第20話「お邪魔虫付きのデート」
そういえば、俺たちはいったいどこへ向かっているんだろう?
バスの中では皢瑜と彩衣が隣同士に座っておしゃべりしていた。逆に俺のほうが邪魔者になっている! 二人の会話にどうやって入ればいいのかわからず、仕方なく立ったまま窓の外の景色を眺めていた。
そんなふうにバスは一駅ずつ進んでいった。各停留所で乗客が乗り降りする中、俺はできるだけ二人の座席のそばに立つようにしていた。
「次の停留所で降りるよ、日日明くん」
彩衣は立ち上がって俺にそう告げると、乗ってきたおばあさんに席を譲った。
「ああ、わかった」
「お兄ちゃん、彩衣お姉ちゃんってすごいんだよ! 『光の魔法少女』のランキングで七位なんだって!」
「へえ! 本当か?」
二人が話しているのは、『光の魔法少女』というスマホゲームのことだ。俺も皢瑜の影響でプレイしたことはあるが、そこまで熱中しているわけではない。
「私が見たこともない魔法ペットやキャラクターの衣装をいっぱい持ってるんだよ!」
このゲームは、魔法ペットを集めて、そのペットを使って戦うのがメインだ。ただし、ペットやアイテムを手に入れるためのガチャシステムがある。
彩衣、いったいいくら課金したんだ?
「そんなにすごくないよ……。暇なときに遊んでいるだけだから」
二人はそのままゲームの話を続けた。俺は相変わらず窓の外の景色を眺めていた。
やがて、次の停留所であるコストコ停留所に到着するという車内アナウンスが流れ、彩衣が降車ボタンを押した。
「私たち、次で降りるよ!」
「それで、俺にホットドッグかピザを奢ってくれるのか?」
「隣にある義享天地に行くんだよ!」
「ああ!」
その後、俺たちはバスを降りて義享天地へ向かった。入口には大きな孔雀のオブジェが設置されていた。それ以外にも裸眼で立体映像を楽しめる3Dスクリーンがあり、巨人が画面から手を伸ばしてくるように見えた。
「お兄ちゃん! 見て! あのスクリーン、すごいよ!」
「うん! そうだな!」
この義享天地という百貨店と商業施設は去年オープンしたばかりで、俺も皢瑜も来るのは初めてだった。
「じゃあ、中に入ってご飯を食べよう!」
俺たちは彩衣の後について施設の中に入り、エスカレーターで地下二階のフードコートへと降りた。そして、『ペンギンの巣』というレストランにたどり着いた。
店名にペンギンと付いている時点で、もう察しがつくだろう? やっぱり、うちの一族が経営する関連企業だった。
「今日はここ、『ペンギンの巣』で食べよう! ここのとんかつはすごくおいしいんだよ!」
うん、知っているし、食べたこともある。
ちょうど店に入ろうとしたとき、店長が客引きのために店の外へ出てきた。そして――。
「あら! 皢瑜お嬢様じゃありませんか? 私、怡萍ですよ! お久しぶりですね!」
「怡萍お姉さん、こんにちは!」
そういえば、怡萍さんは以前、単単割包店で働いていたスタッフだった。
「お二人は知り合いなの?」
彩衣が少し驚いた様子で尋ねた。
「それに、日明も元気そうね!」
「怡萍お姉さん、お久しぶりです!」
「今日はうちのお店に食べに来てくれたんだから、私がご馳走するわ!」
「そんな、悪いですよ! お気遣いなく!」
断ろうと思ったのだが、結局ご馳走になってしまった。
店内の席に座り、メニューを見ながらサービスのドリンクを飲んでいると、彩衣が疑わしそうに俺を見つめてきた。
「日日明くんの家って、実はお金持ちだったんだね?」
「別にお金持ちってわけじゃないよ。ただ、飲食関係の事業をいくつも経営しているだけだ。しかも俺は分家だから、基本的に関係ないんだよ」
「決めた! 私はとんかつカレーにする!」
隣に座っている皢瑜は、何を食べるかということしか気にしていなかった。
「まあいいや! とにかく早く注文しよう。でも、これじゃあ私までご馳走になっちゃったな!」
「今日、アイドルの郭彩衣が来店したって知ったら、お店の人たちも喜んでご馳走してくれると思うよ!」
「口がうまいんだから! じゃあ、私はかつ丼にするね」
「俺はとんかつ定食にしようかな」
その後、俺は店員を呼んで注文した。
料理が運ばれてくると、彩衣と皢瑜はスマホを取り出して写真を撮り始めた。ここのとんかつは見た目もきれいで、本当においしそうだったからだ。
そして、俺たちは昼食を食べ始めた。
この店の特徴は、自分でゴマをすり、特製のソースと混ぜてキャベツの千切りにかけることだ。しかも、これらは無料でおかわりできる。
とんかつは大きくておいしいし、ご飯もおいしい。味噌汁も絶品で、食後にはデザートのプリンまで付いていた。
「お腹いっぱい! 彩衣お姉ちゃん、ごちそうさま!」
「私がご馳走したってことにはならないんじゃないかな?」
そういえば、食事中、彩衣はサングラスとマスクを外していた。今では店内の人たちも彼女に気づき始めていた!
俺たちが食事を終えた頃、一人のお客さんが声をかけてきた。
「あの、もしかして郭彩衣さんですか?」
「あっ、そうですよ。何かご用ですか?」
「娘があなたのファンなんです。サインをいただいて、一緒に写真を撮ってもらえませんか?」
「はい、もちろんいいですよ」
どうやら彩衣は、小さな女の子たちの間でもかなり人気があるらしい。
その結果、店内中の注目を集めることになった。怡萍さんもそこで初めて、アイドルの彩衣に食事をご馳走していたことに気づいたらしく、慌てて店内の壁にサインと記念写真を残してほしいと頼んだ。
しばらくして、彩衣はようやく人だかりから解放された。
今、俺たちは義享天地の百貨店エリアを歩き回っていた。彩衣は再びサングラスとマスクを着けていたが、あのピンク色の髪は隠しようがないだろう?
その後、俺たちは五階にある『ペンギンワールド』というゲームセンターにやって来た。メダルに交換して、さっそく遊び始めた。
彩衣と皢瑜はエアホッケーで遊び始めた。勝負でも賭けでもないのに、二人はとても楽しそうだった。
一方、俺はその隣で、クレーンゲームの一種であるプッシャーゲームを始めた。少しずつお菓子を積み上げて、巨大なお菓子の塔が崩れる瞬間を楽しみにしていた。
その後、二人が遊び終わって、俺が何をしているのか見に来た。
「お兄ちゃん、こういう時間をかけて遊ぶゲームが好きなの?」
「もうすぐ成功するんだよ!」
メダルを投入し、中にある小さなショベルカーでお菓子をすくい上げて積み重ねる。そして、内部の機械が動いてお菓子を押し出す!
すると、お菓子の巨大な塔が崩れ落ちた!
「本当に成功したの!? こんなの、成功している人を初めて見たよ!」
彩衣が驚いた様子で言った。
俺は急いで袋を取り出し、戦利品のお菓子を詰め込んだ。
「お兄ちゃん、こういうゲームはすごく得意なんだよ!」
「じゃあ、あそこのクレーンゲームにある単単ペンギンも取ってくれる?」
彩衣が尋ねた。
「もちろん! 俺の腕前を見せてやるよ!」
その後、俺は彩衣のために単単ペンギンのぬいぐるみを取ってあげた。
「ありがとう」
彩衣は少し照れたような表情でぬいぐるみを受け取った。
そのとき、突然店内の火災報知器が鳴り響いた!
「何が起きたんだ?」
「とにかく、ここから離れよう!」
避難する人々で混雑する中、俺は皢瑜の手をしっかり握った。皢瑜はもう片方の手で彩衣の手を握っていた。
ところが、彩衣がもう片方の腕に抱えていたペンギンのぬいぐるみが、誰かにぶつかられて落ちてしまった!
「あっ! ぬいぐるみが!」
彩衣はしゃがんでぬいぐるみを拾おうとした。俺も足を止めて彼女を待った。
その瞬間、突然爆発が起こり、炎が上がった! このフロアの店のショーウィンドウのガラスが吹き飛ばされた。俺たちは今、二階にいる。
「ああっ!」
群衆から悲鳴が上がった。
そして俺は、異能を使ってショーウィンドウを爆破している集団の姿を目にした。彼らは店に並んでいる高級ブランドのバッグやアクセサリーなどを強奪していた。
先頭にいる男は、どうやら炎を噴き出したり、爆発を起こしたりする能力を持っているようだ。
そのとき、俺の頭の中に選択肢が表示された!
【選択肢】先頭にいる男を制圧する。千Gポイント獲得。
燃えるタイムゲージが表示された。
数秒後、突然【緊急】という表示とともに、別の選択肢が一瞬だけ現れた。
【緊急】彩衣と皢瑜を連れて逃げる。
「早く逃げよう!」
俺は彩衣のところへ駆け寄り、急いで彼女の手を握った。
俺たちがエスカレーターで逃げようとしたそのとき、突然火球が飛んできてエスカレーターを破壊し、爆発した。大勢の人が負傷した。
「おい! 廖捷、話が違うだろ! 強盗だけのはずだったじゃないか!」
「仕方ねえだろ! 頭に血が上っちまったんだよ! そこのピンク髪! お前、郭彩衣だろ? サングラスとマスクを外せ! 今すぐだ! さもないと、隣の男を殺すぞ!」
「何か用ですか?」
彩衣はマスクとサングラスを外し、その男と視線を合わせた。
「やっぱりお前か! 郭彩衣! 卑怯者の郭彩衣め!」
「廖捷! 俺たちの任務は強盗だけのはずだろ!」
「うるせえ、莫言! 俺はこの女が心底気に食わねえんだよ! こいつが一人でソロ活動したいなんて言い出さなければ、美夢時代だって解散しなかった! 俺の愛する雅雅だって、俺の目の前からいなくならずに済んだんだ!」
「あなたは雅雅のファンなんですか?」
彩衣が尋ねた。
「おい! 俺は殺人犯になりたくないんだぞ! 莫言、早く廖捷を止めろ!」
「そうだよ! 私は彼女の一番のファン、『比其星人』だよ!」
「比其星人! あんた、自分が比其星人だって言うの? このクソ野郎! はっきり言ってあげるわ! 私がソロ活動したかったから美夢時代が解散したわけじゃない! 雅雅がアイドルを辞めたのは、あんたの異常なネット上でのストーカー行為や嫌がらせが原因なのよ! あんたのせいで彼女は精神的に追い詰められて、心療内科に通って薬まで飲むことになったんだから!」」
「聞きたくない! 聞きたくない! 俺と雅雅は愛し合っているんだ! 全部お前が邪魔したせいだ! この卑怯で下劣な女め! 死ね!」
次の瞬間、火球が彩衣に向かって投げつけられた。
俺はすぐに魔力弾を放ち、その攻撃を防いだ。
「異能だと? お前も覚醒者なのか? よくも俺の邪魔をしやがったな! お前も死ね! どうせこのクソ女の彼氏なんだろ! お前らは毎日ファンの信頼を踏みにじっているんだ!」
男は再び火球を投げつけてきた。俺はもう一度、魔力弾でそれを撃ち落とした。
「彩衣、皢瑜を連れて早く逃げてくれ! 俺はあとで合流する!」
「お兄ちゃん! 何を言ってるのよ? お兄ちゃんだって危ないじゃない!」
「彩衣、早く彼女を連れて行ってくれ! あとは俺が何とかする。俺を信じてくれ!」
「うん! 日明、行こう! 皢瑜!」
「お兄ちゃん!」
彩衣は皢瑜の手を引いて非常階段のほうへ走っていった。
一方、俺は飛んでくる火球を魔力弾で防ぎ続けていた。空中では絶えず爆発が起きている。
「何かっこつけてんだよ! この野郎!」
「かっこつけてるんじゃない! 俺は勇者だからだ!」
「はあ? 頭おかしいんじゃねえのか?」
「お前を倒してやる! 移動速度上昇!」
次の瞬間、俺は一気に駆け出し、廖捷の腹に拳を叩き込んだ!
彼は苦しそうにその場に膝をついた。
「おい! 莫言、まずいぞ! 相手は複数の能力を持つ異能者だ! 早く逃げよう!」
「待ってくれよ! 凱吉!」
「くそっ!」
廖捷は再び炎で俺を攻撃しようとした。俺はその顔面に拳を叩き込み、吹き飛ばした!
システムに、廖捷を撃破したことで千Gポイントを獲得したと表示された。
「さて、これからどうすればいいんだ? 雅蝶みたいに、遊魂が出てくるまでこいつをいたぶればいいのか? 小曉月?」
「待って! 日日明! エネルギーの波動を感じるニャ! すぐに避けるニャ!」
俺はすぐに飛び退いた。
すると、目の前を一振りの日本刀が斬りつけてきた!
「避けたか? 運がよかっただけか?」
一人の男が日本刀を手に、俺の目の前に現れた!
その男は次の瞬間、姿を消したかと思うと、廖捷の隣に再び現れた。
「お前の相手はまた今度だ! 行くぞ!」
その男は廖捷の体をつかむと、再び瞬間移動して姿を消した!
謎の男はいったい何者なんだ?




