辞書を読むな会話しろ
前話と一気ニ話投稿!
朝。
「これは朝です。朝とは、一日の始まりを指す言葉であり、一般的に日の出から午前中にかけての時間帯を意味します」
長い。
俺は目を閉じたまま言った。
「もう嫌な予感しかしない」
横から少女。
「これは起床です。起床とは、睡眠状態から覚醒状態へ移行する行為を指します」
「知ってるわ!!」
⸻
外に出る。
パン屋。
店員がパンを差し出す。
「これはパンです。パンとは、小麦粉などを主原料とし、焼成によって作られる食品の総称です」
いちいち説明すんな。
「このパンは硬いです。硬いとは、柔らかくない状態を指します」
分かるわ。
「しかしスープで改善されます。改善とは、状態をより良い方向へ変化させることです」
全部説明すな。
⸻
俺は金を出す。
「これは3ゴールドです。ゴールドとは、この世界における通貨単位です」
知ってる。
「支払いが確認されました。支払いとは、対価として金銭を渡す行為を指します」
やめろ。
⸻
通り。
兵士が言う。
「現在の治安は安定しています。治安とは、社会の安全や秩序の状態を意味します」
「説明しないと死ぬのかお前ら」
兵士は真顔で答える。
「いいえ、死ぬことはありません。死ぬとは、生物としての生命活動が停止することを指します」
やめろ。
⸻
俺は少女を見る。
「これどうなってんだよ」
少女が答える。
「現在、言語システムは“誤解の完全排除”を目的としています。誤解とは――」
「説明すな!!」
⸻
広場。
誰かが倒れている。
人々が集まる。
「これは人です。人とは――」
今それいらん。
「この人は倒れています。倒れるとは、立っている状態から地面に接触する状態へ変化することを指します」
状況は分かる。
「助けます。助けるとは――」
もういい!!
⸻
俺は叫ぶ。
「会話しろ!!辞書読むな!!」
少女が冷静に言う。
「その指摘は正当です。正当とは――」
「もういい!!」
⸻
その時、視界にウィンドウ。
「ユーザーフィードバック」
来た。
「“情報は正確だが会話として成立していない”」
ようやく気づいたか。
「改善を検討します」
やめろ。
嫌な予感しかしない。
⸻
少女が言う。
「次のアップデートでは、情報量の削減が行われる可能性があります」
「頼むから極端にするなよ」
少女、
「保証はできません。保証とは――」
「だから説明すな!!」
⸻
俺は空を見上げた。
「この世界、会話より辞書の方が強いのどうなってんだよ……」
少女が静かに言う。
「異常です。異常とは――」
「分かってるわ!!!」
次回、やばいかも???次回もお楽しみに!もし面白かったら、評価やブクマしていただけると励みになります!




