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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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143/207

管理されない未来

変化は、

必ず外側から始まる。


王都の中心は、

相変わらず整っていた。

掲示は簡潔で、

人の流れは穏やか。

天象庁の観測塔も、

いつも通り稼働している。


だが――

異変は、

王都の外縁で起きた。


昼過ぎ、

天象庁に一報が入る。


「北東外縁部、

 小規模な魔力変動を確認」


「……規模は?」


「低。

 ただし……

 予測モデルに

 合致しません」


その一言で、

室内の空気が

変わった。


セシリアが、

即座に資料を広げる。


「……観測値は……

 正常範囲……」


「……でも……

 発生位置が……

 おかしい……」


ガルムが、

腕を組む。


「……また……

 残滓絡みか……?」


ソーマは、

黙って

地図を見ていた。


変動地点は、

王都防衛線の外。

だが、

危険区域でもない。


(……管理の……

 空白……)


それが、

真っ先に

頭に浮かんだ言葉だった。


天象庁は、

これまで

王都内部を

優先的に

管理してきた。


外縁部は、

後回し。

住民も少ない。

被害が出にくい。


だが――

管理していない場所は、

予測も

していない。


「……現地調査を……

 出す……」


ソーマの言葉に、

数人が

顔を上げる。


「……でも……

 緊急度は……

 低い……」


「……だからだ……」


ソーマは、

静かに続けた。


「……低いから……

 行く……」


「……管理されていない変化は……

 数字になる前に……

 見る必要がある……」


反論は、

出なかった。


それ自体が、

変化だった。



夕方。


王都外縁、

草地と崩れかけた

石道。


風は弱く、

空は曇り。

だが、

リュミが

立ち止まる。


「……ここ……」


「……空が……

 揺れています……」


「……嵐じゃない……

 でも……

 定まっていません……」


セシリアが、

計測器を確認する。


「……確かに……

 変動……

 微弱……」


「……でも……

 継続してる……」


ガルムが、

足元を蹴る。


「……見た目は……

 ただの原っぱだな……」


ソーマは、

その中央に

立った。


耳奥に、

かすかな圧。


――(……管理外……

   領域……)


――(……変動……

   未分類……)


(……来たか……)


それは、

災厄の兆候ではない。

だが、

安全でもない。


名もなく、

分類もされていない変化。


ソーマは、

帳面を開かず、

ただ地面に

膝をついた。


土に触れる。


冷たい。


「……ここは……

 まだ……

 世界が……

 決めてない……」


セシリアが、

小さく息を呑む。


「……未来が……

 固定されていない……?」


リュミが、

静かに頷いた。


「……はい……」


「……だから……

 怖くて……

 でも……

 苦しくありません……」


それは、

王都では

もう感じなくなった

感触だった。


管理され、

最適化され、

決められた未来。


その外側に、

まだ

揺らぎのままの時間が

残っている。


ソーマは、

立ち上がった。


「……ここは……

 触るな……」


「……記録も……

 最小限に……」


「……観測だけ……

 続ける……」


ガルムが、

眉を上げる。


「……放っとく……

 ってことか……?」


「……違う……」


ソーマは、

首を振った。


「……残す……」


「……管理しないまま……

 未来に……

 渡す……」


王都の外縁で、

小さな風が

吹いた。


それは、

何かが始まる

合図ではない。


だが――

終わらせなかった証だった。

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