(番外編)やばだけで裁判やってるの、普通にやばい
番外編です!
「やば」
朝。
もう挨拶はこれでいい。
俺も慣れた。
「……やば」
軽く返す。
会話成立。
終わってるけど成立してる。
―――
その日、俺は少女に王城に呼ばれた。
理由はわからん。
「やば」
少女が言う。
多分「来て」だ。
―――
玉座の間。
いつもより人が多い。
ざわざわしている。
全員、
「やば」
「やばやば」
「やば〜」
うるさい。
王が手を上げる。
「……やば」
静かになった。
すげえな統率力。
―――
少女が俺に言う。
「やばやば」
たぶん説明。
俺は周りを見る。
中央に二人。
ボロボロの男と、怒ってる商人っぽいやつ。
……あ、これ裁判だ。
―――
王が言う。
「やば」
開廷。
軽いな。
―――
まず商人が前に出る。
「やば!!」
強い。
めっちゃ強い“やば”。
指を突きつけている。
ああ、怒ってる。
「やばやば!!やば!!!」
長い。
多分めちゃくちゃ主張してる。
内容は分からんが、
「こいつがやった!」
「許さない!」
この辺だろう。
―――
次にボロボロの男。
「やば……」
弱い。
完全に不利。
「やば、やば……」
言い訳っぽい。
でも語彙がないから説得力ゼロ。
―――
俺、小声で少女に聞く。
「何したんだあいつ」
少女、
「やばやば」
分からん。
「いや解説してくれよ!」
「やば」
諦めろってことか。
―――
裁判は進む。
商人、
「やば!!やばやば!!」
怒りMAX。
観客も、
「やば〜」
「やばやば」
ざわついてる。
一方、男。
「やば……やば……」
弱い。
これは負ける。
―――
その時。
証人っぽい人が出てきた。
「やば」
落ち着いてる。
「やばやば」
淡々としてる。
……あ、分かる。
これ証言だ。
しかも客観的なやつ。
さっきより場の空気が変わる。
「やば……」
「やば?」
観客がざわつく。
流れ変わったな。
―――
俺は気づいた。
「……イントネーションで全部伝えてるのか」
怒りのやば、
悲しみのやば、
説明のやば、
納得のやば。
……すげえな。
―――
最終弁論。
商人、
「やば!!!!」
最大火力。
男、
「やば……」
消えそう。
勝負あったな。
―――
王が目を閉じる。
静寂。
そして――
「……やば」
判決。
短い。
だが、兵士が動いた。
ボロボロの男を連れていく。
分かる。
ボロボロの男が負けた。
裁判が終わった。
観客、
「やば〜」
「やばやば」
満足げ。
納得してる。
―――
俺は呟いた。
「……成立してるな」
少女が言う。
「やば」
同意。
「いやおかしいだろ!」
俺は思わず言う。
「なんで“やば”だけで裁判成立すんだよ!」
少女は少し考えてから言った。
「やばやば」
たぶんこういう意味だ。
「伝わるから」
―――
その時、視界にウィンドウ。
「ユーザーフィードバック」
来た。
「“やばだけじゃ不十分では?”」
誰だよ。
分かるけど。またアップデートか?
「検討します」
よかった、まだ検討だった。
もうこれ以上いじるな。
―――
俺は空を見上げた。
「なんかこの世界、言葉減らすほど完成度上がってないか……?」
少女が横で言う。
「やば」
ちょっと誇らしげなのやめろ。
もし面白かったら、評価やブクマしていただけると励みになります!




