いとをかし(尚、意味は不明)
朝。
「いとあさましきことなり。起くべき時分にて候」
……は?
俺は目を開けた。
天井はいつも通り。
だが、横の少女が壊れていた。
「なあ、今なんて言った?」
少女は少し首をかしげて、
「朝なり。起きよ」
急に短くすな。
「いやさっきの長いやつなんだよ」
「詳細なる表現なり」
戻すな。
―――
外に出る。
街の様子は――普通。
ただし会話だけが古文。しかも意味があってるかわからん。
パン屋。
「よくぞおはしける。此の饅頭、いと美味なるものにて候」
パンだよな?
「外は堅く、内はやはらかにて、汁物と共に食すれば尚よし」
あ、これいつものヒントだ。
「値は三の金貨なり。これ相応の価なり」
なんとなく分かるのが腹立つ。
―――
通り。
兵士が言う。
「此の地の治安、いと安らかにて候」
まあ平和ってことだな。
「されど油断は禁物なり」
急に真面目。
「不審なる者あらば、速やかに対処すべし」
完全にお役所古文。
―――
俺は少女に言う。
「これさ、意味分かって喋ってるのか?」
少女は頷く。
「理解は可能なり」
「俺もなんとなく分かるけどさ……」
「やばよりは難解なり」
比較対象そこかよ。
―――
広場。
誰かが告白している。
男、
「汝のこと、常より心に留めおり候」
長い。
女、
「それは……いと嬉しきことなり」
成立してる!?
男、
「願わくば、これより先も共に在らんことを」
女、
「……よし」
最後だけ現代。
―――
俺は思った。
「……やばの方が早くね?」
少女が言う。
「迅速性においては優れていた」
だよな。
―――
その時、空にウィンドウ。
「言語アップデート ver.2.1」
また来た。
「コンセプト:文化的表現の導入」
やりすぎだろ。
「現在、古典言語を適用中」
知ってる。
―――
王城に呼ばれる。
王が口を開く。
「汝、異界より来たりし者なりと聞き及ぶ」
それっぽい。
「此の国、言の葉に不具合生じ候」
知ってる。
「これを如何に思うや」
俺に振るな。
「いや普通に分かりにくいです」
王、
「左様か」
軽いな。
―――
帰り道。
俺はため息をついた。
「なんかさ、毎回極端なんだよな」
少女が言う。
「中庸は難しきものなり」
急にいいこと言うな。
「やばの時は楽だったし、昨日は長すぎたし、今日は古文だし」
「振れ幅、大なり」
まとめんな。
―――
その時、またウィンドウ。
「ユーザーフィードバック」
来た。
「“雰囲気は良いが理解しづらい”」
その通り。
「改善を検討中」
やめろ。
嫌な予感しかしない。
―――
少女が言う。
「次の更新、近し」
俺は空を見上げた。
「頼むから普通にしてくれ……」
少女、
「それは最も困難な要求なり」
だろうな。
今回の話はイレギュラーな時間に投稿しました!なので、次話は本日そのまま投稿します!次回もお楽しみに!もし面白かったら、ブクマや評価よろしくお願いします!




