第15話「残酷な虐殺」
選択肢3が表示された!
【選択肢3】自分で方法を考え、あの男の注意を引け。成功すれば100Gポイント獲得。
そして、タイムゲージがもうすぐ燃え尽きそうになっていた!
選択肢1よりは3のほうが安全なはずだ。そう考えた俺は、選択肢3を選び、男の注意を引くことにした。
すると、システムは再び制限時間内に行動を実行するよう指示してきた。カウントダウンはたったの30秒!
時間内に行動しなければ、10000Gポイントを没収されるらしい。
このクソシステム、完全に俺をおもちゃにして遊んでいるだろ!
俺は頭の中で思いついた、最も手っ取り早い方法を実行することにした。
「おい!そこのデブオタク、ニート、引きこもり、ブサイク、万年童貞野郎!この俺様が呼んでいるぞ!」
俺は大声で叫び、思いつく限りの悪口を次々と浴びせた。
しばらくすると、男が反応した。
「誰が童貞だって!?俺はとっくに童貞じゃねえ!俺を童貞呼ばわりするな!殺すぞ、この野郎!」
ほんの一瞬だったが、男の雅蝶に対する攻撃が止まった。
雅蝶はその隙を見逃さず、すぐさま羽衣を巨大なハンマーに変化させ、男に向かって振り下ろした。
男は吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。全身に擦り傷を負い、血まで吐いている!
男は必死に身体を起こそうとしたが、どうしても立ち上がれなかった。地面を転がった際に、脚が本来曲がるはずのない方向にねじ曲がり、完全に骨折していたのだ!
そのとき、システムに任務成功の表示が現れ、100Gポイントを獲得した。
「……クソ!絶対にお前ら二人を痛い目に遭わせてやる!痛え!全身が痛えよ!」
男はまだ手から空気の衝撃波を放とうとしていたようだが、腕も本来曲がるはずのない方向にねじ曲がっていた。そのせいで狙いが定まらず、攻撃はことごとく外れ、少し離れた場所にある街灯や信号機に命中した。
「さて、あとどれくらい耐えられるかしらね?遊魂は宿主が限界を迎えないと、自分から出てこないのよ」
雅蝶が何を言っているのか、俺には理解できなかった。
雅蝶は羽衣で作った防護シールドで攻撃を防ぎながら、一歩ずつ男に近づいていった。
そして、男の目の前でしゃがみ込み、冷たい眼差しを向けた。
「この両手、ずっと攻撃してきて邪魔ね。切り落としましょうか」
そう言い終えると、羽衣を刃物に変化させ、男の両腕を切断した!
血が噴き出したが、雅蝶の身体には一滴もかからなかった。羽衣が血を防いだからだ!
一方、俺は胃が締めつけられるような痛みを感じ、吐き気を覚えた。血の臭いが鼻についたからだ。
あの男よりも、俺は雅蝶のことを恐ろしく感じていたのかもしれない。
「な、何を……?痛え!本当に痛えよ!血が!血がこんなに出てる!俺は死んじまう!」
「そんなにすぐには死なないわよ。あなたの中にいる遊魂が出てくるまで、もう少し痛めつけてあげるわね」
雅蝶は何の感情も込めずにそう言った。その動作はまるで機械のようだった。
「悪魔!この悪魔め!」
「そうよ!私は悪魔よ!」
雅蝶はそう答えると、再び羽衣を刃物に変化させ、男の背中に突き刺した!
そして引き抜くと、男の背中は血で赤く染まった。
「痛え!頼むからやめてくれ!ううっ!」
男が涙を流しながら悲鳴を上げる。その声が、俺にはひどく恐ろしく感じられた!
「どうしたの?まだ出てこないの?悪人の遊魂さん、宿主の心がもうすぐ壊れそうよ?」
雅蝶の羽衣が再び攻撃を仕掛けた。今度は男の足の裏を貫いた。
その後も、次々と身体のあちこちに何度も刃を突き刺していった。
男の泣き叫ぶ声は、徐々に弱々しくなっていった。
もう死んでしまうんじゃないだろうか?
だが、俺は雅蝶にやめてくれと言うことができなかった。きっと怖かったのだろう。
そのとき、何か光のようなものが男の身体から抜け出してきた。その光には、悪人の怨念に満ちた顔が浮かんでいた。
「やっと出てきたわね!拘留瓶!」
瞬時に雅蝶は羽衣を変化させて拘留瓶を作り出した。
拘留瓶はみるみる大きくなり、逃げようとする遊魂を吸い込み始めた。
遊魂は必死にもがき、逃げようと飛び回ったが、拘留瓶の強力な吸引力から逃れることはできなかった。
そして、ついに中へと吸い込まれていった!
「遊魂を捕まえたわ!」
雅蝶は笑顔を見せた。まるで、先ほどまでの行動など自分がしたことではないかのようだった。
雅蝶は拘留瓶の蓋を閉めると、瓶は徐々に小さくなっていき、最後には小さな砂時計ほどの大きさになった。
彼女はそれをポケットにしまった。
「それじゃあ、治療を始めましょう!」
雅蝶はしゃがみ込むと、慈愛に満ちた眼差しで男を見つめた。
先ほどまで目を血走らせた殺人鬼のようだったとは、とても思えない。
彼女は羽衣を使って、男の身体から流れ出た血をすべて集め、再び男の体内へと戻した。
さらに羽衣を針と糸に変化させ、切断した両腕を丁寧につなぎ合わせ、身体中の傷も一つずつ縫い合わせていった。
最後には服まで元通りに修復してしまった。
「はい、これでよし!生きてる!死んでない!本当によかったわ!あなた、なかなかしぶとい命を持っているわね!これからきっと、生きていく道を見つけられるはずよ!」
彼女の言葉は男には届いていないだろう。男はまだ意識を失ったままだった。
「次は現場の修復ね!」
雅蝶は空へと飛び上がった。
羽衣で空中に浮かんでいたゴミ収集車を包み込み、地面へと戻して元の位置に置いた。
それから街灯と信号機のところへ飛んでいき、羽衣で修復した。
最後に俺のそばへ戻り、先ほど立っていた場所に降り立つと、自分の身体の傷と破れた服まで治してしまった。
「これで全部修復完了ね。それじゃあ、封絶解除!」
彼女が両手を合わせると、エネルギーの波動が広がり、結界が砕け散った。
灰色だった世界は、まるで卵の殻が割れるように元の色を取り戻していく。
周囲の人々も再び動き始めた。
ゴミ収集車の作業員たちは車から降り、地面に倒れている男の様子を確認し始めた。
「お兄さん!お兄さん!大丈夫ですか?」
ゴミ収集車の作業員が男を起こそうとしていたが、男はまったく反応しなかった。
周囲には野次馬も集まり始めた。
「救急車を呼んでください!気を失っているみたいです!」
「今すぐ呼びます!」
近くでスマホを手に、動画を撮っているのか写真を撮っているのかわからないが、撮影していた女性がそう答えた。
俺は雅蝶を見つめた。
何か言いたいことがあるような気がしたが、どうしても言葉にできなかった。
雅蝶も俺を見て、淡々と口を開いた。
「あなたが何を言いたいのかはわかっているわ。でも、これが私の遊魂の捕獲方法なのよ」
その後、俺たちはゴミを捨て終えた。
救急車も数分後には到着し、男を担架に乗せて運んでいった。
「少し付き合ってくれないかしら?少年!」
雅蝶はそう言うと歩き始めた。
俺はついていくしかなかった。
そして、俺たちが向かったのは、角を曲がったところにある萊爾富というコンビニだった。
通りの入口から歩いても数分で着く。
店に入ると、雅蝶は振り返って俺に尋ねた。
「何か飲む?奢ってあげるわ」
「えっと、そんなに気を遣わなくてもいいですよ」
「早く選びなさい。あなたは私を助けてくれたんだから、お礼くらいさせてちょうだい。人に借りを作るのは嫌いなの」
そのとき、また頭の中に選択肢が表示された!
【選択肢1】一番安い10元の麦香ミルクティーを選ぶ。
【選択肢2】店内で一番高いノンアルコール飲料を選ぶ!
そして、燃えるタイムゲージも表示された。
だが、俺は3つ目の選択肢が出るのを待たずに、選択肢1を選んだ。
「それでいいの?もっと高いものを選んでもよかったのに」
レジで雅蝶とそんな会話を交わした。
「だって、俺は麦香ミルクティーが好きなんです!」
そのとき、雅蝶がビールを一本持ってレジに向かっていることに気づいた。
銘柄はおそらく台湾ビールだ。
その後、俺たちは店内のイートインスペースに座って飲み物を飲んだ。
雅蝶は少し酒を飲むと、酔いに任せて話し始めた。
「私だって、あんなことをするのが好きなわけじゃないのよ!でも、あなたたちが言うように、あんな男と恋愛しろっていうの?私は天使でも女神でもなく、悪魔なのよ!それに、私にだって自由恋愛をする権利はあるでしょう?そう思わない?少年!うっ!」
「はいはい、そうですね!」
しまった!
この人、酒を飲むと面倒くさくなるタイプなのか?
「どうして私が悪者にならなきゃいけないのよ!敵を倒しただけで遊魂が出てきてくれればいいのに、宿主がもう限界ってところまで追い詰めないと出てこないんだから!私だって、こんなことをしたいわけじゃないのよ!うっ!ぷっ!」
彼女はしゃっくりを始めた。
「白さん、お酒が飲めないなら飲まないほうがいいですよ!」
「うっ!ぷっ!ごめんなさい、お酒を飲むとしゃっくりが出ちゃうの!でも、お酒は大好きなのよ!ぷっ!まあ、いつも一人で飲んでるんだけどね!ぷっ!」
その後、俺は彼女の今の仕事に対する愚痴を延々と聞かされることになった。
彼女の酒がなくなるまで、俺は解放されなかった。
「少年、あなたも早く帰りなさいよ!夜遅くにあちこち出歩いちゃダメよ!」
俺たちはコンビニの外でそんな会話を交わした。
「わかりましたよ、白さん。それじゃあ、また」
「バイバイ、少年」
そういえば、彼女はあまり俺の名前を呼ばないな。
その後、俺は家に帰った。
愛露莎はすでに風呂を済ませ、リビングでスマホをいじっていた。
「日日明、どこに行ってたの?ちょうど聞きたいことがあったのよ。このスマホがずっとシステムアップデートをするように通知してくるんだけど、何をすればいいの?」
「ゴミを捨てに行って、それから死にかけた」
「この世界では、ゴミを捨てるだけでそんなに危険な目に遭うの?」
「愛露莎、俺には本当に魔法の才能がなくて、魔法を習得できないのかな?」
「才能がないわけじゃないわ。魔法を発動するための魔力が足りないのよ。魔法を覚えたいなら、まずはレベルアップする必要があるわ!この話はあとにしましょう!先に私のスマホの問題を解決してよ!」
「ああ、わかった。スマホを見せてくれ」
愛露莎は座席から立ち上がり、こちらに歩いてきてスマホを渡した。
俺は画面を確認してから答えた。
「スマホのバッテリー残量が30%しかないから、アップデートできないんだよ。まずは充電しないと!」
「充電って、魔法で電力を注ぎ込むの?」
「おばさんが渡してくれたスマホの箱に充電器が入っているはずだから、それを使って充電するんだよ!」
その後、俺は愛露莎にスマホの充電方法を教えた。
「それじゃあ、さっきの話に戻るけど、レベルアップするにはどうすればいいの?」
「迷宮にいるモンスターを倒せば、経験値という力を手に入れられるんだ。十分な経験値が貯まればレベルアップして、魔力量も増える。ただ、どれくらい増えるかはわからない。魔法の素質があれば魔力はすぐに増えるけど、そうでなければ難しいだろうな」
「なるほど!迷宮に行ってモンスターを倒し、レベルアップするのね!まさにRPGね!」
「RPGって何?」
「ロールプレイングゲームのことだよ。俺たちの世界にあるテレビゲームやテーブルゲームの一種なんだ」
「テレビゲームは知らないけど、テーブルゲームなら知っているわ」
「そういえば、日日明はどうして魔法を使えるようになりたいの?この世界にはモンスターなんて出てこないでしょう?少なくとも、私は今日一日、モンスターなんて見かけなかったわよ」
そのとき、選択肢が表示された!
【選択肢1】愛露莎に、さっきゴミを捨てに行ったときに起きたことを説明する。
【選択肢2】すぐに迷宮へ行ってレベル上げをする。
考えるまでもなく、俺は選択肢1を選んだ。
何しろ、ペナルティがないからな。
そして、俺は愛露莎に、さっきゴミを捨てに行ったときに遭遇した出来事を説明し始めた。
ただし、雅蝶が残酷な虐殺を繰り広げた部分については、曖昧にぼかしておいた。
「なるほど、遊魂という敵がいるのね!」
「そうなんだ」
「それなら、あなたは確かにレベルアップして魔法を覚える必要があるわね。勇者が残していった装備が、きっと役に立つと思うわ」
「そうだな。迷宮の情報については、またあとで聞かせてもらうよ。今日はもう疲れた」
その後、俺たちは話を終えた。
部屋に戻ると、小曉月はすでに石像の姿に戻っていた。
今日遭遇した危険な出来事について愚痴をこぼしたい気持ちはあったが、やっぱりやめておくことにした。
俺は着替えと歯ブラシを持って、風呂に入りに行った。




