↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/20

第3話「金猫神」

昼食を食べ終えると、皢瑜は自分の部屋に戻り、手に入れたばかりのSwitchで遊ぼうとしていた。確か、ゲームソフトが付属した特別版だったはずだ。しかも、そのゲームは俺がまだ持っていないものだった。


一方、おばさんはリビングでテレビのニュースを見始めていた。さて、俺はこれから何をしようか?


「お兄ちゃん、私と一緒にSwitchで遊ばない?」


「うん、いいよ!」


そんなわけで、俺は彼女について二階へ上がり、さらに四階にある彼女の部屋へと向かった。


部屋に入った瞬間、目に飛び込んできたのは、いかにも少女らしい夢のような空間だった。魔法少女アニメのグッズがあちこちに飾られていて、大きなテレビまで置いてある。


彼女は机の上に置いてあったSwitchの箱を手に取り、椅子に座って包装を開け始めた。


箱から新品のSwitchを取り出すと、彼女は慣れた手つきでテレビと電源ケーブルにつないだ。普段から俺がSwitchを貸してあげることが多いからだろう。


「このゲーム、お兄ちゃんはまだ持ってないよね?」


「うん、まだ持ってないよ」


彼女が手にしていたのは、インクを撃ち合って地面を塗り合う対戦シューティングゲームだった。俺はまだこのゲームを買っていなかったので、今日が初プレイだ。


彼女はテレビとゲーム機の電源を入れ、ゲームカードを本体に差し込んだ。テレビ画面にゲームのタイトルが表示されると、彼女はもう片方のコントローラーを俺に渡してくれた。


こうして俺たちは彼女の部屋でSwitchを遊び始めた。


楽しい時間はあっという間に過ぎていく。ふと気づくと、外はすでに夕日が沈みかけ、夕暮れ時になっていた。そこへ、おばさんが俺たちを呼びに来た。


「バーベキューを始めるわよ! 早く屋上に上がってきなさい!」


「はーい! お兄ちゃん、行こう!」


「うん」


皢瑜はSwitchの電源を切ると、俺より先に部屋を出た。俺もその後を追い、二人で屋上の庭へ向かった。


今日は中秋節だ。台湾では、この日の夜にバーベキューをする家庭が多い。そのため、うちの単単割包店も今日は午後三時までしか営業していなかった。


屋上に着くと、バーベキューグリルも炭火もすでに準備されていた。


皢瑜の父親は、火炎放射器のようなバーナーで炭を赤くなるまで熱し、炭火の準備をしていた。一方、祖父母とおばさんは、食材を竹串に刺して焼き串を作っている。


俺は椅子代わりのスツールを一つ持ってきて、適当な空きスペースに置くと、そこに腰を下ろした。皢瑜は祖父母やおばさんたちのところへ行き、一緒に焼き串の準備を始めた。


炭が赤くなったところで、我が家の中秋節バーベキューが始まった。


そういえば、そもそも台湾では、どうして中秋節にバーベキューをする習慣があるんだろう? それに、文旦や月餅を食べる習慣もある。


よく考えてみれば、これって何か秘密組織が裏で操っている結果なんじゃないだろうか?


そんな、どうでもいいことを考えている間にも、焼き串はグリルの上でジュージューと音を立てていた。


「焼けたぞ! みんな、どんどん食べてくれ!」


義理の叔父が大きな声で呼びかけた。


俺たちは順番に、義理の叔父から焼き上がった串を受け取り、自分の皿に載せていった。


その後、俺は屋外に出してあったテーブルの上を探し、食パンの袋を見つけた。


それにしても、どうしてバーベキューには食パンを合わせるんだろう? 白いご飯でもいいじゃないか。


俺は袋から食パンを二枚取り出し、焼き串の具材を挟んで食べることにした。


肉とタマネギ、ピーマンを串から外し、一つずつ二枚の食パンの間に挟んでいく。そして、大きく口を開けて、バーベキューサンドイッチにかぶりついた。


濃厚な味付けが染み込んだ焼き肉の肉汁に、シャキシャキとしたピーマンとタマネギ。これはなかなかうまい。


そういえば、この義理の叔父は、昔は海兵隊に所属する軍人だった。今では調理師免許を持つプロの料理人だ。


祖父母は、この単単割包店を創業した人たちだ。祖父は金髪碧眼のアメリカ人で、祖母とはアメリカで知り合ったらしい。祖母は茶色の瞳に銀髪という容姿をしている。


そういえば、おばさんの瞳も茶色だ。青い瞳をしているのは皢瑜だけで、曾祖母からその青い瞳を受け継いだのだ。


バーベキューはその後も続いた。


グリルにはソーセージやトウモロコシ、黒輪など、さまざまな食材が並べられた。義理の叔父はトウモロコシをひっくり返しながら、バーベキューソースを塗っていく。


数分後、香ばしい焦げ目のついたトウモロコシが焼き上がった。


俺たちは次々と焼きたてのトウモロコシを受け取って食べた。表面には香ばしく焼けたソースの風味があり、中には粒の詰まったトウモロコシがぎっしりと詰まっている。


バーベキューが終わりに近づいた頃、金猫湖の上空で花火が打ち上がり始めた。


次々と夜空へ打ち上げられる花火が、秋の夜景を鮮やかに照らし出す。湖面には、夜空に咲いた花火が映し出されていた。


「たまやー!」


突然、そんな声が聞こえてきた。


誰が叫んだんだ?


俺は声のした方向へ視線を向けた。すると、そこにはいつの間にか一人の人物が立っていた。


背丈は七、八歳くらいの子供のように小さい。金茶色のボブカットで、巫女のような衣装を身にまとっている。


しかし、俺が最も奇妙に感じたのは、その頭に猫耳が生えていたことだった。しかも、その猫耳は感情の変化に合わせて動いている。


猫耳の幼女は、金猫神の小さな祠に供えられていた焼き肉を食べていた。


満足そうな顔で肉を頬張り、口元には肉汁までついている。


俺は家族の様子を見回した。みんな夜空に咲く美しい花火に夢中らしく、突然現れた猫耳の幼女には気づいていないようだった。


俺は猫耳の幼女に、ずっと気になっていたことを尋ねた。


「君、誰?」


「私が見えるんだね! それじゃあ、今回、運よく私が加護を与えた絵馬を引き当てたのは君なんだね! 私は金猫神の暁月だよ!」


「お兄ちゃん、誰と話してるの?」


皢瑜が不思議そうな顔で俺を見た。


「そこに猫耳の女の子がいるのが見えないのか?」


「猫耳の女の子? お兄ちゃん、何言ってるの?」


「普通の人には私の姿は見えないんだよ! 私は、君の願いがもう実現し始めていることを伝えに来ただけ。願いについて何か疑問があったら、私の分身である金猫小神像に聞いてね!」


「金猫小神像?」


「お兄ちゃんの金猫小神像なら、食卓の上に置いてあるよ!」


「今日、抽選で当たったやつだよな?」


「うん」


俺は黙ってうなずいた。


「それじゃあ、私はもう行くね!」


そう言うと、彼女は屋上の外壁の上へと歩いていった。そして、そのまま空中へ一歩踏み出した。


すると、まるで空気でできた階段が現れたかのように、彼女は一段ずつ空中を下りていった。


俺も屋上の外壁まで歩いていき、彼女が去っていく後ろ姿を見つめた。


彼女が地面に降り立つと、猫耳は頭の中へと引っ込み、巫女装束も普段着へと変わった。そして、そのまま祭りの人混みの中へと紛れていった。


俺は今、一体何を目撃したんだ?


彼女は、俺の願いが実現したと言っていた。


高校に合格するという願いなら、もうとっくに叶っている。いや、待てよ。絵馬にはもう一つ願いを書いていた。


ゲームのような高校生活を送りたい、という願いだ。


まさか、その願いが実現したということなのか?


ゲームのような高校生活って、一体どんな形で実現するんだ?


「お兄ちゃん、ぼーっとしてどうしたの?」


その瞬間、俺の視界の前方……いや、頭の中と言ったほうが正しいだろうか。そこに、ギャルゲーのような選択肢が現れた。


【選択肢1】トイレに行きたい。


【選択肢2】家に帰る。


選択肢を囲む枠の周囲には、今にも爆発しそうな燃え盛る線のようなものが走っていた。


数秒間考えていると、さらにもう一つ選択肢が現れた。


【選択肢3】花火を始めたい。


俺が何かを考え始めると、枠が動いて、頭の中で選ぼうとしている選択肢の上へ移動した。そして、決定操作を待つように点滅し始める。


しかし、俺には一体何が起きているのか、さっぱりわからなかった。


だから、どの選択肢も選ばずにいると、制限時間を示す線が燃え尽きた瞬間、自動的に別の選択肢が表示された。


最終選択肢、【緊急】トイレで大をしたい!!


それでも俺が選択しなかったため、選択肢は完全に崩壊し、消えてしまった。


「お兄ちゃん、さっきから変だよ!」


俺は今、突然、自分の口から何を話すのかさえ自由に決められなくなっていた。


一体どういうことなんだ?


まさか、これがゲームモードなのか?


「ごめん、ちょっとぼーっとしてた」


「二人とも、花火で遊ぶぞ!」


義理の叔父が俺たちに声をかけ、テーブルの上から花火がたっぷり入った袋を持ち上げた。


中には線香花火や打ち上げ花火、蝶々花火など、さまざまな種類の花火が入っている。


義理の叔父はライターで数本の線香に火をつけた。俺は義理の叔父から線香を受け取り、花火の袋から打ち上げ花火を取り出した。


さらに、ビールを入れていた空のガラス瓶を持ってきた。中のビールは、すでに義理の叔父が飲み干していた。


俺は打ち上げ花火をビール瓶の中に差し込み、屋上の外壁の上に置いた。


そして、線香の火がついた先端を、打ち上げ花火の導火線に近づけた。


導火線に火がつき、数秒後には内部の火薬に引火した。


打ち上げ花火は勢いよく空へ飛び上がり、甲高い笛のような音を響かせた後、空中で炸裂した。


一方、皢瑜は袋から線香花火を取り出し、線香の火で点火して、きらきらと輝く火花を楽しんでいた。


俺たちはさまざまな小型花火で遊び、楽しい中秋節の夜を過ごした。


そのおかげで、先ほど起きた奇妙な出来事も、すっかり頭の片隅へ追いやられてしまった。


家に帰るときになって、俺はようやく金猫小神像を手に取った。


見間違いなのか、それとも本当にそうなったのかはわからないが、その神像はGS社が発売している、二・五頭身のデフォルメされた猫神様の姿に変わっていた。


俺はガラスケースを持ち上げ、軽く揺すってみた。


「揺らすんじゃないにゃ!」


俺は、この動く小さな生き物を皢瑜に見せた。


「皢瑜、見てくれ! この神像、生きてるぞ!」


「お兄ちゃん、ただの神像じゃないの?」


「いやいや、よく見ろって! ちゃんと動いてるだろ! しかも、すごく不機嫌そうな顔をしてるぞ!」


「お兄ちゃん、頭がおかしくなっちゃったの?」


「普通の人間は、私の存在に気づかないものなのにゃ」


「ほら、こいつ、俺に話しかけてきたぞ!」


「お母さーん! お兄ちゃんが小神像と話してるー!」


皢瑜の叫び声を聞いて、おばさんも俺のところへやってきた。


「実はね、お母さんも若い頃、小神像と話したことがあるのよ!」


「お母さんもそんなことがあったの?」


「そうよ! 猫神様は本当にいらっしゃるのよ!」


「ガラスケースを開けるにゃ!」


「ガラスケースを開けろって言ってるけど、開けていいのか?」


「お兄ちゃん、また声が聞こえたの?」


「うん、聞こえた。だから、開けていいかどうか聞いてるんだよ」


「開けてあげなさい。金猫神様は善い神様だから、きっとあなたに悪いことはしないわ」


俺はおばさんの助言に従い、ガラスケースを開けた。


すると、小神像は自分の足で歩き出した。


それを見た皢瑜が、大声を上げた。


「神像が勝手に動いた!」


「だから、さっきから動いてるって言ってただろ!」


「普通の人間は、私をただの神像だと思っているにゃ。私の存在をはっきり認識していないからにゃ。でも、こうしてガラスケースから出れば、みんなにも私の存在がはっきり認識できるようになるのにゃ」


「お兄ちゃん、本当にかわいい神様がいるよ!」


皢瑜は興奮した様子で、小神像の頬を指でつついた。


「こらこら! 指で頬をつつくんじゃないにゃ!」


「ごめんね! だって、あまりにもかわいいんだもん!」


「あらあら! 本当に猫神様だわ! またお会いできるなんて、光栄です」


「今回は、こいつの様子を見に来たのにゃ。こいつの願いが本当に実現したからにゃ」


「えっ? 日明、どんな願いをしたの?」


「三神高校に合格することと、ゲームみたいな高校生活を送りたいって願いだよ!」


「高校に合格するという願いは、君自身の実力で叶えたものにゃ。問題は、ゲームみたいな高校生活を送りたいという、もう一つの願いにゃ。君は私が加護を与えた絵馬を手に入れた。だから、その願いを叶えてやらなければならないのにゃ!」


「じゃあ、さっき頭の中に突然現れた会話の選択肢も、その願いが叶ったせいなのか?」


「その通りにゃ! あれは君が攻略ルートに入ったときに現れる選択肢なのにゃ」


「攻略ルート?」


「恋愛ゲームの攻略ルートのことにゃ!」


待てよ!


ということは、俺はさっき、皢瑜の攻略ルートに入りかけていたのか?


俺は皢瑜が小さい頃から成長する姿を見てきた。俺にとって、彼女はただの妹みたいな存在だ。


それに、彼女はまだ小学生だぞ。恋愛対象として考えるなんて、そもそもあり得ないだろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。