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最終選考  作者: アル治


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第2話  最初の1発

いつも読んでいただきありがとうございます。

正樹は、防弾チョッキを身に着けた。


目の前に並べた弾倉へ、弾を1発ずつ込めていく。


カチッ。


最後の1発を押し込み、弾倉を確認する。


正樹

「……まさか、サバゲーの知識が役に立つとは思わなかったよ」


自嘲気味に呟く。


だが、手にしている銃は玩具ではない。


弾倉に込められたのも、当然ながら実弾だ。


正樹

「……実弾で、本当に殺し合いをさせるのか?」


答えはない。


正樹は全ての弾倉に弾を込めた。


そしてベレッタをホルスターへ差し込み、M4を手に取る。


銃を構える。


その重さが、現実を嫌でも感じさせた。


正樹

「とりあえず……殺し合いはしない」


この試験が何を意味しているのかは分からない。


だが、いきなり人を殺すつもりはなかった。


まずは話し合える人間を探す。


仲間を作る。


それしかない。


しかし、封筒に書かれていた一文が頭から離れなかった。


『最後の1人になったら、重役を任せる』


正樹

「……最後の1人、か」


仲間を作ったとしても、最後には1人にならなければ試験は終わらない。


つまり、この試験には最初から――。


仲間同士で殺し合う可能性が組み込まれている。


正樹は考え込むのをやめた。


「まずは、生き残ることだ」


そう呟き、周囲を見渡す。


防御に適した場所を探す。


洞窟はどうだろう。


一見すると身を隠すには最適だ。


しかし、もし全員に同じ武器が渡されているとは限らない。


手榴弾などが配布されている可能性もある。


そう考えると、洞窟は逃げ場のない場所になってしまう。


正樹は地形を確認しながら歩いた。


そして、少し離れた場所にある高台へ目を向ける。


正樹

「……高台を占拠するのがセオリーだ」


高所なら周囲を見渡せる。


敵を早く発見できる。


少なくとも、何も考えずに歩き回るよりは生存率が高い。


正樹は高台を目指した。


その時だった。


――ガサッ。


左方向から音が聞こえた。


草むらを誰かが進んでいる。


正樹は足を止めた。


M4を構える。


そしてスコープを覗いた。


2倍スコープの先に見えたのは――。


「……子供?」


かなり幼い。


年齢は分からない。


しかし、間違いなく武装している。


持っている銃も、正樹と同じM4。


防弾チョッキも装着している。


正樹

「……全員、同じ装備なのか?」


いや、そうとは限らない。


バッグの中身まで完全に同じだと決まったわけではない。


正樹は相手を刺激しないよう、じっと観察した。


向こうは、まだ正樹に気付いていない。


どうする。


声を掛けるか。


それとも、ここから離れるか。


正樹は周囲を見渡した。


そして、足元に落ちていた木の枝を拾う。


男とは反対方向へ投げた。


――カラン。


枝が地面に落ちる。


ガサッ!


音に反応して、若い男が振り返った。


その瞬間――。


パパパーン!


乾いた銃声が響いた。


男が発砲した。


正樹は息を呑んだ。


「……!」


最初から殺すつもりだった。


話し合うつもりなど、最初からなかったのだ。


男が周囲を探している。


このままでは、自分の位置も見つかる。


正樹はM4を構え直した。


スコープを覗く。


十字の照準が、男の頭に重なる。


指が震えた。


撃てない。


人間だ。


目の前にいるのは、敵ではある。


だが――。


ほんの数分前まで、どこかの会社で働くことを夢見ていた人間かもしれない。


家族がいるかもしれない。


友人がいるかもしれない。


それでも。


このまま撃たなければ――。


殺される。


正樹は目を閉じた。


一度、ゆっくり息を吐く。


そして――。


止める。


引き金に掛けた指へ力を込めた。


パァン!


乾いた銃声が、1発だけ響いた。


男の身体が崩れ落ちる。


動かない。


静寂が戻った。


正樹は銃を下ろした。


手が震えている。


呼吸が乱れている。


さっきまで、そこに人間がいた。


しかし今は――。


ただ、動かない身体があるだけだった。


正樹

「…………」


言葉が出てこない。


自分が人を殺した。


その事実だけが、頭の中を何度も巡っていた。


これが、正樹にとっての最初の1発だった。

今後もよろしくお願い致します。

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