第三十八話 12月21日 予行演習、というやつ
期末テストが終わった翌日、ことねからLINEが来た。
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ことね:テスト終わったー!!
ことね:やっと相談できる
ことね:央、ちょっといい?
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央 :はい
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ことね:ダブルデートの話なんやけど
ことね:クリスマス前に
ことね:朔くんと初めてちゃんとデートするの
ことね:初デートって何すればいいか全然分からんくて
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央は画面を見た。
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央 :……みおに聞いた方がいいと思います
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ことね:それはそれとして央に相談したい
ことね:なんか央に話したい
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少し考えた。
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央 :……分かりました
央 :みおとも話して、四人で計画を立てましょうか
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ことね:ありがとう!!!
ことね:やっぱ央や
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翌日、央がみおに伝えた。
「……ことねちゃんから相談がありました」
「……なんですか」
「……ダブルデートをしたいと」
みおが少し頷いた。
「……どこへ行きますか」
「……まだ決まっていません。映画は行きたいと言っていました」
「……映画は、静かなのがいいです」
「……同じです」
みおが少し考えた。
「……ショッピングモールの映画館はどうですか。食事もできますし、ウインドウショッピングもできます」
「……いいと思います。ことねちゃんに伝えます」
みおが頷いた。
「……当日も一緒に行きますか」
「……一緒に行きましょうか」
「……はい」
それで決まった。
ことねへの計画共有のLINEに、朔の承諾も加わって、四人でのダブルデートが確定した。
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ことね:ふたりは阿吽の呼吸やな
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そのメッセージを読んで、央は少し考えた。
返信はしなかった。
12月21日、土曜日。
集合は渋谷駅だった。
ことねが最初に来た。
明るいコートを着ていた。少し張り切っている感じがした。
次に朔が来た。
いつものマッシュに、今日は少し整えた感じがあった。
眼鏡の奥の目が、ことねを見て一瞬止まった。
央とみおは同じ方向から来た。
「来た来た!」
ことねが手を振った。
「……おはようございます」
「おはよ。みおちゃん今日もかわいい」
「……ありがとうございます」
「さ、行こか」
映画は、ミステリー系の作品を選んだ。
みおの希望だった。
ことねが「怖いの苦手やけどまあいっか」と言った。
朔が「……ミステリーは好きです」と言った。
央は何も言わなかったが、本のジャンルからして反対ではなかった。
暗くなった。
予告編が始まった。
音が大きかった。
央は少し肩に力が入ったが、表情には出さなかった。
みおが気づいて、少し体を央の方へ向けた。
央が少し頷いた。
それだけで、みおは前を向いた。
本編が始まった。
静かな場面が続いた。
ことねが集中しているのが、斜め後ろから分かった。
中盤、急に大きな音がして映像が切り替わった。
ことねが、隣に座っていた朔の腕を掴んだ。
無意識だった。
すぐに気づいて離した。
「……ごめん」
小声だった。
朔は何も言わなかった。
ただ、少し固まっていた。
それから静かに前を向いた。
央はそれを視界の端で見た。
(固まっている)
そう思った。
前を向いた。
食事はモール内のレストランにした。
窓際の席で、四人が向かい合って座った。
料理が来るまでの間、ことねが少し落ち着かない様子だった。
「ね、聞いていい」
ことねが言った。
「デートって、何話せばいいの」
央とみおが顔を見合わせた。
「……わたしたちに聞きますか」
みおが言った。
「うちたちより詳しいやろ」
「……そうですかね」
少し間があった。
「……普段は、特に決めていないです」
央が言った。
「……歩いていれば、何か見えてきます」
「……それはそうですけど」
ことねが少し笑った。
「うち、なんか急ぎすぎることあるんよね」
少し自分に向けた声だった。
「デートどうしようとか、何話そうとか、先に全部決めようとしてて」
「……それは」
みおが少し考えた。
「……準備がていねいということだと思います」
「そう?」
「……だいたいのことは、そこにいれば自然にできます」
ことねがみおを見た。
「……みおちゃんってさ」
「……はい」
「よく見てるよね。人のこと」
みおが少し首を傾けた。
「……そうですか」
「うん。だからそういうこと言えるんやと思う」
みおはそれを聞いて、何も言わなかった。
でも、少し目が動いた。
料理が来た。
朔がことねのグラスに水を足した。
ことねが「ありがとう」と言った。
朔が小さく頷いた。
食後、四人でモール内を歩いた。
ウインドウショッピングは、ことねが得意だった。
「これかわいくない?」「これどう思う?」と次々に指さしながら、テンポよく歩いた。
朔が黙って付いていった。
時々、ことねが「朔くんはどっちが好き?」と聞いた。
朔が「……こちらです」と答えた。
ことねが「それか!」と笑った。
ある店の前で、ことねとみおが並んだ。
ことねが172cm、みおが……198cm、と前に聞いたことがある。
並ぶと、肩の高さが全く違った。
「並んだら身長差すごいな」
ことねが言った。
「……すみません」
「謝ることちゃうやん」
ことねがスマホを横持ちにした。
「写真撮っていい? ひなちゃんに送る」
「……どうぞ」
ことねが角度を決めた。
撮った。
「いい写真や」
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ことね:見て見て!!
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すぐに返ってきた。
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ひな :え待ってこの身長差なに
ひな :ことね先輩小さすぎる
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ことね:ひなちゃんよりは大きい!!
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ひな :それはそう
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みおがその画面を横から少し見た。
口の端が、わずかに動いた。
帰りの改札前で、四人が止まった。
ことねが央を見た。
「今日、ありがとな」
「……はい」
「楽しかった。一緒にいれば自然にできる、ってやつ、ちょっと分かった」
ことねが笑った。
えくぼが出た。
「本番も頼みます」
「……頼まれても、一緒には来ません」
「そりゃそうや」
ことねがまた笑った。
朔が少し、口の端を動かした。
「……央」
ことねが改札へ向かいかけて、少し振り向いた。
「みおちゃんのこと、大事にしてな」
央は少し止まった。
「……してます」
「知ってる」
そのまま朔と並んで、別の方向へ歩いていった。
みおが隣に来た。
「……ことね先輩、今何か言いましたか」
「……大事にしてと」
「……そうですか」
「……してます」
「……知っています」
みおが静かに言った。
央は少し止まった。
それから改札に入った。
みおが後ろから続いた。
12月の夜が、駅の外で始まっていた。
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