第18話『売れたのは映像だけじゃない』
問い合わせの中身は、明らかに変わっていた。
以前は「どこまで近づけるか」「どのくらい綺麗に撮れるか」という質問ばかりだった。今は、動画の使用範囲、編集データの保管、広告への転用、撮影者名の表記など、撮影の外側にある条件が増えている。
アーマード・ファングの次回撮影についても、ガイは十五万円という金額だけでなく、映像を誰が保管し、どこまで再利用できるかを確認してきた。前回の動画が百万回再生され、スポンサーからの問い合わせが増えたからだ。彼らは、自分たちの名声が伸びる一方で、映像が勝手に切り抜かれることにも気づき始めていた。
俺は料金表を修正した。撮影基本料、編集、二次利用、未編集データの提供。全部を一つの金額で扱わない。現場で撮ることと、その映像をどこへ流すかは別の仕事だ。
しかし、細かく条件を決めれば決めるほど、交渉に時間がかかる。撮影前の打ち合わせ、ギルドの許可、機材の準備、納品後の修正。カメラを構えている時間だけが仕事ではなかった。
その夜、別の配信者から連絡があった。
『あなたの撮影した映像を、うちのチャンネルでも紹介したい。クレジットを入れるので、許可をもらえませんか』
内容を確認すると、相手はアーマード・ファングの動画を一部切り抜き、攻略解説に使いたいらしい。映像の意図を大きく変える編集はしないという。俺は使用範囲と期間を限定して許可した。
一方、別の事務所は、契約もないままサムネイルに俺の名前を入れようとしていた。連絡して削除を求めると、担当者は「撮影者名の表示だけなら宣伝になるでしょう」と返してきた。
宣伝になるかどうかを決めるのは、名前を使う側だけではない。
俺は返信を打つ。
『撮影者としてのクレジット表記と、作品を推奨しているように見せる広告利用は別です。後者については、事前の契約が必要です』
送信した直後、最初の配信事務所から正式な面談の申し込みが届いた。
件名には、こうあった。
『志摩タクト様のお名前を、弊社所属配信者の広告に使用したい件』
いよいよ、名前そのものが商品になろうとしていた。




