第36話『映像を追った先に、小さな目があった』
門番とギルドの護衛が、通気口の外側を調べた。俺は会場に残り、カメラで壁の反射を追う。光は三秒おきに細く点滅し、配信画面の切り替わりと連動していた。
「ここだ!」
通気口の奥から、金属音がした。護衛が格子を外すと、掌に乗るほどの小型機が現れた。丸いレンズが一つ。側面には、外部通信のための結晶端子が付いている。
「こんなもの、入場検査では見つからなかったのか」古賀が歯を食いしばる。
「会場に持ち込まれたんじゃない。外から差し込まれたんです。通気口の格子の内側に、薄い傷がある。さっき開けた傷ではありません」
俺は機体のレンズを撮影した。周囲の黒い塗装に、投影石の光が反射している。つまり、これは会場の外から中を撮るための機器だ。会場にカメラを持ち込まなくても、生配信はできる。
小型機の通信を切ると、外部配信の画面は静止した。だが、すでに流れた映像は消えない。コメント欄には『やっぱり怪物は危険』『ギルドは何を隠している』という言葉が並んでいた。
機体は通気口の奥へ、爪のような留め具で固定されていた。簡単に置いて逃げられる場所ではない。誰かが事前に会場を調べ、格子の裏側へ設置していたことになる。
古賀が機体を持ち上げようとしたので、俺は止めた。
「先に、見つけた位置と向きを撮っておきましょう。動かしてからでは、どこにどう固定されていたか分からなくなる」
一枚、全景。次に格子の傷。最後にレンズの向き。俺は順序を変えず、証拠として残した。
議長が低くうなった。
「これを人間が仕掛けたのなら、評議の意味はない」
「人間側の誰かが仕掛けたのか、怪物側の誰かが仕掛けたのか、まだ分かりません」
俺は即答した。
「持ち主を決めつければ、今度はこの機械を証拠にして、別の誰かを裁くことになります。記録には、見つかった場所と時刻だけを残してください」
古賀が機体を封印袋へ入れた。そのとき、レンズの裏側に小さな刻印があるのが見えた。製造番号ではない。三本の短い線が、三角形を作っている。
赤文字が浮かぶ。
《その印を、七層のものだと思うな》
俺は刻印を拡大した。
三本の線は、今まで見たことのない形だった。




