第17話『一秒を残した映像が、百万回再生された』
アーマード・ファングが映像を公開したのは、翌日の夜だった。
ガイは当初、最後の一撃を冒頭へ持ってくる編集を望んだ。だが俺は、ゴーレムの左膝が沈む一秒を先に置いた。攻撃の予兆、盾役の判断、リサの支援、ガイの一撃。四つがつながって初めて、勝利の理由が分かる。
公開から二十分後、ガイからメッセージが来た。
『コメント欄がいつもと違う』
普段の配信では「強い」「かっこいい」で終わる。今回は違った。
『左膝が沈むの、攻撃の予告か?』
『盾役が先に角度を変えてるの見えた』
『回復魔法が攻撃の後じゃなく先に出てる。連携が分かる』
『このゴーレム、胸をかばってないか?』
動画は切り抜かれ、静止画が検証掲示板へ貼られた。攻略情報を扱う配信者が、膝の動きに注目した解説動画を出す。ガイたちの名前が、単なる高火力パーティではなく、「動きを読んで勝つパーティ」として語られ始めた。
同時視聴者数は、普段の三百人前後から、五千人を超えた。切り抜きの一つは百万回再生を越えた。
数字が伸びたのは、ただ派手だったからではない。見る側に、発見する余地が残っていたからだ。
ガイがギルドで俺を見つけると、開口一番に言った。
「十万円は安すぎたな」
「契約した金額です。後から値上げはしません」
「次は、最初から払う」
彼はそう言って、次回の撮影依頼を正式に申し出た。報酬は十五万円。条件は、今回の動画から攻略地点を特定できる情報を除き、戦闘の分析に使える映像を残すことだった。
「前回は俺たちを格好よく撮ってくれたと思っていた。今は、何ができて、何ができていないかまで映っていたんだと分かった」
ガイの言葉に、俺は返事をしなかった。
画面の中にあったのは、彼らの勝利だけじゃない。次に変えられる動きも残っていた。そこに価値を見つけたのは、俺だけではなかった。
帰り道、スマートフォンには新しい問い合わせが並んでいた。似たような依頼も、見たことのない条件もある。
その中に、ひとつだけ気になる文面があった。
『撮影料金は十万円で構いません。その代わり、あなたのお名前を広告に使わせてください』
俺は立ち止まった。
今度の相手が欲しがっているのは、映像そのものではなかった。




