第25話「待ち続けても届かない返事」
雅蝶に気づかれなかったので、俺は声をかけずにそのまま通り過ぎた。散歩をしてダイエットを続け、一時間後、湖を一周して家に戻った。愛露莎も帰ってきていた。
「日日明、店長が売れ残りのケーキをくれたんだけど、食べる?」
「俺が食べたいと思うか?」
「あははは! どうやら食べたくないみたいね! じゃあ、私が食べちゃおう!」
俺は彩衣のノートに書かれていた内容を思い出した。午後六時半以降は何も食べないこと。歯を磨くことで食欲を抑えられること。
「風呂に入ってくる!」
入浴もなかなかカロリーを消費できる。俺は彩衣が描いてくれたイラストのとおりに体を洗った。これは「痩せる入浴法」と呼ばれるものらしい。
風呂から上がった後、部屋に戻って宿題をしたり、勉強したりした。
そういえば、彩衣は普段あんなに忙しいのに、勉強する時間があるんだろうか? まあ、彼女は入試でトップの成績を取った天才だけど。
スマホを確認してみたが、彩衣からメッセージは届いていなかった。まだ仕事中なのだろう。
勉強を終えた後、少し運動しようと思ったが、彩衣のノートに書かれていたことを思い出した。寝る前の運動は禁止。十分な睡眠を取ることもカロリー消費につながるらしい。
だから運動はせず、スマホを手に取ってベッドに横になり、ニュースを眺め始めた。一昨日、義享天地がテロリストに襲撃された事件は、まだニュースで報道されていた。
現場では、俺が魔法を使って落下物を防いでいるらしき映像も撮影されていた。幸い顔は映っていなかったが、今の俺の姿なら、どうせ誰にもわからないだろう。
そのとき、彩衣からメッセージと写真が届いた。
「現場にこんなものが届いたの。コンサートが中止になるかもしれない! どうしよう、日日明くん」
送られてきた写真には、コピー用紙に印刷されたA4サイズの脅迫状が写っていた。
そこには、コンサートを中止しなければ、当日、流行音楽センターで爆発が起きると書かれていた。
最後には「黒騎士軍団、参上!」と書かれている。
黒騎士軍団って何だよ? どうしようと言われても、俺にだってどうしようもないだろう!
でも、そんな返事をするわけにもいかない。いったい何と返せばいいんだ?
「ただのアンチファンのいたずらかもしれないよ?」
「樊花さんもそう言ってたけど、やっぱり心配だよ!」
「今から心配しても仕方ないよ。もし本当にまずい事態になったら、俺が何とかしてすべてを変えてみせるから」
俺にはSL大法がある。セーブデータをロードして、やり直すことができるからだ。
そのとき、突然、緊急ニュースがスマホに届いた。
駁二芸術特区で爆発が発生したという。現場には犯人の犯行声明文が残されており、犯人は黒騎士軍団だという。幸い、現場に負傷者はおらず、わずかな物的被害だけで済んだらしい。
「ごめん、彩衣。どうやら犯人は本気みたいだ。今、駁二を爆破したというニュースを見たよ」
「さっきのニュース? 調べてみるね!」
「本当にあったね。どうやらコンサートも中止になりそうだ!」
「またいつか開催する機会はあるよ。今回は……」
文字を入力している途中、突然、俺の意識が一瞬途切れた。
画面に表示されていたデータが文字化けしたかと思うと、そのまま消えてしまった。
さっきまで彩衣から送られてきた、一緒に食事をしたときの写真を確認しようと思っていたのに、それらもすべて消えていた。
いったい何が起きたんだ?
事態が悪化していることに気づいたとき、俺の頭の中から彩衣の記憶まで消えてしまった。
どうやら、さっきまで誰かと連絡を取り合っていたような気がする。でも、その相手は誰だったんだ?
翌朝、体重を測ってみると、かなり減っていた。ズボンもベルトを締めないとずり落ちてしまうほどだ。
それから散歩に出かけてダイエットを続け、そのまま学校へ向かった。
俺は誰かが来るのを待っているような気がしたが、誰を待っているのかはわからなかった。
腹が減ったな……。どうして朝食を買い忘れたんだろう?
仕方なく、掃除の時間が始まる前に売店へ行き、健康そうなサンドイッチを選んだ。
教室に戻って朝食を食べ、掃除をして、授業を受けて、休み時間を過ごす。
やがて昼休みになった。給食を盛り付けるとき、肉と野菜を多めに、ご飯を少なめにすることを意識した。
だが、どうも誰かが隣で俺の食事を管理してくれていたような気がする。
誰だ?
気のせいだろうか?
午後の授業が終わり、放課後になると、俺は第三音楽室へ向かった。
しかし、そこには俺が探している人物も、探しているものもなかった。
誰なんだ?
俺の記憶に残っている、あの人はいったい誰なんだ?
教室にいると、彼女の歌声が聞こえてくるような気がした。
彼女って、誰だ?
そのとき、選択肢が表示された。
【選択肢1】消えてしまったあの人を探す。報酬1000Gポイント!
【選択肢2】探すのを諦める。10000Gポイント減点!
「小暁月、この選択肢はいったいどういうことなんだ?」
「そんなの私にもわからないニャ! とにかく早く選ぶニャ!」
選択肢1を選ぶしかないだろう!
すると、一瞬で頭の中がすっきりした。そして、俺は思い出した!
「郭彩衣が消えてしまったんだ!」
「誰のことニャ?」
「郭彩衣だよ! 俺の攻略対象だ! とりあえずスマホで調べてみる!」
スマホで郭彩衣の情報を検索してみた。すると、すべての情報が消えていた。まるで最初からそんな人物は存在しなかったかのように。
「どうしてだよ? ふざけてるのか?」
「どうしたのニャ、日日明?」
「彩衣の家に行ってみる! もしかしたら、家にいるかもしれない!」
俺は以前彼女の家に行ったときに見た住所を頼りに、スマホで場所を調べた。そして学校を飛び出し、全速力で走って向かった!
息も絶え絶えになりながら、ようやく建物の管理室にたどり着き、警備員に事情を説明した。
「XX号室に住んでいる郭彩衣さんに会いたいんです。連絡を取ってもらえませんか?」
「ああ、わかりました。少々お待ちください」
管理人は住人用のインターホンを鳴らした。数分後、ようやく応答があった。
「はい、こちらに郭彩衣さんを訪ねてきた同級生がいるのですが、ご在宅でしょうか?」
「えっ? そんな人はいないとおっしゃるんですか?」
「はい。同級生さん、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「俺は日日明です! 彩衣のお母さんなら、俺のことを知っているはずです!」
「日日明さんとおっしゃるそうです。それに、彩衣さんのお母さんなら自分を知っているはずだと」
「申し訳ありません、同級生さん。こちらの女性はあなたのことを知らないとおっしゃっています。それに、ここには彩衣さんのお母さんという方もいませんし、娘さんもいないそうです!」
「そんな……。じゃあ、俺はどこに行けば彼女を探せるんだ?」
彩衣が消える前に家にいたのなら、もしかしたら彼女を見つけられるかもしれない。
「どうか中に入って、直接話をさせてください!」
「同級生さん、相手の方はあなたを知らないとおっしゃっているんですよ。これ以上しつこくされると、追い出しますよ!」
「お願いします! 中に入って話をさせてください!」
「だから、駄目だと言っているでしょう!」
そのとき、住人が建物の入口から入ろうとしているのが見えた。俺はすぐにその後について入ろうとした。
「同級生さん! それは駄目ですよ!」
だが、すぐに警備員に止められてしまった。
「お願いします! 中に入って話をさせてください!」
「だから駄目だと言っているでしょう! これ以上居座るなら、警察を呼びますよ!」
仕方なく、俺はその場を離れることにした。
「彩衣、いったいどこにいるんだ?」
そのまま家まで歩いて帰る途中、711と全家が隣り合っているあのコンビニの前を通りかかった。
そういえば、店内には彩衣のコンサートのポスターが貼ってあったはずだ。
店に入ってみると、ポスターは別の出演者の公演告知に差し替えられていた。
「おお! 少年! またわしの店に来たのか! 猫神様も一緒じゃな! ガチャを回して、108匹の猫向衆を集めてみんか!」
土地公の店長が話しかけてきたが、俺は返事をせず、目的の人物のところへ向かった。
「白さん! すみません! あなたの力を貸してほしいんです!」
「何で私に謝るのよ? それに、あんた誰?」
雅蝶はコンビニの中でコーヒーを飲みながら休憩していた。
「俺は日日明ですよ!」
「太ったの?」
「今はそんなことどうでもいいでしょう!」
「あら、そうなの? それで、私に何を謝りたいの?」
「実は以前、遊魂に憑依された人を見つけたのに、報告しなかったんです。そして今、その人が自分の異能を発動させたせいで、存在ごと消えてしまいました!」
「【存在感消失】の異能ね! これはちょっと厄介ね。どうしてあなたはまだ彼女のことを覚えているの?」
「たぶん、ゲームシステムの効果じゃないですか?」
「そういうことじゃないわ。この異能は自分の存在を消してしまう能力なの。でも、能力者が誰かに自分を覚えていてほしいと強く願っていた場合、その人だけは覚えていられるのよ。だからあなたは彼女のことを覚えている。彼女はあなたにとって、どんな人なの?」
「俺にとって、絶対に忘れてはいけない大切な人です!」
「もしかしたら、彼女はあなたのすぐ近くにいるかもしれないわよ?」
「彩衣! そこにいるなら返事をしてくれ!」
「そんな探し方じゃ駄目よ! こっちの席に来なさい。あなたはここに座って。彩衣って子がいるなら、あなたの向かい側に座ってもらいましょう!」
俺は店内のイートインスペースに移動し、特別な椅子に座った。
だが、向かい側にはどう見ても誰もいない。
「それで、どうすればいいんですか? 白さん」
「目を閉じて、彩衣という人の姿を心の中に思い浮かべなさい! 真剣に思い浮かべれば思い浮かべるほど、効果があるわ!」
俺は目を閉じ、彼女の姿を必死に思い浮かべた。
最初に彼女を知ったのは、皢瑜が応援していたアイドルだったからだ。その後、俺は彼女の歌が好きになり、俺たちは絵馬を交換した。
学校では、暴力的な一面を見せる彼女と出会い、一緒に彼女のお母さんを助けた。
それから個人ライブがあり、その後は一緒に外出して、食事をしたり遊んだりした。皢瑜というお邪魔虫もいたけれど、楽しい時間だった。
そして、テロリストの襲撃にも巻き込まれた。
その後、俺が太ってしまい、彼女はダイエットを手伝ってくれるようになった。
彩衣の料理は本当に健康的で美味しかった。彼女のノートに書かれていたことも、俺はすべて実践していた。
そのノートまで消えてしまったんだ。
そんなことを考えているうちに、俺は涙を流していた。
「ううっ……! 本当に彼女に会いたいんです!」
俺は涙声で言った。
「それじゃあ、目を開けて、目の前に彼女がいるかどうか確かめてみなさい」
俺は目を開けて前を見た。
はっきりとは見えない。まだ半透明のままだったが、そこには確かに郭彩衣という女の子がいた。
彼女は俺を見つめながら、悲しそうに泣いていた!
「彩衣! 見えるようになったぞ!」
「ううっ……日日明くん! 私、ずっとあなたのそばにいたんだよ! お母さんも私が消えたことに気づいてくれなかったから、あなたの家に行ったの。でも、あなたも私が消えたことに気づいてくれなくて……それで、それで……ううっ! うわああん!」
「もう泣かないで。だって、俺はまた君を見つけられたんだ。この状態もきっとすぐに元に戻るよ」
「日日明、二人の会話に割り込むのはタイミングが悪いと思うんだけど、私から見ると、あなたの向かい側には誰もいないわよ」
雅蝶が言った。
「白さん、それはどういう意味ですか?」
「遊魂を回収しないといけないってことよ!」
「どうすればいいんですか?」
「やり方は自分でもわかっているはずよ?」
俺はしばらく考えた後、告白することにした。
まだ十分な時間をかけて関係を築けていないし、二人の間に積み重ねた感情も足りないかもしれない。
それでも、結末にはたどり着かなければならない!
「彩衣、君が好きだ! ただ、この気持ちを伝えたかったんだ!」
「私の歌が好きってこと? 日日明くん?」
彩衣は顔を赤くしながらツッコミを入れた。
「そうじゃない。俺は本当に君という人が好きなんだ。異性として好きなんだ! 郭彩衣、愛してる!」
「何それ、ひどい告白! しかも、そんな太ったオタクみたいな姿で、全然格好よくないじゃない! こんな告白で女の子がOKするわけないでしょ! バカ!」
突然、彩衣が立ち上がり、俺の頬にキスをした。
「返事は、あなたが痩せてからね!」
彩衣は笑いながら俺に言った。
その直後、幽霊のようなものが彼女の体から飛び出した!
雅蝶は素早く拘留瓶を使い、遊魂を捕獲した。
「彩衣、もう透明じゃなくなったぞ!」
俺がそう言い終える前に、彩衣は気を失って倒れてしまった。俺は慌てて彼女を支えた。
そのとき、店内のポスターが再び差し替えられ、彩衣のコンサートのポスターに戻っていることに気づいた。
その後、スマホで情報を確認すると、ネット上に彩衣の情報がすべて戻っていた。
だが、俺と彼女のメッセージのやり取りだけは消えてしまっていた。
その後、俺は彩衣を雅蝶に任せて、その場を離れた。
彼女が目を覚ましたとしても、きっと俺のことは覚えていないだろう。
俺が待ち続けていた返事は、永遠に届かないのかもしれない。
システム表示!
【郭彩衣】の攻略を達成しました。おめでとうございます! 10000Gポイント獲得!




