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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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問いを腐らせるな

王都に、

奇妙な言葉が

広まり始めていた。


「……一応……

 考えたんだけど……」


「……まあ……

 いつも通りで……」


考えている。

だが――

考えた“ふり”だ。


ソーマは、

その変化を

見逃さなかった。


(……問いが……

 形だけ……

 残ってる……)


問いは、

投げるだけでは

意味がない。


繰り返され、

消費され、

慣れられた問いは、

腐る。



朝。


南区の判断表は、

さらに簡略化されていた。


「基本、問題なし」

「迷ったら通常行動」


それを見た

市民の一人が、

笑って言う。


「……これ……

 最初から

 あったら……

 楽だったのにな……」


その言葉に、

周囲が

同意する。


ソーマは、

胸の奥で

小さく

何かが

音を立てて

崩れるのを感じた。


(……楽……

 それが……

 腐り始めだ……)



天象庁。


若い職員が、

相談してくる。


「……問いを……

 出しても……

 皆……

 答えを……

 探してしまいます……」


「……それは……

 自然だ……」

 ソーマは答える。


「……だが……

 早すぎる答えは……

 問いを……

 殺す……」


職員は、

黙って

頷いた。


理解している。

だが――

怖がってもいる。



その日の夕方。


ソーマは、

掲示板の前に

立った。


人々が、

遠巻きに

見ている。


彼は、

何も

説明しなかった。


代わりに、

一行だけ

書いた。


――今日、

 あなたが

 一番迷ったのは

 どこですか。


ざわめき。


「……迷った……?」


「……別に……

 迷ってない……」


誰かが、

そう言いかけ――

言葉を

止める。


「……いや……

 昼……

 裏道……

 使うか……

 少し……」


別の誰かが、

小さく

呟く。


迷いは、

消えていない。


ただ、

無視されていただけだ。



青年は、

少し離れた場所で

その掲示を見ていた。


彼は、

目を細める。


「……問いを……

 更新した……」


それは、

評価でも、

警戒でもない。


同業者を見る目だった。



夜。


屋上で、

リュミが

空を見上げる。


「……空が……

 少し……

 ざらついています……」


セシリアが、

数値を確認する。


「……局所集中……

 解除……

 再分散……」


ガルムが、

腕を組む。


「……腐る前に……

 混ぜ返した……

 って感じか……」


ソーマは、

夜空を見上げた。


(……問いは……

 放置すると……

 腐る……)


(……だが……

 手入れすれば……

 生きる……)


帳面を開き、

静かに書く。


――問いは、

 投げ続けろ。


――同じ形で

 投げるな。


――慣れた瞬間、

 腐る。


ペンを置く。


王都は、

まだ不安定だ。


だが――

問いは、

まだ

息をしている。


それだけで、

十分だった。

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