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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第一章

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第三波・原初影との遭遇

 空の裂け目が、

 まるで“裏返る”ようにねじれた。


――メリ……メリメリ……。


 不吉な音を立てながら、

 黒い裂けが王都レウェンの空一面に広がっていく。


 そして。


 その奥から押し出されてきた“何か”は――

 もはや“魔物”という分類では括れない存在だった。


 ガルムが斧を握り直し、低く唸る。


「……なんだよ、あれ……。

 人……か? いや……違ぇ……」


「違います……」

 リュミエールが蒼白な顔で首を振る。


「“感情”がない……気配もない……

 でも……空の向こうから“呼ばれてる”……

 そういう……声だけがする……!」


「声?」

 ソーマは耳を押さえた。


 たしかに揺れは聞こえる。

 けれど――


(言葉じゃない。

 でも、“意図”がある……!!)


「あの揺れ……森で聞いた“影の尾”の揺れと同じだ。

 全部……あれに繋がってたんだ……!」


「繋がってたって……!?

 何と何が繋がってんだよ!!」

 ガルムが叫ぶ。


「“異世界の残響ざんきょう”だよ!!」

 ソーマが裂け目を指差す。


「これ……異世界の“死にかけた現象”そのものが落ちてきてるんだ!!」


「現象!?

 生き物じゃなくて“現象”!?」

 セシリアが青ざめた。


「そうだよ!!

 形は魔物っぽいけど、中身は空のノイズと霊脈の歪み!!

 この世界の生物じゃない!!

 “別世界の亡霊ぼうれいみたいな災害”だ!!」


「分かるようで全然分かんねぇ!!」

 ガルムが叫ぶ。


「ソーマさんがそう言うなら……そうなんだと思います……」

 リュミが必死に支えるように言う。


(……でも、本当にヤバいのはここからだ)


 ソーマの耳に、

 “揺れの質”が変わった音が走る。


 さっきまでの黒影とは違う。


 もっと、深い。

 もっと、重い。

 もっと、痛い。


(……これ……“悲鳴”じゃない。

 “怒り”だ……!!)


「来る!!

 上から落ちてくるのは――“原初影げんしょえい”だ!!」


「原初影!?」

「名前だけ聞いて強そうなんですけど!!?」

 ガルムとリュミが同時に叫ぶ。


「ソーマ、説明!!」

 セシリアが怒鳴る。


「説明できるか!!

 俺も聞いたことないんだよ!!

 名前は“揺れ”が教えてきただけだよ!!」


「揺れが勝手に命名したの!?」

「知らないよ!!俺の耳に聞こえてきたんだから!!」


 そんな絶叫の中――

 “影”がついに姿を現した。


 落ちてきたのは、

 鳥のようでも、獣のようでも、

 人型のようでもある。


 輪郭が常に“ブレている”。


 顔らしき部分には――

 前世で見たことのある、謎のマークのような模様 が浮かんでいた。


「……っ……これ……」


 ソーマは息を呑む。


(これ……地球の……“警告マーク”に似てる……!?

 どうして……どうして異世界に……!?)


 原初影が、ゆっくりと腕を持ち上げた。


――ギ………ギギギ……。


 不快な音が周囲の空気を震わせ、

 リュミが耳を押さえる。


「だめ……っ!!

 これ……精神を削る音です!!」


「精神!? 音で精神削るな!!」

 ソーマが叫ぶ。


「くそ……なんだよこの“気配”……!!」

 ガルムが斧を構える。


 しかしセシリアが急に叫んだ。


「ガルム!!近づくな!!

 触れたら“こっちの魔力が吸われる”!!」


「えっ!?」

「はぁ!?」

「吸う!?」


 三人が一斉に叫ぶ。


 原初影は腕の先から黒い霧を垂らし、

 霧が石畳に触れた瞬間――


――ジュゥウウ……


 石が“影色”に染まっていく。


 まるで“影が感染”しているようだった。


「なにこれ!!?」

 ソーマが悲鳴を上げる。


「“影相乗えいそうじょう”よ!!

 別世界の残滓ざんしが、生物や物質に“影属性”を強制上書きする現象!!

 教科書でしか見たことないんだけど!?!?」

 セシリアが完全に動揺している。


「生物にやられたら……どうなるんですか……?」

 リュミエールが震える。


「――“影化”。

 存在が薄れて、“世界から消える”」

 セシリアが絞り出すように言った。


「消える!?

 消えるのはダメ!!」

 ソーマが即答した。


「そりゃダメだろ!!」

「一ミリも良くないです!!」


 そんな中――

 原初影が“こちらへ向き直った”。


 白い虚無の目だけが、

 三人を“見ている”。


(……目が……こっちを……)


「来るぞ!!」

 ガルムが叫ぶ。


「正面はダメ!!近づいたら影化えいか!!」

 セシリアが警告。


「リュミ!!風で距離を制御して!!」


「はい!!

 《隔絶風壁かくぜつふうへき》――!」


――バァッ!!


 強烈な風壁が原初影と地上を隔てる。

 同時に黒い霧の侵食が止まった。


「押し返してる……!?リュミすげぇ!!」


「いえ……!

 でもこの風壁……長くは保ちません……!!」

 リュミの顔が真っ青だ。


 原初影が両腕を広げた。


――ギィィイイイィィ!!


 空気を引き裂くような音。


(……だめだ……これは“風壁ごと消す”気だ!!)


「リュミ!!離れろ!!」

 ソーマが叫ぶ。


「っ!はい!!」


 リュミが飛び退き、

 風壁が音を立てて崩れる。


――バンッ!!


「来る!!

 みんな散れ!!」

 ガルムが叫ぶ。


 原初影は空を切り裂くように腕を振り下ろし――


 黒い衝撃波が地上へ走った。


――ズシャァァァッ!!!


 三人は飛び散って避けるが、

 地面が“影色”に染まる。


「うわぁあ!?

 地面が……消えてる!?消えてるよこれ!!」

 ソーマが半泣きで叫ぶ。


「落ち着け!!地面は消えてねぇ!!

 染まってるだけだ!!」


「染まってるのも嫌だ!!」


「俺も嫌だ!!」


 ガルムとソーマが同じタイミングで叫ぶ。


 セシリアは魔導パネルを必死に操作する。


「……ダメ……解析が追いつかない……。

 霊脈のデータが“影に上書き”されてる……!!」


「そんな……じゃあ対処法が……」

 リュミが震える。


「ないわけじゃない!!

 “核”さえ壊せば!!」


「核の場所は!?」

 ガルムが叫ぶ。


 ソーマは揺れを全身で受け止め、

 耳奥の波形を必死に追った。


 ザザザザザ――ッ!!


(痛い……!耳が破れそうだ……!

 でも……分かる……!

 この“濁り方”は……!)


「――右の腕!!

 右腕の“ひじの内側”!!

 そこに一点だけ、揺れが集中してる!!」


「ひじの内側!?!?」

「そこ!?なんでそこ!!?」


「俺に聞かないで!!揺れがそう言ってるんだよ!!」


 原初影が、再び白い目をこちらへ向ける。


――ギ……ギギィ……


「来る!!ガルムさん!!」

 リュミが叫ぶ。


「任せろ!!」

 ガルムが強化きょうかを発動させる。


 血が沸騰するような魔力。

 空気が震える。


「リュミ!!足場作れ!!」

「はい!!」


 リュミエールの風が、

 ガルムの足元に“踏み台の風”を作る。


――シュウッ!


「行けガル!!」


「どりゃああああああ!!」


 ガルムが“風台”を踏み、

 まるで空を駆け上がるように原初影へ飛び込む。


 セシリアが雷を纏わせる。


「斧に雷素らいそ付与ふよする!!

 ――《雷撃付加らいげきふか》!!」


「よっしゃああ!!」


 ガルムの斧が、

 右腕のひじの内側へ迫る。


 原初影が気づき、腕を引くが――


「させねぇよ!!」

 ソーマが揺れのタイミングを叫ぶ。


「今!!揺れが止まった瞬間!!」


「ッラァァァ!!」


――ズガァァァァァン!!!


 斧がひじの内側へ突き立ち、

 雷光が爆ぜた。


――ギャアアアアアアアアアア!!


 原初影の絶叫が、

 空気を震わせ、裂け目が揺れる。


 黒い霧が四散し、

 巨大な影の身体が崩れ落ちる――


 その瞬間。


 ソーマの耳奥に、

 “ひとつだけ聞こえる声”があった。


 かすれて、破れた、小さな声。


『……たす……け……』


「……え?」


 原初影が、

 まるで“何かを掴むように”手を伸ばした瞬間――


 影は完全に霧散した。


「……今……声が……」


 ソーマは立ち尽くした。


「ソーマさん?」

 リュミが心配そうに近づく。


「いま……“助けて”って……」


「助けて?」

 ガルムが眉をひそめる。


「影が“助けて”って言うのか?」

 セシリアも戸惑う。


 ソーマは言葉を反芻はんすうする。


(あれは……攻撃じゃなかった。

 “落ちてきた”んじゃない。

 ――“押し出されてきた”んだ……)


 空の裂け目はようやく、

 ゆっくりと閉じ始めていた。


 黒い残滓ざんしが風に溶け、

 夜空が少しずつ戻ってくる。


「終わった……のか?」

 ガルムが周囲を見渡す。


「第一章の戦いとしては、ね」

 セシリアがため息をついた。


 だが。


 ソーマの耳奥で、

 最後の揺れが微かに響いた。


 ザ……。


(……まだ終わってない。

 だって――)


『……おわ……ら……な……い……』


 裂け目の奥に残る“誰かの声”が、

 確かにそう囁いた。



◆ ステータス紹介(第1章21話時点)


――――――――――――


■ ソーマ(相馬颯真 / 予報持ち)

年齢:20 性別:男

役割:戦術指揮、予兆解析、危険察知


【基本能力】

・身体能力:★★★☆☆(平均よりやや上)

・持久力:★★★★☆(長距離行動に強い)

・戦闘技術:★★★☆☆(短剣・投擲・地形利用)

・精神耐性:★★★★☆(揺れに耐える訓練が自然と積み重なっている)


【固有指標】

残響予報エコー・フォーキャスト》包容度:S−

→ 前世の天気予報と異世界の運命揺らぎの“同期率”。


揺れ解像度:A(→戦闘で急成長中)

→ 影の位置・核の揺れ・危険方向が把握できる精度。


耐揺れ耐性:B+

→ これが低いと精神汚染が起きるが、ソーマは「仕事柄強い」。


【特徴】

・魔術適性は低い(E)

・その代わり揺れ読み速度・判断力はパーティ最高

・「味方補正」効果が強い(指示で仲間の火力が跳ね上がる)


【弱点】

・揺れ受信時の頭痛・耳鳴り

・予報の“誤読”で逆効果を招く

・精神を削る残滓ざんしとは相性が悪い

・近接戦闘は無理をすればすぐ倒れる


――――――――――――


■ リュミエール(白光の巫女 / 天象同調)

年齢:18 性別:女

役割:感知・支援・風結界


【基本能力】

・身体能力:★★☆☆☆(一般より少し上)

・魔力制御:★★★★★(王国内でもトップクラス)

・精神感応:SS(生得的)


【固有指標】

《天象同調》精度:S+(→ソーマとの組み合わせでSS級)

→ 魔力・気流・残滓の揺れを“身体で測る”。


空気同化率:A

→ 周囲と調和しすぎて過負荷を起こすことがある。


【特徴】

・風壁・霧退け・気流制御が高精度

・仲間の“感情揺れ”にも敏感(ソーマの嘘を見抜く)

・味方へのバフ性能が高い(集中力・安定化効果)


【弱点】

・過剰同調で倒れる

・幻惑・精神攻撃に弱い(騙されやすい)

・防御魔術は強いが、攻撃魔術は少ない


――――――――――――


■ ガルム(鉄喰い / 前衛タンク)

年齢:24 性別:男

役割:前線突破・盾・時間稼ぎ


【基本能力】

・腕力:★★★★★

・耐久:★★★★★★(人間の枠を超えかけている)

・戦闘経験:A


【固有指標】

《鉄血強化》活性深度:A+

→ 負傷するほど戦闘力上昇。


防御突破力:S

→ 同格の魔物相手でも“物理で押し負けない”。


【特徴】

・大物戦で真価を発揮

・ソーマの指示により“的確に核を殴れる”

・リュミの風台+セシリアの雷付与で火力UP


【弱点】

・長期戦で硬直

・精神攻撃に弱い

・狭い場所や高所は苦手

・戦術を細かく考えるのが苦手


――――――――――――


■ セシリア(魔導工匠 / 気象魔導士)

年齢:22 性別:女

役割:解析・サポート魔導・中衛攻撃


【基本能力】

・魔導知識:S

・精密魔術:A+

・体力:★★☆☆☆


【固有指標】

気象魔導きしょうまどう操作適性:S

→ 気圧・湿度・雷素を自在に操る。


魔導具製作:S+

→ 現場で即席対策アイテムを作れる。


【特徴】

・解析力はパーティ最高

・攻撃は一点特化の“雷素焼却”が得意

・ソーマの予報を“理論化”して補佐できる唯一の頭脳


【弱点】

・接近戦に極端に弱い

・感情で暴走するタイプ(メンタル折れると性能が下がる)

・素材がないと力が出ない


――――――――――――

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