↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物のコメントが見える底辺カメラマン、ダンジョン配信で成り上がる  作者: 七瀬ナギ
第三章 氷の向こうにいた人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/36

第21話『氷晶竜の背後に、人影がある』

氷晶竜の初討伐記録として地下五層へ向かうタクトと黒瀬蓮。しかし依頼画像には、竜の背後に人影が写っていた。半年前に行方不明となった黒瀬の仲間・佐伯悠司かもしれない。討伐を優先すれば成果報酬は得られるが、氷壁を壊せば生存者を危険にさらす。タクトは撮影技術で氷の構造と竜の行動を読み、依頼を救助へ切り替える判断を支える。

氷晶竜の添付画像を、俺は何度も拡大した。


白い竜の輪郭。氷壁。画面の右端に走る青い筋。依頼書に記された情報は、それだけだった。


だが、静止画を一枚ずつ送っていくと、竜の背後にある影だけが、少しずつ形を変えていた。


最初は氷の層が作った歪みに見えた。次の一枚では肩のような輪郭があり、その次には、指を伸ばした手らしい形があった。


反射なら、カメラの角度が変われば位置もずれる。だが、影は氷壁の同じ場所に留まっている。竜が動いても、影だけはそこから動かなかった。


「人……か?」


俺は撮影時の情報を確認した。画像は依頼主が撮ったものではない。ギルドの古い観測記録から切り出された一枚だった。記録者の名前は伏せられている。


不用意に拡大画像を公開すれば、氷壁の位置を特定される。俺は配信用フォルダから画像を分離し、依頼主だけに送ることにした。


『氷晶竜の後ろに、人影のようなものが映っています。ご存じですか』


送信してから、三分も経たなかった。


『その画像を、誰かに見せましたか』


返事は質問だった。


『あなたにしか送っていません。影に心当たりがあるんですね』


既読の表示はついた。それきり返事が途切れた。


俺は机に広げた機材のリストを見た。防寒レンズハウジング、バッテリーヒーター、交換用バッテリー。着手金の十五万円はすべて準備に回し、手元の六万一千円には手を付けていない。ここまで来て仕事を降りれば、機材は残るが、報酬の残り半分は得られない。


画面に赤い文字が浮かんだ。


《そこにいるのは、獲物じゃない》


「じゃあ、何だ」


《人間が勝手に、死んだことにした》


俺は返事を打つように画面へ指を向けた。文字はそれ以上増えなかった。


スマートフォンが震えた。依頼主からのメッセージだ。


『今日、ギルドで会えますか。直接話します』


添付されていた画像をもう一度見た。氷の中の手は、何かを掴もうとしているように見えた。


依頼書には、氷晶竜の討伐と素材の確認としか書かれていない。


だが、俺が撮ることになるのは、竜だけではないのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。