↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物のコメントが見える底辺カメラマン、ダンジョン配信で成り上がる  作者: 七瀬ナギ
第一章 怪物たちの世界を撮る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/36

第7話『その神画角、俺の最高級カメラならもっと綺麗に撮れる』

未開の回廊に入る前に、俺はギルドで機材の点検を受けた。カメラの修理は終わっているが、液晶のひびは残っている。暗所では使える。だが、映像の細部を拡大すると、ノイズが目立った。


「そのカメラで、あの映像を撮ったのか?」


背後から声がした。


振り返ると、黒いジャケットの男が立っていた。胸には大手配信事務所『アルファ・ライブ』のロゴ。神楽坂レオ。A級探索者であり、配信者としても知られた男だ。


「その神画角、俺の最高級カメラならもっと綺麗に撮れる。君の機材は古いし、手ブレ補正も貧弱だ。撮影者の腕があるのは認めるが、素材の質は機材で変わる」


自慢ではなかった。レオは実際に高性能のカメラと無音ドローンを使っている。映像の解像度だけなら、俺の機材より何段も上だろう。


「同じ場所で撮れば、同じものが撮れると思うか?」


「少なくとも、映像の鮮明さは上げられる。君の動画は、危険を売りにして画質の粗さをごまかしているようにも見える」


反論したくなったが、半分は正しい。ぼやけた映像を神画角と呼んで済ませる気はない。


「じゃあ、実際に撮ってみればいい。ただし、俺が入った経路は教えない。自分で見つけてくれ」


レオは口角を上げた。


「望むところだ」


彼は数日かけて地形データと鉱物の反射から回廊の候補を絞り、独力で入口を見つけてきた。機材の準備も万全だった。照明は使わない。ドローンは床に触れず、遠隔から無音で動かす。安全ロープも二重に張っている。


その慎重さを見て、俺は少し考えを改めた。レオは馬鹿ではない。彼は彼の方法で、撮影の危険を減らしている。


「では、同じ対象を撮ろう」


回廊の奥には、ロック・ガーゴイルがいた。岩の身体に苔が張りつき、長い腕を床に垂らしている。俺が近づくと、いつもなら赤文字が出る場所だ。だが、今日は何もない。


レオはドローンをゆっくり上げ、ガーゴイルの頭上から全身を捉えた。画面には、岩の模様まで鮮明に映る。彼の映像は確かに美しい。


「どうだ。情報量なら、俺の方が上だろう」


俺は答えなかった。


ガーゴイルの指が、床を三度叩いた。


コツ。コツ。コツ。


その後、頭がわずかに右へ傾く。レオのモニターに警告が出た。床の振動を検知したらしい。彼はドローンを止め、距離を取った。


「地面の共振か……。想定外だが、対処できる」


レオの判断は正しかった。彼はすぐにドローンを引き戻し、撮影位置を変えた。ところがガーゴイルは、今度は俺の足元へ顔を向けた。


こいつが反応したのは光ではない。動きでもない。床から伝わる、ごく小さな振動だ。


俺のカメラを握る指が止まった。


ここは、まだ撮影の始まりですらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。