第38話:全部疑問文になる世界なんだが
朝。
俺が目を覚ます。
少女が言う。
「おはようございます?」
「疑うな!!」
来たな。
⸻
俺は体を起こす。
「よく寝たな」
少女、
「よく寝ました?」
「確認すな!!」
⸻
外に出る。
通り。
人が話している。
男、
「今日はいい天気ですね?」
女、
「いい天気なんですか?」
「誰も確信してねえ!!」
空は普通に晴れている。
「そこは断定しろ!!」
⸻
パン屋。
店員が頭を下げる。
「いらっしゃいませ?」
「自信持て!!」
俺はパンを取る。
「これ一つ」
店員、
「それでよろしいですか?」
「そこは合ってるな」
一口食べる。
「うまい」
店員、
「おいしいですか?」
「今言っただろ!!」
⸻
通り。
兵士が来る。
「現在の治安は安定しています?」
「報告で疑問形使うな!!」
遠くで爆発。
ドン!!
俺、
「全然安定してないだろ!!」
兵士、
「安定していないのですか?」
「お前が判断しろ!!」
⸻
少女が説明する。
「今回のアップデートでは、発言の断定を避ける仕様となっています?」
「お前まで揺らぐな!!」
「すべての発言に不確実性が付与されています?」
「だから説明に疑問形いらねえ!!」
⸻
広場。
男が女に告白している。
男、
「好きです?」
「弱すぎるだろ!!」
女、
「私のことが好きなんですか?」
男、
「好きかもしれません?」
「濁すな!!」
女、
「それって好きじゃないですよね?」
男、
「好きじゃないんですか?」
「会話が前に進まねえ!!」
⸻
その時。
子供が転ぶ。
ドン!!
子供、
「痛い?」
「自分で確認すな!!」
大人、
「痛いですか?」
子供、
「痛いかもしれない?」
「もう分からなくなってる!!」
⸻
俺は頭を抱える。
「全部疑問にするな!!」
少女が言う。
「全部疑問にしています?」
「断定しろ!!」
⸻
その時。
パン屋の店員が走ってくる。
「大変です?」
俺、
「何があった!?」
店員、
「爆発が起きています?」
「起きてるの見えてるだろ!!」
ドン!!
店員、
「爆発ではないのですか?」
「現実を疑うな!!」
⸻
周囲がさらに混乱する。
「逃げた方がいいですか?」
「安全ですか?」
「危険ではないですか?」
「大丈夫ですか?」
「誰も判断しねえ!!」
⸻
その時。
違和感。
会話がループし始める。
「行きますか?」
「どこに行きますか?」
「なぜ行きますか?」
「行くべきですか?」
「哲学始めるな!!」
さらに、
「私は誰ですか?」
「ここはどこですか?」
「存在疑い始めたぞ!!」
⸻
少女が言う。
「疑問の連鎖が発生しています?」
「もう止まらねえやつだ!!」
⸻
その瞬間。
空にウィンドウ。
「ユーザーフィードバック」
来た。
「“会話が進まない”」
その通り。
「“決断できない”」
知ってる。
「“全部不安になる”」
それな。
「改善を実施します」
やめろ。
⸻
少女が言う。
「次のアップデートでは、断定表現が復活します?」
「頼むから確定で言え!!」
「言語アップデート ver.5.3」
光。
静寂。
⸻
少女が言う。
「おはようございます」
普通だ。
俺は頷く。
「戻ったか……」
⸻
通り。
人が話している。
「今日はいい天気です」
「よし」
パン屋、
「いらっしゃいませ」
「完璧だ」
⸻
その瞬間。
全員が一斉に言う。
「絶対いい天気だ」
「100%安全だ」
「完全に大丈夫だ」
ドン!!
「フラグ立てるな!!」
⸻
さらに悪化する。
「この建物は絶対に壊れない」
ドゴォン!!
「壊れた!!」
「この道は完全に安全だ」
ズドン!!
「だから言うな!!」
⸻
兵士、
「この街は永久に平和だ」
ドン!!
「未来確定すな!!」
⸻
少女が言う。
「すべての発言が断定になりました」
「極端なんだよ!!」
⸻
全員が言い続ける。
「絶対成功する」
「絶対失敗しない」
「絶対問題ない」
全部外れる。
「信用できねえ!!」
⸻
俺は空を見上げた。
「この世界、“ちょうどいい断定”って概念ないのかよ……」
少女が一言。
「絶対にありません」
「断言すな!!」
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