表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『隣の席の彼女は、今日も高すぎる』  作者: さかっち
~一年生~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/63

第三十八話 12月21日 予行演習、というやつ


 期末テストが終わった翌日、ことねからLINEが来た。


───────────────────────

ことね:テスト終わったー!!

ことね:やっと相談できる

ことね:(おう)、ちょっといい?

───────────────────────


───────────────────────

央  :はい

───────────────────────


───────────────────────

ことね:ダブルデートの話なんやけど

ことね:クリスマス前に

ことね:(さく)くんと初めてちゃんとデートするの

ことね:初デートって何すればいいか全然分からんくて

───────────────────────


 央は画面を見た。


───────────────────────

央  :……みおに聞いた方がいいと思います

───────────────────────


───────────────────────

ことね:それはそれとして央に相談したい

ことね:なんか央に話したい

───────────────────────


 少し考えた。


───────────────────────

央  :……分かりました

央  :みおとも話して、四人で計画を立てましょうか

───────────────────────


───────────────────────

ことね:ありがとう!!!

ことね:やっぱ央や

───────────────────────



 翌日、央がみおに伝えた。


「……ことねちゃんから相談がありました」


「……なんですか」


「……ダブルデートをしたいと」


 みおが少し頷いた。


「……どこへ行きますか」


「……まだ決まっていません。映画は行きたいと言っていました」


「……映画は、静かなのがいいです」


「……同じです」


 みおが少し考えた。


「……ショッピングモールの映画館はどうですか。食事もできますし、ウインドウショッピングもできます」


「……いいと思います。ことねちゃんに伝えます」


 みおが頷いた。


「……当日も一緒に行きますか」


「……一緒に行きましょうか」


「……はい」


 それで決まった。



 ことねへの計画共有のLINEに、朔の承諾も加わって、四人でのダブルデートが確定した。


───────────────────────

ことね:ふたりは阿吽の呼吸やな

───────────────────────


 そのメッセージを読んで、央は少し考えた。

 返信はしなかった。



 12月21日、土曜日。


 集合は渋谷駅だった。


 ことねが最初に来た。

 明るいコートを着ていた。少し張り切っている感じがした。

 次に朔が来た。

 いつものマッシュに、今日は少し整えた感じがあった。

 眼鏡の奥の目が、ことねを見て一瞬止まった。


 央とみおは同じ方向から来た。


「来た来た!」


 ことねが手を振った。


「……おはようございます」


「おはよ。みおちゃん今日もかわいい」


「……ありがとうございます」


「さ、行こか」



 映画は、ミステリー系の作品を選んだ。


 みおの希望だった。

 ことねが「怖いの苦手やけどまあいっか」と言った。

 朔が「……ミステリーは好きです」と言った。

 央は何も言わなかったが、本のジャンルからして反対ではなかった。


 暗くなった。

 予告編が始まった。


 音が大きかった。


 央は少し肩に力が入ったが、表情には出さなかった。

 みおが気づいて、少し体を央の方へ向けた。

 央が少し頷いた。

 それだけで、みおは前を向いた。


 本編が始まった。


 静かな場面が続いた。

 ことねが集中しているのが、斜め後ろから分かった。


 中盤、急に大きな音がして映像が切り替わった。


 ことねが、隣に座っていた朔の腕を掴んだ。


 無意識だった。

 すぐに気づいて離した。


「……ごめん」


 小声だった。


 朔は何も言わなかった。

 ただ、少し固まっていた。

 それから静かに前を向いた。


 央はそれを視界の端で見た。

 (固まっている)

 そう思った。

 前を向いた。



 食事はモール内のレストランにした。


 窓際の席で、四人が向かい合って座った。

 料理が来るまでの間、ことねが少し落ち着かない様子だった。


「ね、聞いていい」


 ことねが言った。


「デートって、何話せばいいの」


 央とみおが顔を見合わせた。


「……わたしたちに聞きますか」


 みおが言った。


「うちたちより詳しいやろ」


「……そうですかね」


 少し間があった。


「……普段は、特に決めていないです」


 央が言った。


「……歩いていれば、何か見えてきます」


「……それはそうですけど」


 ことねが少し笑った。


「うち、なんか急ぎすぎることあるんよね」


 少し自分に向けた声だった。


「デートどうしようとか、何話そうとか、先に全部決めようとしてて」


「……それは」


 みおが少し考えた。


「……準備がていねいということだと思います」


「そう?」


「……だいたいのことは、そこにいれば自然にできます」


 ことねがみおを見た。


「……みおちゃんってさ」


「……はい」


「よく見てるよね。人のこと」


 みおが少し首を傾けた。


「……そうですか」


「うん。だからそういうこと言えるんやと思う」


 みおはそれを聞いて、何も言わなかった。

 でも、少し目が動いた。


 料理が来た。

 朔がことねのグラスに水を足した。

 ことねが「ありがとう」と言った。

 朔が小さく頷いた。



 食後、四人でモール内を歩いた。


 ウインドウショッピングは、ことねが得意だった。

 「これかわいくない?」「これどう思う?」と次々に指さしながら、テンポよく歩いた。

 朔が黙って付いていった。

 時々、ことねが「朔くんはどっちが好き?」と聞いた。

 朔が「……こちらです」と答えた。

 ことねが「それか!」と笑った。


 ある店の前で、ことねとみおが並んだ。


 ことねが172cm、みおが……198cm、と前に聞いたことがある。

 並ぶと、肩の高さが全く違った。


「並んだら身長差すごいな」


 ことねが言った。


「……すみません」


「謝ることちゃうやん」


 ことねがスマホを横持ちにした。


「写真撮っていい? ひなちゃんに送る」


「……どうぞ」


 ことねが角度を決めた。

 撮った。


「いい写真や」


───────────────────────

ことね:見て見て!!

───────────────────────


 すぐに返ってきた。


───────────────────────

ひな :え待ってこの身長差なに

ひな :ことね先輩小さすぎる

───────────────────────


───────────────────────

ことね:ひなちゃんよりは大きい!!

───────────────────────


───────────────────────

ひな :それはそう

───────────────────────


 みおがその画面を横から少し見た。

 口の端が、わずかに動いた。



 帰りの改札前で、四人が止まった。


 ことねが央を見た。


「今日、ありがとな」


「……はい」


「楽しかった。一緒にいれば自然にできる、ってやつ、ちょっと分かった」


 ことねが笑った。

 えくぼが出た。


「本番も頼みます」


「……頼まれても、一緒には来ません」


「そりゃそうや」


 ことねがまた笑った。

 朔が少し、口の端を動かした。


「……央」


 ことねが改札へ向かいかけて、少し振り向いた。


「みおちゃんのこと、大事にしてな」


 央は少し止まった。


「……してます」


「知ってる」


 そのまま朔と並んで、別の方向へ歩いていった。


 みおが隣に来た。


「……ことね先輩、今何か言いましたか」


「……大事にしてと」


「……そうですか」


「……してます」


「……知っています」


 みおが静かに言った。


 央は少し止まった。

 それから改札に入った。

 みおが後ろから続いた。


 12月の夜が、駅の外で始まっていた。


ご一読いただきありがとうございます。

ポイント、リアクションスタンプ、感想コメントなどいただけると、作者が小躍りして喜びます。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ