第36話:主語が全部ランダムな世界なんだがか
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朝。
俺が目を覚ます。
少女が言う。
「おはようございます」
普通だ。
俺は頷く。
「今日は平和だな」
少女が微笑む。
「はい、私は平和です」
「お前が平和になるな!!」
来たな。
⸻
外に出る。
通り。
人が話している。
男が言う。
「私はパンを買いに行きます」
隣の女が言う。
「いいえ、あなたがパンです」
「会話壊れてるだろ!!」
別の人も言う。
「私は仕事に行きます」
「あなたは仕事です」
「労働そのものになるな!!」
⸻
パン屋。
店員が頭を下げる。
「いらっしゃいませ」
俺はパンを取る。
「これ一つ」
店員が言う。
「ありがとうございます。私は三ゴールドです」
「お前が通貨になるな!!」
俺は金を出す。
「これで払う」
店員、
「はい、あなたを受け取ります」
「人身売買始まってる!!」
⸻
通り。
兵士が歩いてくる。
「現在の治安は安定しています」
俺は言う。
「さっき爆発してただろ」
兵士が頷く。
「はい、あなたが爆発です」
「俺が原因にされてる!!」
ドン!!
遠くで爆発。
兵士、
「やはりあなたです」
「違うわ!!」
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少女が説明する。
「今回のアップデートでは、主語の最適化が行われています」
「どこが最適だよ!!」
「主語の多様性が増加しています」
「入れ替わってるだけだろ!!」
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広場。
男が女に告白している。
男、
「私はあなたが好きです」
女、
「あなたは私が好きです」
「ループしてる!!」
男、
「つまり、私は私が好きです」
「自己完結すな!!」
女、
「つまり、あなたはあなたが好きです」
「終わりだろその関係!!」
⸻
その時。
子供が転ぶ。
ドン!!
子供、
「痛い!」
大人が言う。
「はい、あなたが痛いです」
「そこは普通に助けろ!!」
子供、
「私が痛いです!」
大人、
「いいえ、私が痛いです」
「取り合うな!!」
⸻
俺は頭を抱える。
「主語ぐちゃぐちゃすぎるだろ!!」
少女が言う。
「はい、主語がぐちゃぐちゃです」
「そのまま言うな!!」
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その時。
パン屋の店員が走ってくる。
「大変です!!」
俺、
「何があった!?」
店員、
「あなたが崩壊しました!!」
「してねえよ!!」
ドン!!
遠くで建物が崩れる。
店員、
「やはりあなたです」
「全部俺にすな!!」
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周囲がさらに混乱する。
「私が逃げろ!!」
「あなたが危ない!!」
「私は助けて!!」
「あなたが大丈夫!!」
「意味逆転してる!!」
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俺は叫ぶ。
「主語ちゃんとしろ!!」
少女が言う。
「はい、主語を修正しません」
「否定の位置もおかしいだろ!!」
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その瞬間。
空にウィンドウ。
「ユーザーフィードバック」
来た。
「“誰が何をしているのか分からない”」
その通り。
「“責任の所在が不明”」
全部俺に来てるけどな。
「“会話が成立しない”」
知ってる。
「改善を実施します」
やめろ。
⸻
少女が言う。
「次のアップデートでは、主語の統一が行われます」
「頼むぞ……」
「言語アップデート ver.5.1」
光。
静寂。
⸻
少女が言う。
「おはようございます」
普通だ。
俺は頷く。
「戻ったか……」
⸻
通り。
人が話している。
「私がパンを買います」
「私が仕事に行きます」
兵士、
「私が治安を守ります」
「お、ちゃんとしてる」
⸻
その瞬間。
全員が一斉に言う。
「私がパンです」
「私が仕事です」
「私が治安です」
「私が爆発です」
「統一の方向おかしいだろ!!」
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全員が自分を主語にし続ける。
「私が助けます」
「私が助けられます」
「私が危険です」
「私が安全です」
「全部自己完結してる!!」
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パン屋。
店員、
「私は三ゴールドです」
客、
「私は支払います」
店員、
「私は受け取ります」
客、
「私は満足です」
「一人で完結してるだろ!!」
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俺は空を見上げた。
「この世界、“主語共有”って概念ないのかよ……」
少女が一言。
「私は仕様です」
「お前は誰だよ!!」
次回もお楽しみに!




