第10話 生き残った者たち
いつも読んでいただきありがとうございます。
銃声が響く森の中。
木の後ろで、正樹は動けずにいた。
右か、左か。
どちらへ行っても、和真に撃たれる可能性がある。
正樹は決断する。
正樹
(……行くしかない!)
(佳輝……すまない……)
正樹はグリップを強く握る。
そして、1つ息を吐いた。
次の瞬間――
正樹が木の裏から飛び出そうと構える。
佳輝
(正樹さん!)
ダダーン!
和真
(もう1人いたか!)
その瞬間、佳輝からは和真の姿が少しだけ見えていた。
正樹は佳輝の声でさらにグリップを強く握った。
正樹
(佳輝!助かった!)
正樹が木の裏から勢いよく飛び出し、銃を撃ちながら突っ込んでいく。
正樹
(うぉぉー!)
タタタタタタッ!
タタターン!
ダダダダダッ!
正樹と佳輝。
2人からの挟み撃ちになる。
和真
(…………面白かったよ…………)
バババッ!
和真の体を弾丸が突き刺さる。
そして――
和真は、その場に倒れた。
正樹
(はぁ……!はぁ……!はぁ……!)
佳輝
(……ま、正樹さん!)
佳輝は不安に押しつぶされそうになる。
和真が倒れているのは見える。
だが、正樹の姿がここからでは確認できない。
佳輝
(正樹さん!)
(正樹さーん!)
佳輝が何度も呼ぶ。
すると――
正樹
(佳輝ー!無事だー!)
(佳輝はー?)
その声を聞いた瞬間。
佳輝は腰から力が抜け、その場に座り込んだ。
安心したのか、声も出せない。
正樹
(佳輝ー?)
佳輝
(平気ですー!)
何とか声を出す。
正樹は和真に近付く。
和真は、もう動くことはなかった。
弾薬も使い果たしている。
正樹
(……こんな所に来なければ……)
正樹の中にあったのは、会社への憎悪だけではなかった。
それ以上に強かったのは――
普通の生活に戻りたい。
家に帰りたい。
その気持ちだった。
やがて、正樹と佳輝が合流する。
正樹
(佳輝、ありがとう)
(助かった)
(お前に出会えて良かったよ)
佳輝
(……良かった)
(正樹さんが無事で……本当に良かった)
2人とも、全力を尽くしていた。
正樹
(……疲れたな……)
佳輝
(本当ですよ……もう体が動かないですよ……)
正樹
(……フッフフフ)
佳輝
(……ハハハッ)
2人が笑い出す。
生き残った嬉しさ。
体力の限界。
そして、極限状態から解放された安堵。
なぜか2人とも、笑っていた。
正樹
(こんな状況で笑うとはな)
佳輝
(本当ですよ。不謹慎ですね)
2人が話していると――
ガサッ!
向かいの草むらから音が聞こえた。
2人は反射的に銃を構える。
だが、2人とも弾倉を交換していなかった。
マガジンは空だった。
もちろん、2人ともそんなことは分かっていない。
疲れていたのもあったのかもしれない。
それでも2人は、ほぼ同時にM4とSCAR-Hを地面に投げ捨て、ハンドガンを抜いていた。
草むらから声が聞こえる。
男
(リタイアだ……帰してくれー……!)
その声は、もうかすれていた。
ずっと声を出していたのだろう。
大きな声を出すこともできないほど、疲れ切っているようだった。
やがて、男が草むらを抜ける。
すると――
正樹と佳輝が、ハンドガンを自分へ向けている。
男
(ま、待ってくれ!)
(リタイアだ!撃たないでくれ!)
佳輝は正樹の方を見る。
正樹は、少し呆れたような顔をしていた。
正樹
(あんた、よく殺されなかったな?)
(両手を上げて、ゆっくりその場で回れ!)
男は言われた通りにする。
正樹
(本当に銃を持ってないのか?)
男
(持ってない!)
(最初の場所に置いてきた!)
佳輝も少し呆れた。
佳輝も、銃を持つかどうか悩んだ1人だった。
だが、身を守るために銃を手に取った。
佳輝
(あんた、名前は?)
男
(俺は安平って言う……)
(家に帰りたいんだ……)
正樹
(それは俺達もだよ)
(他に誰かに会わなかったか?)
安平
(誰にも会ってない……)
(所々に死体はあった……)
正樹
(……そうか)
3人は、その場に留まってしまった。
疲れ。
安堵。
そして、どうしていいのか分からなかった。
何分そこにいたのか、誰にも分からない。
実際には数分だったのかもしれない。
それでも、3人はその場から動かなかった。
すると――
遠くから、音が聞こえてきた。
バラバラバラバラ……!
正樹
(……これって……)
(……ヘリか?)
佳輝
(……えっ?)
佳輝には、まだ聞こえていなかった。
だが、徐々に音が大きくなっていく。
バラバラ……!
佳輝
(ヘリですね!)
(終わったんですね!)
安平
(やっと帰れる……)
3人は、空を見上げる。
そのヘリの登場が――
今後の3人の運命を決めることになる。
今後もよろしくお願い致します。




