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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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肩に乗るもの

王都の空気は、

少しだけ重さを変えていた。


不安が消えたわけではない。

だが、

向きが定まらない

霧のようなものに

変わっている。


それは――

誰かの肩に、

少しずつ乗り始めていた。


ソーマは、

朝の天象庁の廊下を歩きながら、

視線を感じていた。


敬意でも、

敵意でもない。


期待だ。


それが、

一番重い。


「……ソーマさん」


若い職員が、

声をかけてくる。


「……今日の……

 掲示は……?」


ソーマは、

すぐには答えなかった。


「……考え方は……

 書く……」


「……答えは……

 書かない……」


職員は、

一瞬戸惑い、

それから頷いた。


「……分かりました……」


その背中を見送りながら、

ソーマは

自分の肩を

少しすくめた。


(……乗ってきたな……)


昼前。


広場では、

昨日よりも

人が集まっていた。


だが、

誰も前には出ない。


代わりに、

視線が

ソーマへ向く。


「……どう思う……?」


「……あの人……

 何も言わないけど……」


青年も、

少し離れた場所に

立っていた。


彼は、

もう中心ではない。


だが、

消えてもいない。


その目は、

ソーマを

静かに見ていた。


ソーマは、

一歩前に出る。


だが――

語らない。


掲示板を

指で叩き、

一行だけ

書き足す。


――空は、

 均一ではない。


――人も、

 同じだ。


それだけ。


ざわめき。


「……それ……

 どういう……」


「……つまり……

 人によって……

 違う……?」


誰かが、

不満そうに

息を吐く。


「……じゃあ……

 責任は……

 誰が……?」


その問いが、

空気を

鋭く切った。


ソーマは、

初めて

はっきりと

答えた。


「……あなたです」


一瞬、

広場が

凍る。


「……俺たち……?」


「……それって……」


ソーマは、

視線を逸らさない。


「……俺も……

 含めて……」


「……だから……

 重い……」


その言葉に、

誰も

すぐには

反論できなかった。


青年が、

口を開く。


「……それは……

 酷ではありませんか……」


「……人は……

 判断を……

 嫌います……」


ソーマは、

静かに答えた。


「……嫌いでも……

 逃げられません……」


「……あなたが……

 背負っていたものが……

 今……

 分かれただけです……」


青年の目が、

わずかに

揺れる。


それは、

怒りではない。


解放に近い揺れだった。


夕方。


天象庁の屋上。


リュミが、

空を見上げて

言った。


「……空が……

 重いまま……

 です……」


「……でも……

 落ちてきません……」


セシリアが、

数値を確認する。


「……集中荷重……

 減少……」


「……分散……

 進行中……」


ガルムが、

肩を回す。


「……重ぇもんは……

 分けりゃ……

 持てる……

 ってか……」


ソーマは、

夜空を見上げた。


(……肩に乗る……)


(……でも……

 押し潰されるほどじゃない……)


帳面を開き、

短く書く。


――責任は、

 奪うと支配になる。


――分けると、

 重さになる。


――重さは、

 人を立たせる。


ペンを置く。


王都は、

まだ不安定だ。


だが――

誰か一人の肩に、

全てが

乗ってはいない。


それだけで、

世界は

少しだけ

人間に戻っていた。

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