第15話『安全な場所を撮るだけなら、依頼を受ける意味がない』
アーマード・ファングの撮影場所は、四層のアイアンゴーレムの間だった。
俺は現場に入る前に、ガイ、リサ、盾役のバルドと、撤退経路と撮影位置を確認した。リサは三つの退避地点を示し、バルドはゴーレムが振り向いた場合に通れる通路を確認した。誰も、俺に「大丈夫だ」とは言わない。何が起きたら中止するかだけが決まっていく。
「撮影位置は入口の後ろにしてください」リサが言った。「そこなら、何かあってもすぐに引けます」
俺はその場所からゴーレムを見た。全体は映る。だが、肩と膝の動きは柱の陰に隠れ、攻撃前のわずかな変化が見えない。
「ここでは、あんたたちが何をしているか分からない映像になります」
「安全は確保できます」
「安全なだけの映像に十万円を払う必要はありません」
リサの目が細くなった。
「あなたは、私たちに危険を冒せと言っているんですか」
「いいえ。俺が欲しい画のために、あんたたちへ戦い方を変えろとは言いません。だから、この位置で撮るなら、今回は受けない。前金も不要です」
俺はカメラをケースに戻しかけた。
ガイが手を上げた。
「待て。ゴーレムが動く前の兆候まで見せたいと言ったな。なら、俺たちもそれを見極めたい。こっちが納得できる位置を一緒に探そう」
俺たちは入口から少しずつ位置を変えた。柱の陰、斜めの岩棚、床の割れ目。最終的に、ゴーレムの左膝とガイの横顔が同じ画面に入る場所を見つけた。攻撃範囲には近いが、撤退経路は遮られない。
「危険が増したら中止します」俺は確認した。「撮影が続けられるかを判断するのは俺。戦闘を続けるかを判断するのはガイ。リサが撤退を宣言したら、配信は切る」
「それでいい」ガイが答えた。
リサはまだ不安そうだったが、撮影位置からゴーレムを見て、やがて頷いた。
「危険を隠す映像にはしないでください。安全に見えるよう編集されるのも困ります」
「危険を誇張もしない。見えたものを、見えた順番で残します」
その言葉を聞いて、リサはようやく契約書に署名した。
戦いが始まる前から、仕事は始まっていた。彼らの判断を変えず、必要なものを画面に残す。その線を越えたら、撮影者ではなく、ただの邪魔者になる。
俺はカメラを構え、ゴーレムの左膝を見た。
膝は、まだ動いていない。




