第14話「予想外に始まった戦闘」
家に帰ると、すでに誰かがいた。愛露莎がリビングでテレビを見ながら、単単割包のテイクアウトを食べていた。チキンカツと豚の角煮の割包に、コーンスープとサルサパリラという組み合わせだ。
「日日明、おかえりなさい」
「ああ!」
「聞いてください! 今日は本当にいろんなところへ行ったんですよ! とても大きな商店街もありましたし、観覧車という乗り物にも乗ったんです!」
「夢時代に行ったのか? どうやって行ったんだ?」
「ライトレールという乗り物に乗りました。それから、これを見てください! 人に聞いてコンビニでこれを買って、ネットで登録までしたんですよ。そうしないと使えないんです」
彼女は俺に、一卡通を見せてくれた。カードには単単ペンギンの絵柄が描かれていた。
「行動力がすごいな!」
「それから、質屋で金をいくらか預けて、お金に換えてきました」
「そうなのか!」
「そういえば、お昼に女の子を連れて帰ってきましたよね。私が突然現れたせいで、二人の関係に影響はありませんでしたか? ちょうどいい家が見つかったら、私は引っ越そうと思っています。そのときは、もうあなたに迷惑をかけませんから」
「俺と彼女はまだそういう関係じゃないから、気にしなくていいよ」
「引っ越すつもりなのか? この世界で働くことはできるのか?」
「迷宮で蓄えていた金があれば、この世界で贅沢に暮らすには十分だと思います。でも、仕事となると……パティシエになれるんじゃないかと思っています」
「私は今日、甘いものをたくさん食べました! この世界の料理はどれも本当においしいですね!」
「目標を持って行動しているなら、それが何よりだよ。そういえば、俺はまだ夕食を食べていなかったな。今日は適当にインスタントラーメンでも作るか」
さっきから小暁月が何も話さない。やっぱり、また石像に戻ってしまったようだ。
俺は収納棚から満漢大餐の麻辣鍋牛肉麺を一袋取り出し、キッチンからインスタントラーメンを作るための鍋を持ってきた。それから食事スペースに行き、ウォーターサーバーのお湯を入れて、再びキッチンに戻って調理を始めた。
これを作るには、ちょっとしたコツがある。お湯が沸いたら麺を入れて二分半ほど茹で、最後に調味料を加えれば完成だ。
こんな食生活が健康に悪いことはわかっている。それでも、俺は一人のときによくこうして食事を済ませている。
「それ、すごくいい匂いがしますね!」
俺はラーメンをリビングまで運んだ。
「まだ食べたことがないだろ? 味見してみるか? これはインスタントラーメンっていう食べ物なんだ」
「いいんですか?」
「箸は使えるか?」
「箸って何ですか?」
どうやら使えないらしい。
「フォークを持ってきてやるよ!」
そのあと、愛露莎はインスタントラーメンを味見した。
「辛い! でも、とてもおいしいです!」
それから俺たちは、それぞれ自分の夕食を食べながらテレビを見た。
それにしても、愛露莎の適応力は本当にすごい。以前は死にたいと思っていたのに、今では生きていこうという気持ちが芽生えてきたのだろうか?
食事を終えた俺は自分の部屋に戻り、セーブを済ませた。それから机の椅子に座ってスマホを取り出し、メモアプリに攻略計画を書き始めた。
とにかく、まずは彩衣と頻繁に会うことから始めよう。それから、どんな話をすればいいんだ? 俺は何と言えばいい?
正直に言えば、現実の女の子を攻略するのは初めてだ。ゲームの中では何人ものヒロインを攻略してきたが、あれは決められた会話のシナリオに沿って進めていただけだ。現実には、そんな会話のシナリオなんて存在しない。
だが、問題は俺の頭の中にある選択肢システムのほうだよな?
そのとき、また頭の中に選択肢が表示された!
【選択肢1】愛露莎の入浴を覗きに行く。
【選択肢2】メモを書き続ける。
緊急の燃えるタイムゲージは表示されなかったので、俺はすぐに2を選んだ。
心の中では、愛露莎が風呂に入りに行ったのかと思った。
そういえば、このシステムはときどき情報を教えてくれることがある。今日だって彩衣がいる場所を知らせてくれた。
今、俺が考えるべき問題は、彩衣がどうして【存在感消失】という異能力を手に入れたのかということだ。
「おい、小暁月。聞きたいことがあるんだ」
俺は机の上に置いてある金猫神の小さな神像に声をかけた。
「お供え物をくれないなら、相手にしてあげないわよ! ニャ!」
仕方なく、俺は引き出しを開けて、大切に取っておいたミルクキャラメルを取り出し、彼女の前に置いた。
「ミルクキャラメルだけ? まあいいわ。何が聞きたいの? ニャ!」
石像が動き出し、二・五頭身の猫神小暁月の姿になった。彼女は包み紙を開け、ミルクキャラメルを大きな口で頬張った。
「遊魂に取り憑かれた人間が手に入れる異能力について聞きたいんだ。あれは本人の願いに応じて生まれる能力なのか?」
彼女はミルクキャラメルを噛みながらも、俺の質問に答えた。
「そんなこと、私が知るわけないじゃない! ニャ!」
「知らないのか? 俺は理論的に考えて、彩衣はアイドルなんだから、人に見られたいという願いを持っているはずだと思ったんだ。だったら、人から見られる能力を手に入れるはずだろ? でも、実際には彼女は姿を消してしまった。もしかしたら、俺が何か重要なことを見落としているのかもしれない」
「そんなこと、私に聞かれても困るわよ! ニャ! 本人に確認すればいいじゃない! ニャ!」
「もしかして、女の子に自分からメッセージを送る勇気もないんじゃないでしょうね? この意気地なし! ニャ! あはは!」
「誰がそんなことをするかよ! 今すぐ聞いてやる!」
俺はすぐに彩衣にメッセージを送った。一方、小暁月は相変わらずミルクキャラメルを食べ続けていた。
『今日、君の姿が消えたのは初めてのことだったのか?』
メッセージを送ってから、俺は文章の言い方が失礼じゃなかったかと考え始めた。取り消したほうがいいだろうか?
しかし、そのときにはもう既読がついていた!
しばらくすると、彩衣から返信が届いた。
『うん。今日が初めてだったよ。日日明君、私を見つけてくれて本当にありがとう』
『その前に何があったのか、詳しく教えてくれないか?』
『その前にあったこと?』
『うん。できるだけ詳しく教えてほしい。何か関係があるかもしれないから』
『今日の午後、もともと仕事が一つ入っていたんだけど、急にキャンセルされたの。マネージャーが言うには、監督が別の人にこのCMを撮らせることに決めたんだって。それで、私はもうアイドルになれないんじゃないかって思って、すごく落ち込んじゃった』
遊魂に取り憑かれたことを彼女に説明するべきだろうか? 知ってもらったほうがいいのだろうか?
そのとき、また忌々しい選択肢が表示された!
【選択肢1】遊魂のことを説明する。Gポイント10000ポイント減少。
【選択肢2】メッセージのやり取りを続ける。
そして、燃えるタイムゲージが現れた。
これは選択肢3が出てくるのを待てということなのか?
数秒後、選択肢が崩壊した!
【緊急】郭彩衣を遊びに誘う!
くそっ! 攻略計画もまだ完成していないのに、もう選択肢に振り回されるのか?
俺がまだ考えていると、選択肢が自動的に実行されてしまった。そして、俺の手は勝手にメッセージを打ち込み、送信した。
『郭彩衣、俺は君とお母さんを助けてやったんだから、何かお礼をしてくれてもいいだろ? 食事を一回おごってくれないか?』
くそっ! このシステムめ!
『日日明君、それって私を食事に誘っているの? しかも、私のおごりなの? 男らしくないわね! でも、ごちそうしてあげるわよ! だって、あなたには助けてもらったんだから! 今週の土曜日、暇なら会いましょうよ』
まさか、本当にデートの約束ができるとは思わなかった!
そのとき、頭の中のシステムが鳴り響いた。
『デートの約束に成功しました。1000Gポイントを獲得しました』
『暇だよ! それで、どこで待ち合わせる?』
『ちょっと気が早いわよ! 詳しい予定は、あとでLINEするから。それじゃあ、今日はもうおやすみ!』
彼女は単単ペンギンがおやすみと言っているスタンプを送ってきた。
『おやすみ!』
俺もスタンプを送り返した。それから椅子から立ち上がり、
「イエーイ! 成功したぞ! 人生で初めて女の子をデートに誘えた!」
「そんなに喜ぶこと? ただ女の子を誘えただけじゃない!」
そのとき、ゴミ収集車の音が聞こえてきた。ゴミを出しに行かなければならない。
俺は急いでセーブを済ませた。
ゴミをまとめて袋を手に取り、家を出た。
街角でゴミ収集車が来るのを待っていると、向こうにいるのが白雅蝶ではないかと気づいた。彼女はタバコに火をつけて吸っていて、足元にはゴミ袋が置かれていた。
声をかけるべきかどうか考えていると、彼女がちらりとこちらを見た。俺に気づいたようだが、話しかけてくることはなく、そのままタバコを吸い続けていた。
そのとき、また忌々しい選択肢が表示された!
【選択肢1】彼女のところへ行って話しかける! 100Gポイント獲得!
【選択肢2】彼女を無視する。1000Gポイント減少。
これは、彼女のところへ行って話すしかないのか?
「こんばんは、白さん! この近くに住んでいるんですか?」
「おっ! 昼間の授業サボり君じゃない! あの小さい子は一緒じゃないのね!」
「俺の名前は日日明です! あいつなら家でお供え物を食べていますよ」
「いつもあの子を連れていたほうがいいと思うわよ! あなたはもう、私たちの世界に足を踏み入れてしまったんだから」
俺たちが話していると、ちょうどゴミ収集車がやってきた。
そのとき、一人の男が突然飛び出し、道路の真ん中に立ちはだかった。
ゴミ収集車はすぐにクラクションを鳴らしたが、男はその場から動こうとしなかった。
「毎日毎日、決まった時間に鳴りやがって! うるさいんだよ! 俺の力を思い知れ!」
次の瞬間、男は何らかの力を使い、ゴミ収集車ごと吹き飛ばして宙に舞い上がらせた!
「どうやら仕事の時間ね! 封絶!」
雅蝶がそう言うと、突然彼女の周囲に結界のような力の輪が現れた。
周囲の世界が灰色に変わり、周りにいた人々は動かなくなった。空中に浮かんでいたゴミ収集車も落下を止めた。
その中で動けるのは、俺と雅蝶、そしてあの男だけだった。
「そこの男! あなたはすでに遊魂に取り憑かれている! 三神区特別管理官として命じる。直ちに暴力行為をやめ、遊魂排除の手続きに大人しく従いなさい! 拒否するのであれば、武力をもってあなたを制圧する!」
「ふざけるな! 女! お前も俺の人生を邪魔するつもりか? 誰も彼も勝手に俺を負け犬だと決めつけやがって! この世界がこんなにひどいのは、お前らのせいだ! 俺は今、力を手に入れたんだ! この世界をぶっ壊してやる! お前が神様か何かだっていうなら、まとめて死ね! これでも食らえ!」
次の瞬間、男の手から何らかの力が放たれた。
雅蝶は羽衣を変化させて作った防御盾で、その攻撃を受け止めた。
ドンッ!
目の前で大きな爆発音が響いた!
「空気を操るような異能力ね! 見えない攻撃は厄介だわ!」
「まだ終わりじゃないぞ! お前を切り刻んでやる! 俺がこの世界を滅ぼす邪魔をする奴は、全員死ね! エアブレード!」
男は手に何か見えない刃物を握っているかのように、雅蝶に向かって何度も斬りつけてきた。
雅蝶は羽衣で作った防護シールドで攻撃を一つずつ防いでいたが、見えない攻撃をすべて防ぎきることはできなかった。
数分後には、彼女の服はあちこち切り裂かれ、体にもいくつか切り傷や擦り傷ができていた。
「これは少し厄介ね! 攻撃が見えて、距離を把握しながら戦えればいいんだけど!」
「女! 思い知ったなら、とっととこの忌々しい結界を解除しろ!」
俺に何かできることはないのか?
でも、俺に何ができる?
俺には何もできないじゃないか!
足がすくんで、その場から一歩も動けなかった。
俺は怖がっているのか?
これが、俺が戦わなければならない相手なのか?
このゲームは、俺が想像していたよりもずっと難しいものなのかもしれない。
そのとき、また忌々しい選択肢が表示された!
【選択肢1】戦闘に加わり、あの男を押し倒すことに成功する! 100Gポイント獲得!
【選択肢2】あの男に協力して白雅蝶を倒す! 1000Gポイント減少。
そして、燃えるカウントダウン式のタイムゲージが現れた!
選択肢3は何なんだ?
早く出てこいよ!




