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怪物のコメントが見える底辺カメラマン、ダンジョン配信で成り上がる  作者: 七瀬ナギ
第二章 神画角に値段がつく

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第16話『一秒前を撮れ。そうすれば、戦いが変わる』

アイアンゴーレムが動き出した。


ガイが前へ出て、バルドが盾を構える。リサは後方から支援魔法を待機させていた。訓練通りの連携だ。だが、ゴーレムが大剣を振る直前、左膝がほんの少し沈んだ。


「ガイ、右へ半歩!」


ガイが反射的に動いた。直後、ゴーレムの剣が床を叩き、衝撃波が先ほどまで彼のいた位置を走り抜けた。


「今の……見えていたのか?」


「膝が沈んだ。次も同じかは分からない。だが、もう一度確認したい」


俺はカメラを下げず、膝と剣の柄を同時に入れた。ゴーレムは剣を引き、再び重心を左へ移す。今度はバルドの盾が揺れた。ガイが攻めるのを一瞬待ち、リサの魔法が先に飛ぶ。攻撃は真正面からぶつからず、ゴーレムの腕を横へ逸らした。


戦いの中で、彼らが見せたのは力ではなく、判断の連鎖だった。


ゴーレムの膝が沈む。盾役が角度を変える。ガイが踏み込み、リサが隙を埋める。四つの動きがつながったとき、硬い胸板に一筋の亀裂が走った。


俺は接近しなかった。最初に決めた位置を守り、視線だけを移した。亀裂が走った瞬間、ゴーレムは攻撃をやめ、胸をかばうように腕を戻した。


「……今の動き」ガイが言った。「攻撃を防ぐためじゃない。胸を隠した?」


「見えたのはそこまでです」


リサが撤退を宣言する前に、ゴーレムは膝をついた。討伐完了。だが、最後の一撃より、胸をかばった動作の方が気になった。


帰還後、俺は撮影データを確認した。戦闘の最高潮だけを切り出すこともできる。ガイが最後の一撃を入れる場面は迫力があり、サムネイルにも使えるだろう。


だが、その直前にゴーレムが胸をかばう動きがある。膝の沈みと同じく、そこにも意味がありそうだった。


「この場面を残したい」俺はガイに映像を見せた。「ゴーレムは、胸を攻撃される前から守ろうとしている」


「戦闘の見どころが薄くならないか?」


「見どころは、倒した瞬間だけじゃない。なぜ倒せたのかが分かる映像にしたい」


ガイは腕を組み、しばらく画面を見ていた。


「……分かった。だが、俺たちが勝った場面もちゃんと残せ」


「もちろん。主役はあんたたちだ」


納品用の編集は、まだ終わっていなかった。

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