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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第三章

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世界の反応

風が去った翌朝。


避難所となった仮設天幕には、

まだ砂の匂いが残っていた。


だが――

そこにあったのは、

生き残った人々の声だった。


「助かった……」

「本当に、全員……?」


そのざわめきが、

ゆっくりと実感へ変わっていく。


ソーマは、

少し離れた場所で

その光景を見ていた。


(……救えた)


だが、

胸の奥は

軽くなってはいない。


(……今回は、だ)


◆測候院への報告


王都へ戻ると、

天象庁の空気が

明らかに変わっていた。


書類の山。

急ぎ足の研究員。

そして――

増えた視線。


「……あれが……」

「全員避難させたって……」

「理論無視だぞ……」


セシリアが、

小声で言う。


「……完全に、

 “観測対象”になりましたね」


「前からだろ」

 ガルムが肩をすくめる。


「……質が違うわ。

 今は……

 “見張られてる”」


◆測候院・臨時評議


小会議室ではなく、

正式な評議室。


それ自体が、

異例だった。


セイル・アルヴェインは、

中央に立ち、

簡潔に報告を終える。


「……以上が、

 南部強風事案の顛末だ」


ざわめき。


年配の測候官が、

眉をひそめる。


「……全員、

 避難させた?」


「はい」


「成功確率は?」


「……計算していません」


一瞬、

空気が凍る。


別の者が、

声を荒げた。


「無謀だ!

 偶然成功しただけだろう!」


セイルは、

静かに言った。


「偶然かどうかは、

 次を見れば分かる」


全員の視線が、

ソーマに集まる。


◆三つの視線


会議後。


セイルは、

ソーマだけを残した。


「王家から、

 正式な接触要請が来ている」


「……やっぱり」


「神殿もだ。

 “奇跡の巫女と予報持ち”

 という組み合わせに、

 強い関心を示している」


リュミが、

思わず身をすくめる。


「……そして……

 測候院内部も、

 割れ始めている」


「割れ?」


「君を

 “理論外の異物”として

 排除したい派と、

 “次世代観測モデル”として

 保護したい派だ」


ソーマは、

苦笑した。


「……面倒ですね」


「だが、

 避けられない」


◆ノアの異変


その夜。


ノアが、

一人で廊下に立っていた。


窓の外を、

じっと見つめている。


「どうした?」

 ソーマが声をかける。


「……増えてる……」


「何が?」


ノアは、

ゆっくり振り返った。


「……“見てるもの”が……」


背筋が、

わずかに冷える。


「……歪みか?」


「……いや……

 人だよ……」


ノアは、

静かに言った。


「……人が……

 “未来を見る目”を……

 持ち始めてる……」


◆噂は力になる


王都では、

すでに噂が

別の形に変質していた。


・予報持ちは、選べる

・未来は一つじゃない

・神ではなく、人が立った


それは、

希望であり――

同時に、

危険な思想でもある。


セシリアが、

苦い顔で言った。


「……予測不能なものが、

 人に広がるのは……

 いつだって、

 災厄の前兆よ」


「……でも……」

 リュミが小さく言う。


「……空は……

 前より……

 静かです……」


◆新しい予報


その夜。


ソーマの耳奥で、

静かな声が鳴った。


――(……観測者……

   増加……)


「……やっぱりか」


――(……世界は……

   “一人”より……

   “複数”を……

   恐れる……)


ソーマは、

窓の外を見る。


灯りの下で、

人々が笑い、

話し、

生きている。


(……俺一人じゃない)


(……それは、

 救いでもあり……

 嵐でもある)


◆次の波


ノアが、

静かに告げた。


「……次は……

 “人が選ぶ未来”を……

 止めに来る……」


「誰が?」


ノアは、

迷いなく答えた。


「……世界の……

 深いところ……」


ソーマは、

拳を握った。


(……来るなら、来い)


(今度は……

 俺一人じゃない)


王都の空には、

雲が集まり始めていた。


それは、

嵐の兆しではない。


“意思”が集まる前触れだった。

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