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星は昴?ーそれでも僕は彼女を守りたかったー  作者: 村松希美


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第4章 危機とその一歩





夕暮れの街は、どこか色を失って見えた。

帰り道。


昴は、いつものように人混みを避けながら歩いていた。


(今日は……何も起きなかったな)

それだけで、少しほっとしている自分がいる。


それが普通のはずなのに、自分にとっては“運がいい日”の部類だった。


(このまま帰って、飯作って……)

考えながら歩いていた、そのときだった。


「……やめてください」

小さな声。

かすれるような、押し殺した声だった。

昴の足が、止まる。


(……今の……)

聞き間違いかもしれない。

そう思おうとした。


だが、もう一度。

「だから……困ります……」

今度ははっきり聞こえた。


視線を向ける。

少し先、街灯の影に隠れるようにして、ひとりの少女と男が立っていた。


――鈴だった。


心臓が、一瞬で跳ね上がる。

(なんで……ここに……)

そしてすぐに、その状況を理解する。


男は距離が近すぎる。

鈴は一歩引いている。


逃げ場がない位置取り。

(まずい……)


頭では分かる。

だが、体が動かない。


(関わるな……)

どこかで声がする。


今までの経験が、警鐘を鳴らしている。

関われば、ろくなことにならない。

自分はそういう“役回り”だ。


(俺じゃ無理だ……)

足が、地面に縫い付けられたように重い。


男はさらに一歩踏み込む。

「ちょっとくらいいいじゃないか」

軽い口調。

だが、その手は鈴の腕に伸びていた。

鈴の肩がびくりと震える。


(……やめろ)

心の中で、声が漏れる。

だが、外には出ない。


(俺が行っても……)

どうせ、うまくいかない。

むしろ悪化するかもしれない。

そうやって、何度も失敗してきた。


(見なかったことに……)

できるはずだった。


――そのはずなのに。

鈴の顔が、わずかに見えた。

あのとき、教室で見せた強い表情じゃない。


ほんの一瞬だけ。

ほんの一瞬だけ、恐怖が浮かんでいた。

その表情が、昴の中の何かを突き刺す。


(……違う)

頭の中で、何かがひっくり返る。


(あの人は……)

強いだけの人じゃない。

ただ、そう振る舞っているだけかもしれない。


(……あのときの笑顔……)

電車で見た、あの一瞬。

あれが嘘だとは、どうしても思えなかった。


(……だったら)

足が、わずかに動く。

怖い。

心臓がうるさい。

手が震える。


(無理だ……)

それでも。


(でも……)

男の手が、鈴の腕を掴んだ。


その瞬間――

昴の中で、何かが切れた。


「やめろ!!」

気づいたときには、声が出ていた。

自分でも驚くほど大きな声だった。

体が勝手に前に出る。


(なんで……)

分からない。

ただ、止まらなかった。

男の腕を掴む。


「離せ!」

思い切り引き剥がす。

男が驚いたように振り返る。


「なんだお前は」

低い声。

その視線に、一瞬だけ怯む。


(やばい……)

逃げろ、と本能が叫ぶ。

だが。


(ここで引いたら……)

鈴の姿が、視界の端に映る。


(……終わる)

何が、とは分からない。

でも、ここで引いたら、自分はもう立てなくなる気がした。


「……っ」

喉が渇く。

それでも、昴は踏みとどまる。


「嫌がってるだろ」

声は震えていた。

情けないくらいに。

それでも、言った。


男は舌打ちをした。

「関係ないだろ。ガキは引っ込んでろ」

その一言が、妙に現実的だった。


(そうだよな……)

自分は、ただの高校生だ。

何の力もない。


それでも。

「関係ある」

言葉が、口をついて出る。

自分でも驚くほど、はっきりと。


「……この人が、嫌がってるなら」

そこまで言って、息が詰まる。


(言い切れ……)

逃げるな、と自分に言い聞かせる。

「――それで十分だろ」


沈黙。

数秒が、やけに長く感じる。

男は昴を睨みつけたあと、ふっと鼻で笑った。


「……チッ」

乱暴に手を振り払う。

「面倒くせぇ」

吐き捨てるように言い、男はその場を去っていった。

足音が遠ざかる。


完全に見えなくなるまで、昴は動けなかった。


「……はぁ……」

力が抜ける。

膝が笑いそうになるのを、必死でこらえる。


(怖かった……)

今さら、実感が押し寄せる。

手の震えが止まらない。


(俺……何やってんだ……)

それでも。

「……大丈夫?」

振り返る。

鈴がそこにいた。


さっきまでとは違う、静かな表情。

だが、その奥に、わずかに揺れるものがある。


「あ……うん」

まともに目を見られない。

心臓が、まだ早い。


「……助かった」

ぽつりと、鈴が言う。

その一言が、胸に落ちる。


(あ……)

何かが、満ちる。

今まで感じたことのない感覚。


(……守れた)

プロローグのあのときと、同じ感覚だった。


怖かった。

情けなかった。

それでも――

確かに、守れた。


昴はゆっくりと息を吐く。

まだ震えている手を、そっと握りしめた。


(俺でも……)

ほんの少しだけ。

(やれること、あるのかもしれない)

夕暮れの空は、すでに夜に変わり始めていた。



その境目で。

昴は、初めて自分の中の“何か”に気づき始めていた。




草稿を入力してAIが書きました。

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