欠伸をしていた。


「おはようソーマ……

 今日も生きてるな!!」


「毎朝それ言うの?」

「おう!縁起がいいだろ!」


「いやだよそんな縁起!!」


 隣ではセシリアが既に書類の山と戦っている。


「昨日の件、庁内だけで処理するって言ったけど……

 処理量多すぎでしょ!!

 なんで私が徹夜明けで書類やってんのよ!!」


「セシリア……

 顔に“寝てない”って書いてる……」

 ソーマが苦笑する。


「書いてないわよ!!

 書かれてたら訴えるわよ!!」


「怖っ!!」


 そんな中――

 リュミがそっと部屋に入ってきた。


 胸元に白い布を抱いている。


「リュミ、それ……」


「影の子……

 少しだけ“形”がはっきりしてきたんです」


 布をそっと広げると――

 小さな影が丸くなって眠っていた。


 昨日よりも輪郭が明瞭で、

 揺れも穏やかだ。


「……安定してるな」

 ガルムが目を細める。


「はい。

 少しずつ……“生きている形”に近づいています」


「よかった……」

 ソーマは胸をなでおろす。


(あのとき助けてよかった……

 本当に……)


 重い足音が響いた。


「揃っているな」


 レオン隊長が姿を見せると、

 全員が姿勢を正す。


「昨日の件について、上層部への報告は完了した。

 影の子は天象庁の“守護対象A”として管理される」


「守護対象A……?」

 ソーマが聞き返す。


「庁外、特に“神殿”から守るべき対象だ」


 セシリアが眉をひそめる。


「……やっぱり神殿はこの件に首を突っ込んできますか」


「影を“神の残滓ざんし”と解釈される危険がある。

 奪われれば、間違いなく宗教利用される」


 リュミが少し震える。


「わたし……気を付けます」


「リュミ。

 お前だけの責任ではない。

 守るのは――我々全員だ」


 隊長の言葉に、

 チーム全員がうなずく。


 隊長は机に一枚の書類を置く。


「本題だ。

 今日からお前たちには――

 “魔力嵐まりょくあらしの前兆調査任務”に就いてもらう」


「ま、魔力嵐……!」


 ソーマの背筋が凍る。


「この王都の北西。

 残滓峠ざんしとうげの気配が急速に乱れ始めた。

 空気の揺れが大規模すぎる」


「つまり……

 大きな“嵐”が来る可能性があるってことですね」

 セシリアが引き締まった声で言う。


「その通りだ。

 王家も神殿も動き出す前に、

 我々が先に“実態”を掴む必要がある」


 隊長はソーマの正面に立つ。


「ソーマ。

 お前の《残響予報エコー・フォーキャスト》は

 この任務の中心になる。

 ……頼りにしているぞ」


「……っ!!」


「ま、まあ頑張れよソーマ」

 ガルムがにやりと肩を叩く。


「今日のソーマは“縁起がいい”からな!!」


「いやだからそれ言うのやめろって!!」


「ソーマさん」

 リュミがそっと近づく。


「わたしも同調どうちょうで支えます。

 一緒に、未来を見ましょう」


「……うん」


 出発準備中、影の子が僅かに揺れた。


「……あ」

 リュミが布を見つめる。


「どうした?」

 ソーマが覗き込む。


「いま……“声がした”気がします」


 影の子の中心に、

 淡い光が集まっていた。


 昨日より明確な揺れ。


「これ……“コア”が生まれてるわ」

 セシリアが目を見開く。


「生き物としての中心。

 形を保つための“心臓”みたいなものよ」


 リュミが小さく微笑む。


「……よかった」


「この子……

 きっと、ちゃんと生きられるよ」

 ソーマが言う。


「はい。

 ソーマさんが助けてくれましたから」


「いや、俺だけじゃ……」

「じゃあ何?ソーマは自分の手柄を譲るタイプ?」

 セシリアがくいっと眉を上げる。


「なんで喧嘩売られてんの俺!!」


「今日も元気だな、お前ら!!

 縁起がいい!!」

 ガルムが笑う。


「縁起って言うなぁぁ!!」


 レオン隊長が出口で振り返る。


「目的地は《残滓峠ざんしとうげ》だ。

 ――魔力嵐が本格化する前に、

 原因を掴むぞ」


「了解!!」


 チームは一斉に駆け出す。


 影の子は庁の保護部隊へ預けられ、

 静かに眠っている。


 王都を離れた直後――


――ザ……ザザッ!!


 ソーマの耳奥が激しく揺れた。


――『低気圧が急速に発達……

   広域警戒が必要です……

   強い風と雷……

   “局地的な落下現象らっかげんしょう”に注意……』


「落下現象……!?

 聞いたことない……!!」


――『……そして……

   空の底が開きます』


「空の……底……?」


 意味は分からない。

 だが胸の奥が、本能的に警鐘を鳴らす。


(これは……

 ただの嵐じゃない……!!)


 ソーマは空を見上げた。


 王都の西――

 残滓峠の空が、ぐにゃりと沈んでいた。


(……始まる……!!)


「行こう……!

 俺たちの“次の未来”が待ってる!」


 風を切り、

 四人は峠へ向かった。


――――1章 完――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ