エリアごとに言語仕様が違うのやめろ
朝。
「おはようございます。本日も良い一日になりそうですね」
少女が普通に言う。
完璧だ。
「……とうとう安定したか」
俺は心から安堵した。
――が。
「やばー!!」
外から聞こえた。
嫌な予感しかしない。
―――
通りに出る。
子供たちが走り回っている。
「やば!」
「やばやば!」
……まだいる。
「一部環境において旧バージョンが保持されています」
少女が冷静に言う。
「環境って何だよ」
その時だった。
宿屋のおばさんが外に出てきた。
「おはようございます。本日は誠に――」
一歩、前に出る。
「やば」
!?
「え?」
そしておばさんが、一歩後ろに下がる。
「本日は天候にも恵まれ――」
戻った!?
もう一度前に出る。
「やば」
「ちょっと待て!!」
―――
俺はおばさんの前に立って観察する。
一歩、前。
「やば」
一歩、後ろ。
「本日は良い一日で――」
「境界線ある!!」
少女が頷く。
「現在、この世界ではエリアごとに異なる言語仕様が適用されています」
最悪の仕様きた。
―――
パン屋。
入口付近。
「いらっしゃいませ。当店では焼きたてのパンを各種取り揃えております」
普通ゾーン。
店主が一歩横に動く。
「このパンは小麦の風味を最大限に引き出しており――」
長文ゾーン。
さらにカウンター奥へ。
「やば」
急に終わるな。
「店の中でバージョン違いすな!!」
―――
武器屋。
店主が歩きながら説明してくる。
「この剣は非常に優れた性能を――」
一歩。
「当該武器は攻撃性能と耐久性のトレードオフが――」
さらに一歩。
「やば」
忙しすぎるだろ。
「説明の途中で雑になるな!!」
―――
通り。
兵士が巡回している。
歩きながら、
「現在の治安は安定しています」
↓
「やば」
↓
「現在の治安状況は極めて――」
「行き来すな!!」
俺が叫ぶと、兵士は平然と答えた。
「慣れました」
強いなこの世界の住人。
―――
王城。
入口。
「よく来ました」
普通。
一歩進む。
「貴殿の来訪を心より歓迎いたします」
丁寧すぎる。
さらに玉座前。
王が口を開く。
「……やば」
「そこだけ!?」
少女が小声で言う。
「玉座付近は簡略化エリアです」
なんでそこ削る。
―――
王は続ける。
「やば……やば」
全然分からん。
俺は少し後ろに下がる。
すると――
「現在、王国内の言語システムに深刻な不具合が発生しています」
分かる!!
「いやそれ前で言え!!」
もう一歩前に出ると、
「やば」
「戻るな!!」
―――
俺は叫んだ。
「せめて重要な場所は統一しろ!!」
その瞬間。
視界にウィンドウ。
「言語アップデート ver.1.6」
来た。
「フィードバック:エリア差が不便」
遅い。
「改善を行います」
頼むぞマジで。
―――
数秒後。
世界が静かになる。
俺は恐る恐る宿屋のおばさんを見る。
おばさん、口を開く。
「……やば」
最悪。
―――
街。
「やば!」
「やば〜」
「やばやば」
完全統一。
俺は空を見上げた。
「なんで一番ダメなやつに合わせるんだよ……」
隣で少女が言う。
「やば」
ちょっと満足げなのやめろ。
次回、なんとまさかの言葉が導入?!
お楽しみに!
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ではまた、次回!




