第14話『三万円の映像なら、誰でも撮れる』
アーマード・ファングとの面談は、ギルドの訓練室で行われた。
リーダーのガイは傷だらけの大剣を机に立て、隣に座る女性を紹介した。回復役のリサ。彼女は最初から、俺のカメラを警戒していた。
「撮影の依頼料は三万円。ボス戦を安全な入口から撮って、見栄えよく編集してほしい」
「それなら、俺じゃなくても撮れます」
ガイの眉が動いた。
「どういう意味だ?」
「入口から撮れば、戦闘の全体は映る。でも、あんたたちが何を考えて動いたのかは映らない。大剣が当たった。魔法が飛んだ。ボスが倒れた。それだけなら、どのパーティも同じだ」
「俺たちの動きに価値がないと言うのか」
「逆です。価値があるなら、そこを見せる必要がある」
俺は、彼らが過去に公開した配信を再生した。ガイが正面から斬りかかる。その陰で、盾役が半歩ずれ、リサの回復魔法が一瞬早く発動している。だがカメラはガイだけを追い、後ろの二人の行動は画面の端で切れていた。
「ここだ。ガイが斬ったから倒せたんじゃない。盾役がボスの向きを変え、リサが魔法を先に準備した。その一連の動きが、画面から落ちている」
リサは黙って再生を見直した。
「でも、そのために前へ出るなら危険です。カメラマンまで守る余裕はありません」
「それは当然です。俺を守るために戦術を変える必要はない。俺が、あんたたちの戦術を壊さない場所を選ぶ」
俺は料金表を見せた。
「三万円で安全な距離から記録する仕事は引き受けません。俺が撮る意味がある映像なら、十万円からです。画角はこちらで設計します。その代わり、危険を避けるための撤退条件も先に決める」
ガイはリサを見た。リサはすぐには頷かなかったが、映像をもう一度見てから言った。
「……戦い方が分かる映像になるなら、三万円の宣伝動画とは違う。条件を詰めましょう」
ガイが契約書を引き寄せた。
「十万円で頼む。ただし、無茶はするな。俺たちの判断を撮るために、戦いを変えられるのは困る」
「同意します。俺も、撮るために誰かを死なせる気はない」
契約は、まだ仮だった。現場で双方が撮影条件を確認してから、最終的に受注する。
訓練室を出るとき、リサが呼び止めた。
「ひとつだけ。私たちが撤退を決めたら、カメラを止めてください。失敗を晒して数字を稼ぐような人には、頼みたくないので」
「その条件は契約に書いてください」
彼女は、初めて少しだけ表情を緩めた。




