第37話:オノマトペしか喋れない世界なんだが
朝。
俺が目を覚ます。
少女が口を開く。
「おはよ――」
「ワクワク」
「感情だけで挨拶すな!!」
来たな。
⸻
俺はベッドから起き上がる。
「よく寝たな……」
少女、
「スヤスヤ」
「過去形で言え!!」
⸻
外に出る。
通り。
人が会話している。
男、
「ガヤガヤ」
女、
「ワイワイ」
「内容ゼロ!!」
別のやつ、
「ザワザワ」
「不穏だけ伝わるな!!」
⸻
パン屋。
店員が頭を下げる。
「ペコリ」
「それは分かる」
俺はパンを取る。
「これ一つ」
店員、
「コクコク」
「肯定っぽいけど確定じゃねえ!!」
俺は一口食べる。
「うまい」
店員、
「ニコニコ」
「評価は伝わるけど情報が薄い!!」
⸻
通り。
兵士が来る。
「現在の治安は――」
「ピタッ」
「止まるな!!」
兵士、
「キリッ」
「顔だけで報告すな!!」
遠くで爆発。
ドン!!
俺、
「やばい!!」
周囲の人、
「ドカーン!!」
「ドーン!!」
「バキバキ!!」
「実況はできてる!!」
⸻
少女が説明する。
「今回のアップデートでは、音象徴による表現が強化されています」
「オノマトペって言え!!」
「言語を簡略化することで、直感的な理解が可能です」
「直感すぎるわ!!」
⸻
広場。
男が女に告白している。
男、
「ドキドキ」
女、
「……ドキドキ?」
「確認すな!!」
男、
「キュン」
女、
「キュン……」
「成立してるっぽいのが腹立つ!!」
⸻
その時。
子供が転ぶ。
ドン!!
子供、
「イテテ……」
大人が駆け寄る。
「アワアワ!!」
「落ち着け!!」
さらに別の大人、
「オロオロ」
「誰も助けてねえ!!」
⸻
俺は頭を抱える。
「会話が全部擬音になってるだろ!!」
少女が言う。
「コクコク」
「だから説明しろ!!」
⸻
その時。
パン屋の店員が走ってくる。
「バタバタ!!」
俺、
「何があった!?」
店員、
「ドカーン!!」
「それは結果だろ!!」
⸻
周囲がさらに混乱する。
「ワーワー!!」
「ギャーギャー!!」
「バタバタ!!」
「ドタドタ!!」
「騒音でしかねえ!!」
⸻
その時。
違和感。
音が増えていく。
一人一音じゃない。
複数の音が重なる。
「ドキドキザワザワバタバタ」
「詰め込むな!!」
さらに、
「キラキラドロドロメラメラ」
「感情バグってる!!」
⸻
少女が言う。
「表現力が拡張されています」
「方向ミスってるだろ!!」
⸻
さらに悪化する。
人々が“音で会話しよう”とし始める。
「ドキドキ?」
「ワクワク!」
「ザワザワ……」
「なんとなく通じてるのが怖い!!」
⸻
その時。
空にウィンドウ。
「ユーザーフィードバック」
来た。
「“何を言っているのか分からない”」
その通り。
「“うるさい”」
それな。
「“雰囲気しか伝わらない”」
核心だな。
「改善を実施します」
やめろ。
⸻
少女が言う。
「次のアップデートでは、表現の最適化が行われます」
「頼むぞ……」
「言語アップデート ver.5.2」
光。
静寂。
⸻
少女が言う。
「おはようございます」
普通だ。
俺は安心する。
「戻ったか……」
⸻
通り。
人が話している。
「今日はいい天気ですね」
「お、ちゃんとしてる」
パン屋、
「いらっしゃいませ」
「完璧だ」
⸻
その瞬間。
全員が同時に言う。
「ドキドキ(嬉しい)」
「ザワザワ(不安)」
「バタバタ(急いでいる)」
「字幕付きかよ!!」
⸻
さらに増える。
「ワクワク(期待値上昇中)」
「イライラ(ストレス蓄積)」
「キラキラ(好感度上昇)」
「ゲームUIすな!!」
⸻
兵士、
「キリッ(職務遂行中)」
「いらん補足!!」
パン屋、
「ニコニコ(営業スマイル)」
「裏側見せるな!!」
⸻
さらに悪化する。
全員の頭上に常時表示される。
「ドキドキ(心拍数上昇)」
「ザワザワ(群衆心理発生)」
「ガーン(精神ダメージ)」
「ステータス化すな!!」
⸻
俺は空を見上げた。
「この世界、“言葉そのまま”でいいって発想ないのかよ……」
少女が一言。
「ワクワク(仕様です)」
「結局オノマトペじゃねえか!!」
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