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『隣の席の彼女は、今日も高すぎる』  作者: さかっち
~一年生~

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第三十九話 12月22日 プレゼントの行方


 「クリスマス会、やらない?」


 グループLINEに送ったのは、ひなだった。


───────────────────────

ひな :え、聞いて聞いて

ひな :クリスマス会やらない?

ひな :絶対楽しいやつじゃん

───────────────────────


───────────────────────

太秦(うずまさ) :やるやる

さやか:いいよ

───────────────────────


───────────────────────

(おう)  :行きます

みお :……参加します

───────────────────────


───────────────────────

ひな :ことね先輩と比叡(ひえい)先輩は?

───────────────────────


───────────────────────

ことね:ごめんその日用事あって!

ことね:楽しんで来てね!!

───────────────────────


 (さく)からは少し遅れて「その日は都合がつかないです」と返ってきた。


───────────────────────

ひな :そっかー残念

ひな :じゃあ5人でやろ!

───────────────────────


 会場は太秦の家になった。

 太秦が「うちでいいじゃん、親出かけてていないし」と言い、さやかが「親御さんがいないの大丈夫?」と聞き、太秦が「別に」と答えた。


 プレゼント交換のルールもひなが決めた。

 予算は千円以内。ランダムに配布する。



 12月22日、日曜日。


 太秦の家は駅から徒歩十分の一軒家だった。

 玄関に自転車が何台かあった。

 父の修理店の気配が、家全体に漂っていた。


 リビングに集まって、テーブルにそれぞれの持ち寄りを並べた。

 ポテトチップス、チキン、ケーキのホール、みおが作ってきたという煮物の小皿。


「みお、煮物持ってきたの」


 さやかが聞いた。


「……作りすぎたので」


「すごい。クリスマスと煮物」


「……合わないですか」


「合うよ、むしろ。おいしそう」


 ひなが「撮っていい?」と横持ちのスマホを出した。

 一通り撮ってから、「じゃあ食べよ」と言った。



 食事が一段落したところで、プレゼント交換が始まった。


 プレゼントを一か所に集めて、番号を振った。

 くじを引いて、その番号の箱を受け取る方式にした。


 さやかが「公平でしょ」と言った。

 ひなが「絶対おもしろいことになる」と言った。

 太秦が「まあ見てろ」と言った。


 くじを引いた。


 結果が、出た。


 みおが「……1番」と言って、一番大きな箱を取った。

 包みを開けた。

 珈琲豆のセットだった。


 小さな紙が入っていた。

「珈琲飲めますか」と書いてあった。


 みおが少し、紙を見た。


「……央さんから、ですか」


「……はい」


「珈琲、飲めます」


「……そうですか」


「……はい。飲んでみます」


 さやかが「みおって珈琲飲むんだ」と言った。

 みおが「……飲んだことはないです」と言った。

 太秦が「チャレンジャーだな」と言った。



 太秦が引いたのは「2番」だった。


 包みを開けると、手作りの小冊子が入っていた。

 『最強麺類食べ歩きマップ・東京23区版』と表紙に書いてあった。

 地図が手書きで細かく書き込まれていた。

 路地裏の店まで網羅されていた。


「……これ、さやかさんじゃん」


 太秦が言った。


「そうだよ。使いなよ」


「俺ラーメンは食えるけど……こんな種類あるの? 麺て」


「当たり前じゃん。つけ麺とか油そばとかビャンビャン麺とか」


「ビャンビャン麺って何」


「幅広の中国の麺。見た目がすごい」


 太秦がパラパラとめくった。


「……精度やばいな」


「地図アプリより正確だから」


「信じる」


 太秦がしっかりとした手つきでしまった。



 さやかが引いたのは「3番」だった。


 包みを開けると、白いセットボックスが出てきた。

 「スニーカークリーナー」と書いてあった。

 ブラシと専用液がセットになっていた。


「……靴、持ってる?」


 太秦が聞いた。


「スニーカーは一足あるよ。コンバース」


「コンバースなら使えるやつだな。汚れ落としやすいから」


 さやかがブラシを手に取ってみた。


「……なんか意外と嬉しいかもしれない」


「洗い方分かる?」


「教えて」


「いいよ」


 太秦が少し姿勢を正した。

 スニーカーの話になると、太秦は少し速くなる。



 ひなが引いたのは「4番」だった。


 包みを開けて、少し止まった。


「……え待って」


 中から出てきたのは、映え写真フレームだった。

 カスタム加工済みで、周囲にオシャレなデコレーションがある。


「これうちが用意したやつじゃん」


「ランダムだから」とさやかが笑った。


「自分のが自分に返ってきた……」


「使ったらいいじゃん」


「それはそうなんだけど、なんか」


 ひながフレームを見た。

 少し首を傾けた。


「……飾ろかな。うちの部屋に」


「それでいいじゃん」


「まあいっか」


 ひながスマホを向けた。

 フレームをテーブルに置いて、角度を変えながら撮った。

 センスは確かに高かった。



 央が引いたのは「5番」だった。


 最後に残った箱だった。

 包みを開けると、和菓子の詰め合わせが入っていた。


 梅晴堂の包み紙が見えた。


 央は少し、止まった。


「……もしかして葛城(かつらぎ)さんのですか」


 太秦が言った。


「……みおのだと思います」


「よかったじゃん。おうくんそういうの好きそうだし」


「……あんこ系は食べます」


 みおが少し顔を向けた。


「……央さんへ行ったんですね」


「……はい」


「……よかったです」


 みおが少し、唇を動かした。


 央は箱の蓋を開けた。

 栗きんとんと芋羊羹と薯蕷饅頭が小さな仕切りに並んでいた。


「……これは全部好きです」


「……梅晴堂で選びました」


「……ありがとうございます」


 太秦がそれを見て、頭の後ろを掻いた。

 さやかが静かに笑った。



 プレゼント交換が終わって、しばらく話した。


 太秦が「ことね先輩と比叡先輩、今日は何してんの」と聞いた。

 央が「……別のところへ行っていると思います」と答えた。

 太秦が「ふーん」と言った。

 それだけで終わった。


 ひなが「来年また集まりたいな」と言った。


「来年もやろ」と太秦が言った。

「うん、やろう」とさやかが言った。

「……参加します」とみおが言った。

「……はい」と央が言った。


 ひなが少し笑った。


「しかし、もうそろそろ年明けかぁ」


「ほんとだ。年越し近い」


「みおは年末どうするの?」


「……帰省します。三が日は祖父母の家に」


「いいな。うちは地元の友達と初詣」


「さやかは?」


「弟と祖父母のとこ。毎年そう」


「おうくんは?」


「……祖父と年越しそば食べます」


「なんかいいじゃん、それ」


 外が、少しずつ暗くなっていた。

 クリスマスが、もう三日後に迫っていた。


「……じゃあ、年明けに」


 さやかが言った。


「年明けに」


 それぞれが返した。


 太秦が「もう少し食えるか」と言いながら残ったケーキを切り始めた。

 ひながまたスマホを向けた。

 みおが煮物の小皿を少し引き寄せた。

 さやかが「みお食べすぎ」と笑った。

 みおが「……まだ入ります」と言った。


 12月の夜が、リビングの外で始まっていた。


ご一読いただきありがとうございます。

ポイント、リアクションスタンプ、感想コメントなどいただけると、作者が小躍りして喜びます。

次回もよろしくお願いします。

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