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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第三章

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許されない選択、それでも人は立つ

空が、軋んだ。


音ではない。

振動でもない。


意味そのものが、ずれた。


王都の上空に走る裂け目が、

ゆっくりと形を変える。


広がるのではなく、

“重ねる”ように。


「……まずいわ……」

 セシリアが低く呟く。


「裂け目が……

 単独で動いてない……

 同期してる……」


ガルムが、

斧を強く握る。


「……一斉に、

 来るってことか?」


「ええ」

 セシリアは頷いた。

「しかも……

 狙いは一点じゃない」


◆切り離し


裂け目の一つが、

王都北区の上空で

“沈んだ”。


地面が、

静かに――

だが確実に、

沈下を始める。


「……地形操作!?」

 ガルムが叫ぶ。


「違う!」

 セシリアが即答する。

「術式じゃない……

 世界が、

 場所を“外そう”としてる!」


リュミが、

はっきりと告げた。


「……ここ……

 “王都”じゃ……

 なくなりかけてます……」


ソーマは、

理解した。


(……切り離す気だ)


(人が選び続ける場所を、

 世界から外す)


◆人の声


市場の方角から、

悲鳴が上がる。


逃げ惑う人々。

転ぶ子ども。

必死に手を伸ばす大人。


「……放っておけない……」

 ソーマが呟く。


「当然だ」

 ガルムが前に出る。


「……同調、

 最大でいきます……」

 リュミが目を閉じる。


イサナは、

影を広げた。


「……繋ぐ……

 “ここは、ここだ”って……

 世界に、

 言い張る」


◆“場所”を守るということ


ソーマは、

人々の中へ走った。


一人、また一人。

肩を貸し、

手を引き、

声をかける。


「大丈夫だ!

 離れすぎるな!」


「ここにいろ!

 動きすぎるな!」


予報は、

来ない。


だが――

空気の重さは、

はっきり分かる。


(……今、

 世界が……

 “失敗例”に

 しようとしてる……)


◆世界の返答


――(……人は……

   境界を……

   越えすぎた……)


また、

あの声。


感情のない、

世界の声。


ソーマは、

振り返らずに叫んだ。


「越えてない!」


「……選んでるだけだ!」


足元が、

揺れる。


建物の輪郭が、

一瞬、

別の配置に見えた。


ノアが、

声を震わせる。


「……重ね始めてる……

 別の世界の……

 “終わり”を……」


「……だから……

 ここを……

 “終わらせる”……」

 世界の声が続く。


◆それでも立つ


ソーマは、

足を止めた。


そして、

ゆっくりと――

地面を踏みしめた。


「……終わらせない」


声は、

小さい。


だが、

はっきりしていた。


「ここには……

 人がいる」


「名前があって、

 暮らしがあって、

 選んでる」


リュミの同調が、

限界まで高まる。


「……空が……

 抵抗してます……」


セシリアが、

歯を食いしばる。


「……物理じゃない……

 意味の引き止め合い……」


イサナが、

低く言った。


「……世界と……

 言い争ってる……」


◆選択の証明


ソーマは、

深く息を吸った。


(……予報は……

 未来を教えるものじゃない)


(……選ぶ覚悟を……

 試すものだ)


そして――

叫んだ。


「ここは、

 終わらない!」


「終わらせるなら……

 俺を越えていけ!!」


一瞬。


空の裂け目が――

止まった。


完全ではない。

消えもしない。


だが、

“進めなくなった”。


ガルムが、

信じられないものを見る目で

空を睨む。


「……止めやがった……」


ノアは、

静かに息を吐いた。


「……世界が……

 “計算を、

 やり直してる”……」


◆代償の影


だが――

その代償は、

すぐに現れた。


ソーマの視界が、

白く染まる。


「……っ……」


膝が、

崩れる。


「ソーマさん!!」

 リュミが叫ぶ。


耳鳴り。

強烈な頭痛。


――(……代償……

   発生……)


(……分かってる……)


(……それでも……)


ソーマは、

倒れ込みながら――

笑った。


(……まだ……

 立てる……)


裂け目は、

完全には閉じない。


だが――

王都は、

 切り離されなかった。


人々の声が、

戻ってくる。


泣き声。

怒鳴り声。

生きている音。


ソーマは、

薄れる意識の中で

確信した。


(……もう……

 戻れない)


(世界と……

 同じ高さに……

 立ってしまった)

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