第4話 タッグ
いつも読んでいただきありがとうございます。
2つの銃口が、佳輝の顔に向いていた。
佳輝
「……う、撃たないですよね……?」
正樹は銃を構えたまま、静かに答えた。
正樹
「ゆっくり手を見せろ」
佳輝は言われた通り、ゆっくりと両手を正樹へ見せた。
正樹
「殺る気はないな?」
佳輝
「……はい……」
正樹
「……ふぅー」
正樹はゆっくり息を吐く。
そして、両手に持っていた銃をホルスターへ戻した。
佳輝
「……良かった……」
「撃たれるのかと思いましたよ……」
正樹
「すまない……」
「でも、その気持ちは俺も同じだ」
「佳輝がどんな奴か分からなかったからな」
佳輝
「……信用してもらえましたか?」
正樹
「今はな」
「それは佳輝も同じだろ?」
佳輝
「……正直、そうですね」
2人の間に、少しだけ沈黙が流れた。
正樹
「とりあえず……停戦だな」
「裏切らない限り、銃は向けない」
佳輝
「分かりました」
「俺もそうします、正樹さん」
正樹
「……俺の方が歳上か?」
佳輝
「自分、高校を卒業したばかりです」
正樹
「……歳上だな」
その言葉に、2人から初めて笑みがこぼれた。
ほんの一瞬だけだった。
ここが無人島であることも。
周囲で人が殺し合っていることも。
2人とも忘れていた。
佳輝
「……もう立ってもいいですか?」
正樹
「ダメだ。我慢してくれ」
「もし狙撃銃があるなら、狙われる」
正樹は周囲を警戒しながら尋ねた。
正樹
「佳輝、銃は何を渡された?」
佳輝
「銃、よく分からないんですが……これです」
佳輝が持っていた銃を見せる。
正樹は目を細めた。
正樹
「……SCAR-Hとガバメントか」
佳輝
「それって、強いんですか?」
正樹
「どっちも扱い方には注意が必要だ」
「それと……悪い」
「弾が合わないから、俺の弾を分けることもできない」
佳輝
「そうなんですね……」
「そういうのも全然分からなくて……」
「弾は映画とか見て、なんとなく込めました」
正樹
「映画か……」
思わず苦笑する。
正樹
「まあ、今はそれでもいい」
「ただ、実際に撃つなら無理するな」
「銃そのものより、まず安全に扱うことを覚えた方がいい」
正樹は佳輝に、銃の安全な扱い方を簡単に教えた。
佳輝は真剣な表情で聞いている。
佳輝
「ありがとうございます」
正樹
「……殺したくても、殺せなかったんだな?」
佳輝
「……そうですね」
「人なんて、撃てないですよ」
正樹
「……俺も⋯⋯と言いたいが1人な⋯」
佳輝の次の一言で、その空気が変わった。
佳輝
「これ……会社の試験なんですよね?」
正樹の表情が曇る。
正樹
「……だと思う」
「ただ、監視カメラが多い」
「ここに来るまでに、少なくとも2つはあった」
佳輝
「そうなんですか?」
「じゃあ……俺たち、見られてるってことですか?」
正樹
「うん……」
「エンタメにしてるのか、本当に試験なのか……」
正樹は周囲を見渡した。
木々の間。
岩陰。
そして、見えない場所。
どこにカメラがあるのか分からない。
正樹
「佳輝」
「見られてる以上……1人になるまで殺し合いは続くかもしれない」
佳輝
「正樹さん……」
少し考えた後、佳輝は口を開いた。
佳輝
「2人で辞退しましょうよ」
正樹
「……そうしたいんだが」
「リタイアしたくても、どうすればいいのか分からない」
佳輝
「カメラに訴えてみては?」
正樹
「どうだろうな……」
「それなら、もうリタイアする人がいっぱい出ててもいいと思わないか?」
佳輝
「……そうですね」
「さっきも叫んでいた人がいましたけど……」
「何かがこの島に来た気配はなかったですよね」
正樹
「……そうなんだ」
2人は黙り込んだ。
この島から出る方法は、何も説明されていない。
ならば――。
正樹
「せめて俺たち2人になれば、何かできるかもしれない」
佳輝
「やりましょう!」
正樹が顔を上げる。
佳輝
「生き残って、2人で帰りましょう!」
正樹
「……だな!」
「2人で帰ったら、酒でも飲もう!」
佳輝
「俺、18ですよ」
正樹
「……」
佳輝
「……」
2人は顔を見合わせた。
そして――。
「ハハハハ!」
久しぶりに、心から笑った。
この島へ来てから初めてだった。
正樹
「とりあえず、こっちから積極的に攻めるのはやめよう」
「身を守ることに専念する」
「その方が、結果的に人数も減る」
佳輝
「その代わり、強い人間が残りますね」
正樹
「その通りだ」
「だが、俺たちは2人だ」
佳輝
「……ですね」
「相手が1人なら、こっちにはアドバンテージがあります」
正樹
「その通り」
正樹はM4を握り直した。
佳輝も、自分の銃を確認する。
殺し合いをするためではない。
2人で生きて帰るために。
こうして――。
正樹と佳輝は、タッグを組んだ。
その頃。
島の中では、40人の参加者たちが、それぞれの判断で動いていた。
男
「実銃は撃てるし……人も撃てる」
「たまらねぇーな!」
別の男は、木陰に身を潜めていた。
男
「動かなければ、人数は減る」
「無駄な戦いはしない」
そして、また別の場所では――。
1人の参加者が空へ向かって叫んでいた。
男
「おーい!」
「俺は帰る!」
「リタイアだー!」
その声は、深い森の中へ消えていった。
40人の参加者。
それぞれが、生き残るための道を選び始めていた。
今後もよろしくお願い致します。




